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2019.10.22
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カテゴリ:SF
この世のありとあらゆる不健康なものが
取り去られた世界で窮屈さを感じる
トァン、ミァハ、キアンの3人の少女の物語。

★ざっとしたあらすじと感想★★ 

この世界では大人になると、watchmeという人間の健康管理をする機械を埋め込まれる。
「体脂肪率が1%を越えました。至急、体のメンテナンスを」
「刺激的な映像を見ました。セラピーを受けてください」
機械に命じられ健康をすべて管理され人々から病気や怪我というものがなくなる。

それはいいんだけど…

タバコや酒はなくなり
公園は怪我のしないようぐにゃぐにゃした遊具ばかりになる。

人は塗り固められた善意で生きていて
もちろん、いじめなんてない世界だけど
どうも人がみんな嘘っぱちに見える。
マネキンのような感じだ。生かされている感じだ。

そのなかでミァハはこの窮屈な世界を恨んでいた。

そして、この人が死ぬことのない平和な世界に風穴を開けようと3人の少女は自殺を決意する。


結局、トァン、キアンは一命をとりとめ大人になる。

主人公トァンは政府の監察官となり
世界を飛び回り、あらゆる不健康を満喫するが
とあることで、謹慎をうけ日本に帰ることになる。

そこで、かつての友人キアンと食事をすることになるが
キアンは食事の最中に頭にナイフを突き立て自殺する。

そして、世界恐慌が起こる。
なぜか、平和だった世界で自殺が相次ぐのだ。

やがて、テレビで世界中の人間にボイスつきの声明文が送られる…

「人はこの平和な世界にうんでいる。
この世界を変えるため国民は人を一人殺してください。
そうしなければ、watchmeに組み込まれたプログラムが発動し
自動的にあなたを自殺へと導きます」

そして、テレビのキャスターはペンを頭に突き立て自殺する。
(声明文は私がざっと意味をまとめて書いてます)

人を殺さなければ、自分が死ぬ
しかし、善意で塗り固めた人々は人を殺すことなどできない
でも、そうやって迷ってるうちに自分がひとに殺されるかも…
世界は混乱につつまれていく。

そこで、トァンは監察官としてこの事件の謎にとりかかることになる。

しかし、ひとつだけ気がかりが…声明文の声は死んだはずのミァハだった。


私としては、現実世界でも「規制だ」「悪影響だ」
必要以上に喫煙を問題にしたり、言葉狩りをしたり
そういう言葉を見聞きするたびに、謎の不気味さを感じていた。 

無菌室で育った人間は人の痛みを知らない大人か
人に傷つけられると簡単に壊れてしまう人間になるぞと
安易に「規制だ」なんだと叫んでる人には言いたい時がある。

私のこの気持ちがミァハのそれだったのかなと思う。

人間は毒のない世界で生きると痛みの知らない世界で生きると
まっすぐに育つどころか、どこかバグりそう。

それが当たり前と思ってる人たちは平気で生きていけるけど
この世界を窮屈に感じるミァハのような人間はこの不自然に優しい世界には耐えられない。
生きづらくなりゆくゆくは自死を選ぶ。

ハーモニーの世界はそんな優しくて何も知らない人の心に傷をつけ
混乱に陥れ、かつての昔の人間の世界に、戻そうと言うのだ。
ここが1番面白いところだから書きたくないけど
読了後はあまり、気分のいいものではない。

争いだらけの世界でも苦しむが
平和だけのなんの毒もない世界でも
簡単に言えば死ぬまで真面目でいろと言われてる気がして
窮屈さを不自由さを感じて苦しむ
 
このモヤモヤを表現しているのが凄い。

また、昨今の危険で悪影響なものはなんでも禁止にするという風潮を
先取りした内容のようにも思える。一種の予言書。


もひとつ、この作者、伊藤氏は病床で
この作品を書いて
この本に収録されたインタビューの3か月後に亡くなったそうだ。

このいっさい病気のない平和な世界
でも、それは実は不自然で
例えば糖尿病なんかは人が寒さを乗りきるために生まれた病気だとも言える
あらゆるものに意味がある
だから、watchmeなどつかわずとも
人は自然に任せるべきではないか…という文が作中にあった。

なんでも、便利にするとハーモニーの少女達のように
生きにくくなる人々も出てくるかもしれない。

また、昨今はネットの普及で便利にはなったが
人の心が可視化するぶんギスギスすることも多くなった気がする。
私自身もネットなどで人の本音とぶつかりすぎると疲れることがある
伊藤氏の悟った、たったひとつのメッセージが強く心を打った。





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最終更新日  2020.09.26 05:29:03
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