追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

As the flower pieces fall

ちるはら
ふっと顕れる眼前に


ひらちら
宙で瞬くように翻し


するいら
浮き廻り漂いそっと


紛れ込む
斑点模様の黒絨毯へ


零れ静かに
降りてゆく花片達


傍えだけの桜並樹
柵に沿い林道の半ば


立ち留まり眺め
その儚く麗しい姿を


辺りに立ち込める
甘い香りと
幻景が誘う束の間


夢心地で見詰めた
どこへも届かぬ想い
淡紅の彼方に昇る


ぴりりと苦い
踊る紫煙と共に
当てなき旅路の途中


朽ち果てるまで
この身がやがて
咲き誇る無尽の春に
いつまでも溺れていたい
























※As the flower pieces fall
…花片の零るままに

Buried in waves of noise

漸く訪れた春に
咽び泣く空の下
物憂げに満ちない桜も


艶やかな滴を
弾けそうな無数の蕾に
抱えてはまた零す


灰霧に滲む森
薄暗さ纏う並木道
悲雨に打たれるまま


虚ろな足を運び
どこかで逸れた
追憶の欠片にすがる


取り戻せるものは
何にもありはしないけど


気を落とす両肩に
まだ半咲きの花弁達を
ふわり揺らし歩めば


今にもそう
へたり込みそうな
脆い気持ちのままでも


また明くる
陽の綻ぶ時を宿す胸に


存分に咲き乱れる
柔らかな桜の樹々を
想い描くことが出来るから



























※Buried in waves of noise
…雑音の波に埋もれ

Even if it's covered in darkness

閑散とする街並みに
聳える唯一の旅宿
橙の灯りを落とした


取っ散らかった一室


真白な部屋が真っ黒な
陰で気味悪く染まる


明るみ始めたばかり
狭いひとつ窓を見詰め


その優しい空の向こう
飛び立ちたいと淡く望み


そうまた
行き止まりのない
苦悩の坂道を転げ落ちる


静寂に囚われたまま
項垂れ 重力に抗う
気力さえも失ったように


何を振り返ることも
何を見い出すことも
何を思い描くことも


ちっぽけな
ゴミ屑みたいな自分を
暗い宇宙の果てから
じっと眺めてるみたいで


いつしか本当の
笑顔をどこか遠く
置き忘れて来てしまった


胸に響くどんな言葉も
駆り立てる衝動を
呼び起こすことは


それでもこれでも


腑抜けた気持ち揺すり
しがない道化を
演じ続けることだけが
今日の自分を奮い立たせる

























※Even if it's covered in darkness
…闇に塗り潰されても