追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

淡い秋のペーソス

峠から逸れた脇道
ぐるり曲がって 下り着いた
貯水池の看板の足元から
なだらかに登りゆく
ざらついたアスファルトを
視線は辿る


やわらかな風が
すっぽりと開け放たれた東から
確かに色づき
零れそうな樹々の
葉を撫で 細枝をそよがせ



道の端から端へ
   ゆらりと
   ふわりと



寡黙な水面に
跳ね落ちる音 ぽつり響くと
遠目に紡がれた
白銀の糸は
ゆるやかに震え、延びる


蟋蟀たちの小さな囁きは
優しく宙を舞いながら


彼方で波打つ稜線
平たく空に張りついた鈍雲が
じわり割れて
目映い黄の光が漏れた



冷たく
そっと
  漂う薫りが躰を巡り



しんと顧みず進む
乾いた季節の中で
雑じり気のない景色に委ねた心は
滑らかに薄らぎ 昇るように解けてゆく


そして
静かに瞼を重ねる


ゆっくりと
躊躇いのない息遣いを
澄み渡る時に伝えながらー

×

非ログインユーザーとして返信する