六本木のバーでバイトをしていた。
先輩から基本的な仕事のやり方を教えられた。
その先輩は間もなく辞めていった。
ほぼ毎日シフトに入り、できる仕事が増えた。
高校の野球部で寮生活をしていたおかげで、
料理もできる。
数か月もしないうちに社員にも認められ、
自分でいうのもなんだが、
バイトのエースになり、
常連のお客さんもついた。
しかし、卒論で忙しくなり、
辞めることになった。
今度は、後輩に仕事を教える側になった。
おそらく、これが初めての教える側としての
仕事の引継ぎだった。
今思えば、教え方も下手で、
後輩はなかなか仕事を覚えられず、
辞める日が近づく中でイライラしながら
十分な引き継ぎができないままで
辞めてしまった。
その後、卒業し、就職し、1年が過ぎたころ、
客としてその六本木のバーに行くことがあった。
あの後輩はどうなっただろうか？
彼はまだバイトを続けていた。
出来の悪い奴だったのに、
立派に仕事をしていた。
ろくに仕事を教えてあげられなかったのに。
バイトのエースを自分で手に入れていたのだ。
成長するってスゲーな。
人の成長を見るって楽しいな。
いまの仕事につながる感情を抱いた。
これからも人の可能性を信じ、
成長のきっかけになる存在でありたい。
いまは、建て替えられたビルの前で
確認ができた。
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