私にとって、初心者セッション参加の歴史はすなわち失敗の歴史である。
(歴史というほどの回数行ってるわけじゃないが、無理のない範囲でぼちぼち通うようになっている)

「上達してから行く」などと言ってたら、私のようなヘタクソは永遠にセッションに行けないのだ。初心者向けセッションというのは学びの場であり失敗は大事な生きた経験、学習なのだ。

……とは言え、やっぱりあまりに失敗ばかりじゃ良くないと思うんだよね。

わりと図太くて打たれ強い、昭和のド根性おばさんっぽい性格と自認している私でも、人前で失敗すればそれなりに落ち込みます。

「アドリブがカッコよくない」とか「リズムがサマにならない」とかは、ある意味当たり前なので失敗のうちには数えない (それもどうかと思うが)。

私にとって、一番の問題は「ロスト」。「今どこ?どこなの?」ってヤツです。




☆ ロストとは


多くはアドリブソロの時に起きる、「今どこ弾いてるかわからなくなった」状態。

セッション未経験の人から見ると、「自分で弾いてて今どこか分からないなんて、あり得ないのでは?」「コード進行をちゃんと覚えてないからでは?」「リードシート見てれば大丈夫なのでは?」と思うかもしれないが、いやいや、ちゃんと覚えていても、リードシート見てても、アドリブ初心者は「今どこ?」を意外にやるんですよこれが。

アドリブでいい感じにフレーズが弾けた時、「お、いいぞ」と一瞬それに気を取られて、フッと曲の構成のAやBの繰り返しの場所が分からなくなって、そのまま「え、今どこ?」になったこともあるし。

もう少し複雑なのだと、アドリブの途中で、小節をまたいだフレーズを即興で繰り返すうちにフッと拍と小節数を見失い、拍は復帰出来ても小節がズレてるのかズレてないのか分からなくなり、アドリブではベースが2ビートから4ビートになるせいで余計に分からなくなり、運悪くたまたまコードが紛らわしい箇所だったり、結局ズルズルと自分がどこにいるのかも分からなくなって、ずっと同じコードだけを弾いて、気づいた誰かにテーマを弾いてもらって復帰できたとか。まあ完璧にコード進行覚えてればこういうケースでもたぶん大丈夫なんだろうけど。





☆ 4バースでも


4バース(4小節ずつ、ドラムと交代でソロ)で自分が曲のどこを弾いてるのか分からなくなって、一人で内心で凍りつくケースもある。
自分のピアノソロの次はドラムソロだから、その間はコードが分からない。その次のベースソロでコードが分かれば、自分がどこにいるのか分かって復帰できる……はずではあるが……焦るとそれが分からなかったりします。

「次の4小節ってどこ?コードが分からない!」と、わけわからん状態で自分の4小節ソロの順番が来て、結局コード感を出さずに右手だけでペンタトニックをパラパラ弾いてごまかしたつもり(全然ごまかせてない)。

たまたまリードシートを使っていたから必死で目で追ってどうにか復帰出来たけど、リードシート無しだと復帰出来なくなりそうだ。
ロストした時のリスクを考えると、たとえコード進行を覚えていてもリードシートは御守りとして譜面台に置いとくほうが良いのかなあ……それとも置かずに度胸を決めて背水の陣で?いやそれ怖いし。

リードシートなしでやるほうが良いとは思うけどね (過去記事参照)、でもね……





☆ ロストを防ぐ練習


なんだかんだ考えているうちに思い付いた練習方法が、「これはわりと特効薬なのでは?」というものでした。

『ジャズ・インプロヴィゼイション・ガイド』(過去記事参照) にある「CD音源と交互に演奏するアドリブ練習」の応用で、CD音源の代わりにiReal Pro を使った「ひとりで4バースごっこ」。


iReal Proで曲の繰り返しを3回以上で(好きなだけ)設定して、

1コーラス目は「テーマを4小節弾いたら、次の4小節は休む」の繰り返し。

2コーラス目は「テーマを4小節弾いたら、アドリブ4小節」の繰り返し。

3コーラス目は、テーマとアドリブの箇所を入れ替えて「アドリブを4小節弾いたら、テーマ4小節」の繰り返し。

その後はまた元のパターンに戻ったり、アドリブ4小節と休み4小節を交互にしたり自由に。


アドリブ自体が目的ではないので、複雑なことはせずにシンプルなアドリブでもかまわない。たとえば3度や7度をリズムに乗って弾くだけでもいい。とにかくずっと通して弾き続ける。
最初は iReal Pro のコードの色が変わる画面を見て、慣れて来たら音だけ流して普通のリードシートで、最後は何も見ないで。
さらに慣れてきたら、これで8バース、4バース、2バース。


やってみると慣れた曲でも意外に出来なくてスリリングで楽しいし、曲全体を4小節単位でとらえてコード進行を覚える効果があると思う。

iReal Pro って機械的な感じを嫌う人も多いけれど、高性能なメトロノームと割り切って使えば、こういうシンプルにコード進行を覚えるタイプの「記憶する」練習には向いていると思います (「表現」の練習なら、人間が演奏した音源を使うほうが面白いですが)。



これで練習した曲を、先日はなんとか落ち着いてロストせずに出来たのでした、やれやれ。
ホントにまだまだ未熟だけど、一歩でも前に進んだ気がする。三歩進んで二歩下がることもしばしばだが。

ちなみにリードシートは、やっぱり当分は御守りとして譜面台に置いとくことにします……




---------------------------------------------------→

            にほんブログ村 音楽ブログ ジャズピアノへ