管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。
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JUGEMテーマ:ファンタジー小説&物語
・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第73回です。
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「あの……
ドレスを着付けする侍女の問いかけに、リーリエはぎくりと身を
顔立ちが
日々イーリスと接してきた侍女たちは、そんな
(しまった……。イーリィったら、私ほどには
リーリエの目標はルーカスの花嫁になることだ。
そしてその目標に前には、
だからリーリエは、美を
体型に関して言えば、リーリエの方がイーリスよりも
だが肌や髪の状態は、王宮で一流の美容術を受け続けてきたイーリスに
よって、侍女たちの目に
「だ……大丈夫よ。ここの所、食欲があまり
リーリエは無理に微笑みを作って
やや引き
持つだけで魅力を引き出す“光の宝玉”の魅了の力は、今はリーリエただ一人に注がれている。
侍女の
「猊下、ご無理をなさらないでくださいませ。あの王女殿下のことで御心を痛めておいでなのでしょう?王宮
侍女の訴えを、リーリエは首を横に振ることで
この日はソフィーローズを招き、宮廷劇場で観劇が行われることになっていた。
「王女殿下のお相手を、ルーカス殿下御一人にさせるわけには参りません。これは、宝玉姫たる私の務めです」
JUGEMテーマ:ファンタジー連載
・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第72回です。
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国を守る聖女たる宝玉姫の元へは、国の内外を問わず様々な人物から書簡が送られて来る。
それに目を通し、必要があれば返信を
いつまでも
「これ……今日中に全て読まないと駄目……なのですか?」
「本日は急ぎのものだけで大丈夫でございますよ。まだ本調子ではいらっしゃらないのでしょう?」
優しい神官の言葉に、リーリエはわざと弱々しく
「それと、本日は
協力してくれないことに腹を立て、姉を
むしろ、時が
(イーリィ……何を書いて来たのかしら?私に怒っていないかしら?)
どきどきしながら封を切る。
そこには丁寧な文字で、もうすぐ王都を
『もしも何か困り事がございましたら、私の残した筆記帳を御覧くださいませ。きっと
万が一リーリエ以外の人間に見られても大丈夫なように、手紙の文面でさえ気を抜かず、イーリスは“入れ替わり”を続けている。
リーリエはそれに、奇妙な戸惑いと心細さを感じていた。
(入れ替わりって、ここまで気を張らなければならないものなの……?私、またイーリィと会えるまで、ずっと“宝玉姫”を演じ続けなければならないのだわ。でも“ずっと”って、いつまで?イーリィは王都を離れてしまうのに……)
今さらながらに自分の
心ここにあらずで、ただ神官に言われるままに手紙の処理を終え、リーリエはどっと
(“私の残した筆記帳”って、パーティーの前夜に
人払いをし、リーリエはその筆記帳を手に取った。
筆記帳は数冊あり、一冊は先日も目にした“宝玉の操り方”に関するものだった。
他は、宝玉姫の職務についてのもの、王宮での礼儀作法や様々な行事に関するもの、王宮の重要な人物や人間関係についてのものなど……リーリエが宝玉姫を演じるのに必要な情報ばかりだった。
それは元々、イーリスがそれらの知識を身につけるため、必死に勉強した証だった。
イーリスも、生まれ持った資質や頭脳はリーリエと変わらない。
それでもイーリスが宝玉姫として職務を
イーリスは自分の記憶に自信を持ってはいない。
だから、必要な知識は全て筆記帳に書き写し、記憶が
その筆記帳に、万が一“入れ替わり”から戻れなかった場合に備え、リーリエにも分かりやすいように補足情報を書き
リーリエはその情報量の多さに
(宝玉姫になるって、こんなに大変なものなの……。でも、やるしかないわ。私が決めたことなのだもの。イーリィになりきって、あの王女の邪魔をするって)
リーリエは嫌々ながら、筆記帳のページをめくり、知識を頭に刻み込んでいく。
(やってみせる。イーリィにできたのだもの。双子の私にできないはずがないわ!)
JUGEMテーマ:<オリジナル小説>
・「あの夏に置き忘れた君との記憶」の第6回です。
(出来上がった所からUPする方式の不定期更新です。)
他のページはコチラ→あの夏に置き忘れた君との記憶1/2/3/4/5/
「……ったく。結局、細かい設定は全然
ぶつぶつ文句を言いながらも、創治は
「細かい設定も書いてきたじゃん。4人の王子様と2人の魔王様」
「キャラ設定だけ細かくても仕方ないだろ。舞台の国とか世界観とか、何も無いじゃないか」
「そこはまぁ……何かこう、いかにもファンタジーらしいテンプレな感じって、あるでしょ?」
自分好みの恋愛要素に全力投球してしまった愛理咲には、世界観まで考える余裕が無かった。
適当なことを言って
「攻略対象の王子が複数いるなら、
「なるほど。それぞれの国を順番に回って、それぞれの場所で囚われイベントを発生させるんだね」
一応は部活で自作ゲーム経験のある
ゲーム制作に足りない設定を頭の中でピックアップしつつ、それが一つのストーリーにまとまるよう、アイディアを口にしながら整理していく。
「せっかく複数あるなら、国ごとに特色が欲しいよな」
「それイイね!『次はどんな国なんだろう』ってワクワク感があるもんね!」
愛理咲のデタラメな設定から、創治がアイディアを
一人では形になるとも思えなかったゲーム構想が、
「どうせなら、ソフトに内蔵されてるマップチップ全種使い切るくらい、バラエティー豊富にしたいな」
愛理咲のテンションに
元から
そして愛理咲はそもそも最初から悪ノリしているため、誰も止める者がいない。
「イイね、イイね!目指せ
「……となると、王道のヨーロッパ風はもちろん、和風な国も必要だな」
「うーん……。和風な王子は考えてなかったなー。国じゃなくて
「そうだな……。じゃあ、魔族にも人間にも属さない鬼族の郷とかどうだ?そこの頭領にヒロインが
「えー……。マッチョな鬼と可憐な姫のカップリングは、ちょっと……」
囚われシチュエーションなら何でも良いと思っていた創治は、愛理咲の本気で嫌そうな顔に
「じゃ、じゃあ、頭領は鬼の姫ってのはどうだ?年上のお姉さんが可愛い女の子を気に入って、妹みたいに
「……それは、正直かなりアリ」
愛理咲は親指をビシッと立て、全力で
創治はホッと胸を
(他人の趣味に合わせるって、
「ねぇ創君、マップチップ全種制覇ってなると、
愛理咲は創治の心労になどまるで気づかず、次なる設定に取り
「……いや、お前の設定だと、終盤の魔王は魔界にいるんだろ?それだと、基本世界から魔界へのワープイベントも入れなきゃなんだぞ。そんなに世界を移動させまくってたら……」
そこで創治はふと言葉を切り、設定ノートとRPG制作ソフトのパッケージを見比べ始めた。
「……そうか。だったら、魔界を廃墟にしてしまえばいいんだ!」
「…………え?魔界が……廃墟?」
さすがの愛理咲も、
「そうだよ。そもそも魔族って、世界を滅ぼす存在だろ?滅ぼされた世界は廃墟になるじゃないか。そのままその世界を乗っ取って暮らすなら、魔界が廃墟だっておかしくないじゃないか!」
「え?いや……結構おかしい気がするけど」
愛理咲は小声でツッコむが、面白いので本気で止める気は無い。
本人は無自覚だが、創治は時々熟考に熟考を重ねた結果、発想が
人によっては馬鹿にしたり
JUGEMテーマ:自作小説
・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第71回です。
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リーリエが
(本当に、良いのかしら?このままシュピーゲル領へ戻って。……と、悩んだところで、今すぐにまたリーリィと入れ替わることなんてできないのだけれど……)
自らを偽ったまま王都を離れることには、罪悪感と不安がある。
だが、同時にどうしようもなく、実家に戻りたい気持ちもある。
(このまま行けば、家に帰れる……。前に戻った時は“公務”だったし、フェーダーやグローリア様のこともあったから、ロクに実家を
せめぎ合う二つの想いの
宝玉姫に選ばれた時から、イーリスは以前のように実家で過ごすことはできないと
宝玉姫はその位に在る限り、
歴代宝玉姫の中には、就任してから一度も生家へ戻ることなく亡くなった姫もいるほどだ。
(でも、帰れるんだわ、私。あの屋敷に。ずっと帰りたくて
おまけに今のイーリスは宝玉姫ではなく、ただの公爵令嬢。
聖女としての重荷も忘れ、身軽な立場で羽を
(素直な気持ちを言えば、帰りたい。帰って、聖女ではないただの私として、自由に過ごしたい。でも……)
気にかかるのは、リーリエのことだった。
事前に情報交換はしてあるものの、それはあくまでパーティーの一晩だけを想定したもの。
長期間入れ替わり続ければ、
(少しでもリーリィの助けになればと、手紙を出しておいたけれど……。あれで、どうにかなるかしら?)
入れ替わりを知られれば、どんな罪に問われるか分からない。
それほどに宝玉姫という立場は重いものだ。
だが、リーリエにはその自覚が無い。それどころか、双子だから見破られるはずが無いと楽観している。
それこそがイーリスの最も
(リーリィ……気をつけて。双子だから大丈夫なんて安心せず、
後ろ髪を引かれる思いで
JUGEMテーマ:青春(ヤングアダルト)小説
(このシリーズは「小説家になろう」さんにも同じ内容のものを投稿しています。小説家になろう版はブログ版よりもルビ多めです。)
僕はどうやら、生きているだけで他人を苛つかせてしまうらしい。
その場に居るだけで、他人を不快にさせてしまうらしい。
だったら、誰の目にも映らない“空気”になれたら良いのに、と思う。
存在が消えるわけではなく、ただ誰からも認識されなくなる、透明な気体に。
誰からも 疎まれず、そこに居ることすら気づかれない、ただその場に漂うだけの“空気”に……。
以前から薄々、気がついてはいた。
僕は普通の人よりだいぶ、要領が悪い。雑な言い方をすれば、 鈍臭い。
他の人間ならそつ無くスムーズに 熟せることに、何故だか妙にモタついてしまう。
小学生の頃は、大縄跳びの中に入るのが苦手だった。
タイミングが 掴めずに、 何時までもずっと、縄の回転を見送ってしまう。
やっとの思いで飛び込めても、 大抵は縄にぶつかり、流れを止めてしまう。
いつもいつも僕の所で 閊えて、周りを苛々させていた。
成長した今も、何かにつけては 閊えて、周囲に迷惑をかけている。
廊下で人を避けようとして、逆に“通せんぼ”してしまったり、レジで決済アプリを上手く起動できずに、後ろに列を作ってしまったり……。
我ながら、スマートさとは無縁の人生だと思う。
器用にそつ無く生きている他の 奴等を見ていると、正直凹む。
彼奴らはきっと、自分が恵まれていることにすら気づいていない。
普通のことをそつ無く 熟すことすら出来ず、不器用さに 喘ぐ人間がいることに、気づいていない。
僕は、自分に自信が無かった。
普通のことさえ 真面に熟せない僕は、明らかに“劣っている”と思っていた。
他人と自分を比べては、劣等感ばかりを育てて来た。
そしてそんな自信の無さが、余計に日常動作をぎこちなくさせた。
どうせまた上手く出来ない、どうせまた失敗する……そんな風に身構えて、 焦って、余計に動きがモタついてしまう。
また周りに迷惑をかけないか、周囲を苛立たせないかと、人目を気にし過ぎて、無駄に 何時でも緊張し過ぎる。
緊張すればするほど、出来るはずのことさえ出来なくなってしまうと知っているのに。
どうしようもない悪循環だ。
たぶんこの世の中は、器用過ぎもしないが不器用でもない“普通”の人間に合わせて造られている。
平均値からはみ出した人間は、いつも何かに 急かされ、焦らされて、余計なミスをさせられる。
それが 惨めで、居た堪れなくて、心が 疲労困憊する。
きっと、この世界の動くスピードは、僕のペースにまるで合っていない。
何かにつけスローな僕は、何時も周りから遅れて取り残される。
何時も何かに追い立てられている気がして、気が休まらない。
誰でも自分らしく、ありのままでいて良いなんて、嘘だ。
世間は“普通”から外れた人間に、何時でも冷たい。
この世は 所詮、弱肉強食の競争社会なのだと、人は言う。
弱い者、劣った者は 淘汰されて当たり前――そう生まれついたのが悪いのだと。
それを言う者は大概、自分は 淘汰される側になることなど無いと、高を 括っているのだろう。
あるいは自分より弱い者、劣った者を見つけては「自分は 彼奴より優れているから大丈夫」と安心しているのだろう。
凡人が優越感に 浸り切って他者を見下す眼差しは、冷たい。
僕はそれを、 厭と言うほど知っている。
以前はその目を恐れ、縮こまってばかりいた。
だけど、厭になって、 飽き飽きして、そのうちに悟った。
彼奴らは、劣っているわけではないが、別段優れているわけでもない。
自分より劣った者を見つけて安心神話に浸りたいだけの“凡人”だ。
僕は、頭の回転や日常動作は他人より鈍いかも知れない。
だけどそんな僕を見下す彼奴らは、精神が平和呆けした可哀想な 勘違い生物だ、と。
人間、一寸先は闇なのに、こんなちっぽけな優位性で安心しきって人生を油断するなんて、凡人にも 程がある。
僕はずっと、自分より優れた他者に 怯えて生きてきた。
上手く生きられない自分を恥じ、周りを 羨んで生きてきた。
だけど、そうやって生きているうちに、ふと気づいた。
そんな風に怯えていた“他人”が、思うほど人生の勝者でも何でもないことに。
周りは僕が羨み 妬むほど、祝福されても恵まれてもいないことに。
人生は、目に見える単純な弱肉強食だけでは決まらない。
きっと、目に見えて劣った僕だから、それに気づけた。
驕ることも油断することも無く、冷静に世界を見つめ続けてきたから、気づけた。
ノリが良くて笑いも取れるクラスの“人気者”が、空気を読めずにやり過ぎてドン引きされる様を、冷静に見てきた。
部のエースとしてイキっていた“天才”が、たった一度の不運な 怪我で全てを失う様を、冷静に見てきた。
人生の勝敗は、空気や時代を上手く読めるかに左右され、時の運にも左右される。
生まれつきのスペックや、手持ちの実力などでは決まらない。
もっと複雑怪奇で、読み難くて、恐ろしいものだ。
弱肉強食が世の 理なら、驕れる者は久しからずの“ 盛者必衰”も、また世の理。
隣にいる誰かより、ちょっと優れているくらいで安心しているなんて、怖いもの知らずにも程がある。
僕も彼奴らも、未来を約束されていないことに変わりは無い。
きっとこの世は、誰にとっても修羅だ。
見せかけの優劣に意味なんて無い。
――だけど、そんな悟りを開ける人間など、きっとごく 僅かだろう。
冷静に世の中を見つめていると、絶望的なまでに気づかされる。
人間は、なんて優劣や序列が好きな生き物なのだろう。
自分に“優”を付けたがり、他人に“劣”の烙印を押し、一つでも上の順位に昇りたがる。
見るからに不器用で格好悪い僕のような人間は、格好の 生け贄だ。
昔から、馬鹿にされるのには慣れている。
嘲笑われ、下に見られるのにも慣れている。
慣れてはいるが、心は 馴れない。
そうやって、意味の無い順位付けに安心する彼奴らの方が愚かだと、今では心の中で、逆に見下せる。
それでもやっぱり、静かに心が沈んでいくことは、止められない。
僕が世の中にいくら悟りを開いてみたところで、周りもそれを悟ってくれるわけではない。
僕が「優劣なんてくだらない」とどんなに 嘆いてみたところで、周りが優劣を 棄ててくれるわけではない。
この世は変わらず、五十歩百歩の違いで他人を見下す、くだらない修羅の世界だ。
僕は、僕を見下し馬鹿にする奴等のことを、好きにはなれない。
意味の無い優越感のために他人を踏みつける者たちに、好意など抱けない。
好きになれない人間だらけのこの世界で、それでも人は人の中でしか生きられないのだと、先人は言う。
実際のところ、学校は何かと集団行動を強制してくる。
グループ学習に、グループごとの自由行動、調理実習の班分け……体育の準備運動さえペアを組まされる。
あからさまに「迷惑だ」「お荷物だ」という顔をされて、それでも僕は彼奴らと行動を共にせざるを得ない。
せめてメンタルが強ければ、愛想笑いの一つも出来ただろう。
だが僕の表情筋は、心と裏腹の表情を上手く浮かべてはくれない。
結局僕は、人づき合いという、人生で最も重要な場面でさえ、そつ無く器用に生きられてはいない。
僕のこの不器用な生き方は、そうそう直るものではないだろう。
そしてこの世の中も、そうそう優しい世界に生まれ変わってはくれないだろう。
十数年間この人生を生きてきて、手に入れたのはそんな悟りめいた 諦観のみだ。
僕はきっとこれからも、こんな僕のまま、この修羅の世を生きていく。
死にたいわけではないが、時々何もかもに厭気が差して、全てを放り出したくなる。
ただただ全てが 煩わしくて、生きているのが面倒臭くなることがある。
優劣に意味など無いと心に言い聞かせても、他人の冷たい目を見れば、厭でも劣等感が目を覚ます。
誰も彼もが僕を卑下し、否定してくるような気がして、 堪らなくなることがある。
そうして他人の目にわけも無く苛立ったり、他人の言動に無性に不快感を覚えたりする。
人はどうして、自分の心ひとつ、器用にコントロール出来ないのだろう。
この世界でありのまま、自分のペースで生きるには、人目が邪魔になり過ぎる。
気にしなければ良いだけだと言われても、実際にそういう視線が有るのに、無いようには振る舞えない。
生きづらくて仕方の無い世界だが、それでも消えてしまいたいわけではない。
優劣つけたがりの凡人に見下されたから消えたくなるなんて、そんなの僕が勿体ない。
ただ、時々無性に、空気になりたくなる。
誰からも見られず、優劣も区別もつけられない、透明な空気に。
誰からも煩わされず、誰を煩わすことも無く、ただありのまま、そのままでいられる――そんな空気になって、この世界に在れたら良いのに……そんな風に、
JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの
・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第70回です。
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大臣たちが本人の知らぬ所でそんな方針をまとめていた頃……リーリエは親交を深める気など露ほども無く、敵情視察に
「……では、王女様はヴァッサーテューア商会のお屋敷に?」
「はい。あれはソフィステスとの交易で財を成した家ですから、トリリトン王家とも
「王都でも一、二を争う豪商の館ですから、下手な大貴族よりも厚いもてなしを受けているに違いありません」
突然現れ王子に抱きついた幼げな王女の話は、翌日には王宮中の人々の知るところとなっていた。
その噂は風のように王都中を
「本日はルーカス殿下を引っ張り回し……あ、いえ……ルーカス様を
うっかり失言しかけた若い女官は、あわてて言い
美貌の王子ルーカスは、宮殿中の独身女性の
叶わないと知りながらも、密かに想いを寄せている女官も多い。
そんな彼女たちにとって、ソフィーローズはふいに
中には、
「私、
自らの恋が叶わないなら、せめて納得のいく相手と結ばれて欲しい――そんな乙女心から、ルーカスとイーリスの恋路を夢見ていた女官は多い。
リーリエは複雑な心境でそれを聞いていた。
(王子様と宝玉姫って、
だが、
だからリーリエは、彼女たちの想いを利用することにした。
「私も、あの王女様では殿下に不釣り合いだと思うわ。だから……王女様の動向を、これからも私に教えて
JUGEMテーマ:ものがたり
・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第69回です。
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「……困ったことになりましたな。まさか、宝玉姫
リーリエがイーリスとして発した言葉は、ルーカスによって国の重臣らに伝えられた。
その発言は五相会議の場でも取り上げられ、各大臣らを渋い顔にさせた。
ソフィーローズとの縁談は、単に未来の王妃を決めるだけのものではない。
ソフィステスとの同盟を確かなものとするため、必要不可欠なものなのだ。
「確かに、あの王女は幼過ぎる。王族の
密室での会議とあって、大臣たちの言葉には
パーティーでのソフィーローズの態度に
国の体面を重んじる者たちは、
「今からでも、別の王女に替えて
「いや、あの方はローレンツ殿下のお相手だ。あの殿下のお相手が
社交の場――特に女性とのつき合いの苦手なローレンツの性格は、宮殿に勤める者なら誰もが知っている。
「そうなると、残るは未来の女王にして水の宝玉守りの姫であらせられる、第一王女ソフィア殿下のみか……。さすがにそれは無理であろうな」
「……となると、あの幼き姫を迎え入れるより他ない、か。して、その王女は今どちらに?」
「ルーカス殿下とご一緒に宮殿内を散策しておいでだ。殿下もご苦労なことだ。あのような子どもの
「なに。あの言動が幼さゆえのことであれば、良き教育係を付ければお変わり頂けるやも知れぬぞ」
「……だと良いがな。だが
「ああ。猊下にお認め頂かねば、ソフィーローズ殿下をお迎えすることはできぬ」
「何とか御二人の関係を修復せねばなりませぬな」
大臣たちは顔を見合わせ、大きく息をつく。
「
「そうだな。女官たちにでも相談して、乙女の好みそうな
「それは良い。そこでルーカス殿下とソフィーローズ殿下の仲も深めて頂ければ一石二鳥と言うものだ」
JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー
・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第68回です。
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「申し訳ありませんが、実の
女官は宝玉姫の“妹”に対し、最大限の礼を
そう言われてしまえば、もうイーリスは引き下がるしかなかった。
(……どういうこと?リーリィ、具合が悪過ぎて元に戻る余裕さえ無いのかしら……)
混乱したまま馬車に乗り込み、イーリスはシュピーゲル家別邸への帰路につく。
(……どうしましょう。このままでは、シュピーゲル領へ帰ることになってしまう。いっそのこと、お父様に打ち明ける……?……いいえ、そんなことをしたら、お父様がどれだけ激怒するか、分かったものではないわ)
事は、公爵本人にさえ
それを、親にも話さず娘たち
(幼い頃は『悪いことをすると
宝玉姫であるイーリスを罰することは、実の父とは言え“公爵”にはできない。
だが、リーリエが“花嫁修業”などの名目で、数年間神殿に奉仕させられるのは、充分にあり得ることだった。
素行の悪い貴族の子女は、そうやって
(今はとりあえず、入れ替わりに気づかれないことが重要だわ。領地に戻らされたって、王都に来れなくなるわけじゃないし……。中央の社交界に出たいとか何とか言って、機会を作れば……)
イーリスが必死に“元に戻る策”を
「……
リーリエは手のひらで光の宝玉を
「いいのよ。私も昨夜の疲れで参っているし、あの子も宝玉姫の妹ということを鼻にかけて、つけ上がっている所があるから」
長椅子に深くもたれかかり、いかにも具合が悪いといった
気分が優れないというのは、リーリエのついた嘘。
思い通りに“
(これでしばらくは、私が宝玉姫よ。今、元に戻っては困るのよ。だってイーリィは二人の恋路を邪魔してくれない。
JUGEMテーマ:<オリジナル小説>
・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第67回です。
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パーティー翌日、イーリスはリーリエと打ち合わせていた通り、王宮に
当初の予定では、イーリスに
だが……
「え……?どういうことですか?私はマリア・
「それは存じております。ですが本日は、宝玉姫
イーリスもよく知る宝玉姫付きの王宮女官は、
イーリスは信じられない気持ちで食い下がる。
「あの……昨夜の宴で姉上は、明日も会ってくれると約束くださいました」
「申し訳ありませんが、本日、猊下はご気分が優れないとのこと。実の
「そんな……」
(気分が優れないって、体調を崩したの?ひょっとして、昨夜の入れ替わりの心労で……いいえ、恋の痛手のせいかも知れない)
イーリスは頭の中でぐるぐると想像を
だが、本人の顔も見られないこの場所で、真相など分かりようはずもない。
「それでは、お見舞いさせていただくことは叶いませんか?私の顔を見れば、姉上も心安らぐはずです」
イーリスは必死だった。
シュピーゲル公爵一行は、明日には王都を
元に戻れるチャンスは今日しか無いのだ。
「申し訳ありませんが、猊下は本日、どなたともお会いになりません」
女官の返事はにべも無かった。
「あの、私……昨夜、忘れ物をしてしまって……。それが無いと、領地へ帰れないのです!どうか、一目だけでも姉上に……!」
「そちらは猊下より
女官は絹の
それは、イーリスが王宮を訪れる大義名分として、昨夜のうちにリーリエに渡しておいた“忘れ物”だった。
「え……。あの……これをリ……姉上が……?」
イーリスは動揺する。
これを渡されてしまっては、もうイーリスがリーリエに会う“言い訳”が立たない。
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・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第66回です。
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「大丈夫だった?ソフィステスの王女様がいらっしゃるなんて、私、知らなくて……」
イーリスはひどく
「大丈夫。上手くやり過ごしたわ。誰にも疑われていないはずよ」
リーリエは、自分がどれだけ
だから、ルーカスとの会話内容をリーリエに話すことはなかった。
「良かった……。でも、油断は禁物よね。どうしましょう?今からでも元に戻る?」
「それは
(それに……まだ私、このままでいたい。
ルーカスの去って行った方にちらりと目をやり、リーリエはそっと胸を押さえる。
「……ねぇ、イーリィ。この入れ替わり、もっと長く続けちゃ
「何を言っているの?この件が明らかになれば、私たち、身の破滅なのよ」
「でも、双子のどちらがどちらかなんて、赤の他人には分かりっこないわ。多少
「それはそうかも知れないけど……どうしてしまったの?リーリィ」
やけに意固地なその態度を
「だって……このままじゃルーカス様、あのソフィステスの王女様に取られてしまうわ」
イーリスはその声と表情にハッとする。
リーリエは
「あの王女様、確実にルーカス様狙いよ。私、このまま王都を離れるなんて嫌。その
「リーリィ……」
イーリスは妹を
だが、政略を黙認してきた身で「大丈夫よ」などと、その場
「仕方がないことなのよ、リーリィ。国同士、王族同士のおつき合いは、私たちにはどうにもできないのだから」
その言葉にリーリエは、イーリスの
(……そう。イーリィは、反対する気は無いのね。このままあの二人が結ばれても、黙って見ている気なんだわ。……私の気持ちを知っているのに)
リーリエは裏切られた気分だった。
イーリスには宝玉を守る聖女としての立場があり、公私混同することは許されない。
だがリーリエは、そんなことには考えが
リーリエに分かっているのは“
(……そう。だったら……二人の進展を
心の中で、リーリエは冷たく