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原油価格は再び「大暴落」してしまうのか?

原油価格は再び「大暴落」してしまうのか?
4/8(水) 11:01配信
東洋経済オンライン

原油市場は大暴落をした後、産油国の減産の思惑などからいったんは上昇。今後はどうなるのか。
ここ1カ月以上激しい値動きが続いている原油市場が、また新たな局面を迎えることになりそうだ。原油相場の指標となっている4月2日のWTI原油価格の値動きは激しかった。すなわち、NY時間の朝方発表された新規失業保険申請件数が600万件を大きく超える内容となり、雇用の落ち込みや景気減速に対する懸念が改めて強まる中で、原油先物価格は1バレル=21ドルを割り込むまで値を下げていた。
だが、その後トランプ米大統領が「サウジアラビアとロシアが近く大幅な減産で合意するのでは」との見通しを示したことを受けて買いが殺到、27ドル台まで30%近くも値を伸ばす展開となった。
アメリカがサウジとロシア両国に減産を呼びかけていたのはそれまでにも伝えられていたから、減産で合意するとの見通しということ自体はそれほどのサプライズではなかったのかもしれない。だが、トランプ大統領は減産規模について「1000万バレルから場合によっては1500万バレルに上る」との見方を示したことが、上昇に拍車を掛けた可能性が高い。
この発言に関してはまだ確認が取れた話ではなく、大統領お得意の見切り発車の可能性が高く、ホワイトハウスのスタッフをまたまた慌てさせたようだ。それでも、その後サウジが週明けの6日に「OPEC(石油輸出国機構)プラス」の緊急総会を開催する意向(その後暫定的に9日開催に延期)を示したほか、ロシアのウラジミール・プーチン大統領も「大幅な減産は可能」との見方を示したこともあって、3日には改めて買いが加速。一時は28ドル台後半まで値を伸ばす展開となった。
新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な景気の減速、都市のロックダウンによる生産活動の停止や人々の移動がなくなったことによる航空機需要の激減などで、今後もエネルギー需要の落ち込みは相当なものになると予想されている。これが長期的に相場の大きな重石となるのは避けられないだろう。
トランプ大統領の見立てどおり、日量1000万から1500万バレルの減産が実現するのであれば、少なくとも1バレル=20ドル台という価格は、割安と考えてよいだろう。市場は往々にして行き過ぎた反応を示すことを考えれば、40ドル台まで一気に値を戻すことがあっても、何ら不思議ではない。
一方で今回も産油国間で意見が対立、減産合意に失敗することがあれば、失望感も加わってまさかの10ドル台前半や、さらに10ドル割れをうかがうまで一気に値を崩す展開になる懸念も消えない。産油国にとって、今が価格下落の流れを断ち切る最後のチャンスとなるかもしれない中、はたして彼らは大幅な減産でまとまることができるのだろうか。
こうした状況下で大きな鍵を握るのは、サウジでもロシアでもなく、アメリカの動向だ。サウジやロシアは現時点では価格下落を受け入れても、世界市場における生産シェアを広げることに重点を置いていると思われる。
だが、需要が低迷している今の状況で、いくら「バーゲンセール」を行ってもシェアを広げる余地はたかが知れている。サウジは一時期日量900万バレル台後半まで落ち込んだ生産量を、1200万バレルまで引き上げる意向を示しているが、それでも生産は約30%しか増加しないし、今の状況下ではそれを実現することが出来るだけの需要は存在しない。
それよりも大幅な減産で合意し価格を大幅に引き上げる方が、石油収入も増加することになる。日量1000万バレルの減産は、現在の世界全体の生産量の約10%に相当するが、それによって価格を1.5倍から2倍にまで引き上げることができるなら、御の字ということになる。こうした単純な計算をするだけでも、現時点では減産で合意するのが産油国にとってベストの選択肢なのは明らかだ。
にもかかわらず、産油国がなかなか減産でまとまることが出来ないのは、今やサウジやロシアよりも生産量が多くなっているアメリカが減産に応じないことが背景にある。今回もトランプ大統領が減産を呼び掛けたにもかかわらず、アメリカ政府は「民間に生産削減を命令する権限はない」との立場を示しており、減産には消極的だ。一方でサウジやロシアは、アメリカやカナダ、メキシコやブラジルなども参加することを減産合意の前提としており、両者の溝は簡単には埋まりそうにない。
もちろん世界最大の産油国となったアメリカも、価格下落の影響は免れることはできない。1日には中堅どころのシェールオイル業者のホワイティング・ペトロリアムが米連邦破産法11条の適用を申請、経営破綻している。今後も破綻が相次げば、信用収縮が進んでいる社債市場、特にハイイールド債市場の信用不安につながる恐れは高く、それがさらなる株価の急落をもたらすことも十分にあり得る。
サウジやロシアはもともとアメリカの減産には期待しておらず、今回の増産方針も自分たちよりも生産コストの高いシェールオイル業者を採算割れに追い込み、破綻させるのが主な目的だったと言っても過言ではない。3日に発表されたベイカーヒューズ社のリポートによると、アメリカ国内の原油の稼働リグ(掘削機)の数は、前週から62基と大幅に減少した。3月13日時点で683基あったのから、この3週間で121基、18%も減少している。こうしたリグの減少には、まだ生産の行われていない、試し掘りのものも含まれており、すぐに生産の減少につながるとは限らない。だが、今の状況を見る限りでは、意外に早く生産が落ち込んでくることも考えられる。
恐らくサウジやロシアはアメリカのシェール業者が破綻し、生産が大幅に落ち込んだのを確認してから、一転して大幅な減産の方向に方針を切り替え、一気に価格を押し上げる腹積もりだったのだろう。
今のところ、当初は6日に行われるとされていたOPECプラスの緊急総会が、参加国の調整に手間取っているとの理由などから9日に開かれる見通しだ。ここまでの価格急落を巡り、サウジとロシアがお互いにその責任が相手方にあると非難するなど、両国の関係もやはり良好というわけではないようだ。
もちろん、ここまでの価格下落で危機感が高まっているのは間違いないし、アメリカが参加するのであれば大幅減産で合意する可能性は十分に高いと思われるが、一番大きな問題はトランプ大統領の行動が最後の最後まで読めないということだろう。
大幅減産に期待して買いを仕掛けるか、合意失敗によって場合によっては10ドル台前半まで値を崩したところで、満を持して買い参入するか。トレーダーは大きな選択を迫られている。株式など他の市場にも影響を及ぼす可能性がある。


いろんな見方があります。
悪い時には悪いように転ぶ、それが景気サイクルの下降局面の経験則だが。