朝、起きない子どもにイライラ


感情の取り扱い事例
言葉で伝えず、態度で示すのは幼児性

なかなか起きてこない子どもにイライラした経験はどんな母親にもあるだろう。ましてや仕事をしていると、その出勤時間からの逆算して、何時には家を出なければ遅れてしまう…と毎朝、必死に起こし、朝食を食べさせ、着替えさせ、顔を洗って歯を磨かせ、その度に時計を見ては、何時?大丈夫?急ぎなさーい!と戦争のよう。

受講生は「毎朝、子ども達がぐずぐずしてなかなか起きないことにイライラしてしまうんです。」と話し始めた。少し早く起こして準備させればいいとわかっているが、母の貴重な一人の時間が朝だったりして…。

わかる。強く共感する。

では、起きない子ども達にどうするのか?という質問に対して、イライラしてつっけんどんに話をしてしまうと。

それはもしかして、態度で示してない?

「そうですね、、、イライラしていることや焦っていることを態度で示してます。あぁ…それは私の母も同じかも。機嫌が悪くなる母を見て、何かを察しなければならないと感じていました。」といった気づきを皮切りに、受講生は自分の幼少期の話をしてくれた。

二人姉妹の長女である受講生は、小さい頃、妹がわがままを言ってるのに対して母が機嫌を悪くし態度が変わっていくのを感じ、妹を隣の部屋に呼び出して「ちゃんとお母さんの言う通りにしない!」と叱っていたという。

力がある、賢いこの受講生は、親の態度や表情を読み、期待に応えることが出来てしまったんだ。

念の為に書いておくが、相手の期待を感じ、応える力が一概に悪いと言っている訳じゃない。それは素晴らしい能力で、相手の期待がわかる力があり、更にその期待に応える力があったからこそ、現在の受講生のご成功がある。
この能力にネガティブな面があるとすれば、相手の期待がわかりすぎてしまうので、いつの間にか自分の欲求を感じないようになっていく。それどころか、相手の期待に応える事が自分の欲求だと勘違いしてしまう場合だ

相手の期待を察し、その期待に応えれる能力を持っている子どもは、俗に言う「良い子」と言われ、周りの人を察することが癖となり、大人になっても続いてしまうと、周りの人が態度で示すと反射的に相手の欲求に応えることをやってしまう。すると、自分が何をしたいのかがわからなくなったり、本当にやりたいことではないのでフラストレーションは溜まっていく自分がやりたいことをやってない、相手ばかりを優先させていることでだんだんと自分を虚しく感じ、結果自分に怒りが向けられていく。

この受講生の場合は、自分も自分の母と同じ様に子ども達に態度で示す事でわかってもらおうとしていたんだ。自分が察する事ができたから。

この気づきを得た受講生は、子ども達に言葉にして伝えることにチャレンジする。

すると、ロジカルに伝えよう!が頭の中で優先的だと、イラッとする暇なく、どう伝えよう…の思考優先で自分の機嫌が全く悪くならない。それどころか、子ども達にロジカルに「朝、起きて欲しい」ことを伝えると、今までなんだったのか…というくらい、すぐに起きる。起きてくれて、うれしいを伝え続けると、長子(9歳)が協力的で優しく次子(5歳)を起こしてくれている。「何だったんだ…、今までなんだったんだ…(本人の言葉)」

言葉で伝えることを意識するようになってから、戦争だった朝がスムースに起きてくる子ども達と和気藹々の朝になった。すると、受講生はさらなる気づき、ぐずっとする次子(5歳)は「もしかしたら私に察して欲しがっていたのかも…」を得る。

そこに気づく以前は、次子の「察してほしい」の意図を全く察せず「は?」とイラッとしていたが、「わからなかったから、もうちょっと教えてくれる?」と穏やかに返答するようになると、次子はぐずっとなるどころかちゃんと答えるようになり、母子の関係性は格段に穏やかなものとなった。

この次子は娘ちゃんなのだけど、女性は言葉にして伝えることを苦手とする。なぜなら、男性は挫折を恐れるのに対して女性は拒絶を恐れるから。言葉にしてオファーして断られるとまるで自分が否定したように女性は感じてしまうので、自分を守るために言葉で伝えることを回避してしまう。

加えて、女性同士の関係では察することをとても大切にする。言葉にするのは野暮で、察することが最高の能力であり、愛であると感じている。

例えば、彼女の誕生日に「せっかくプレゼントするなら彼女が欲しいものをプレゼントしたい」と思う男性が「何が欲しい?」と尋ねると、女性はどこかで少しがっかりしている。こんなものをプレゼントしてくれたら嬉しいと考えていても、思わず「何でもいい」と言ってしまう女性は少なくない。直接言葉で伝えるのではなく、察してプレゼントしてくれるのが最高の愛だと思っているから。冷静に考えれば、それがどれほど難しいことか女性も理解できるのだけど、女性同士は「察する」中で生きているからなかなかそのことに気づけない。

だから今回、母が自分の想いを言葉で伝えるトレーニングをしていることは大きな意味があり、次子の娘ちゃんも5歳ながらにして言葉で伝える力を身に付けていくことにつながる。

態度で示すのは幼児性だ。あなたの職場にもいないだろうか?イライラをドアを閉める音で示したり、突然パソコンから一切顔を上げずに仕事をしだしたり、急に無表情や無口になったり…。

大人になっても言葉で伝える力が身に付いてない人は多い。それは態度で示せば周りが察して動いてくれた環境にいたのかもしれないし、ある意味、察する力がある人なのかもしれない。自分は人の態度から察して期待に応えることができるので、相手も自分のことを察して期待に応えるはずだと誤解しているのかもしれない。
しかし、相手が察することをしない人だと自分が示した態度は徒労で終わる。それどころか大人気ないと思われたり、厚かましくも言葉で伝えた他者の意見がまかり通ってしまったり。察せられることを待っている自分はイライラが増し、その怒りは延いては自分に向けられ落ち込んでしまう。

社会はいろんなバックヤードをもった人たちの集まりなので、『わかるだろう運転』は危険だ。言葉で伝える力をつけなければならない。そして、言葉で伝える力はいくつからでも鍛える事ができる

伝えるための基本原則は2つ。

ひとつはシンプルに。
伝わるようにと思うあまり、くどくどと長く話してしまう人は多い。それでは逆に伝わらない。なるべくシンプルに伝えることを心がけよう。

もうひとつは、主語は「私」で。
私がどう思うか、私が何をして欲しいかは誰も咎めないし、誰も責めない。伝える時は「私」を主語にし、「私は〜と思う」とシンプルに伝えよう。

こう書いている私自身も「言葉で伝える」ことにおいて忘れがたい出来事がある。
家族旅行に行っても、写真を撮るのは私ばかりで、旅行を写真で振り返っても私の写真はほぼほぼ無い。こういった状態に何年も私は「家族は気が利かない」と不満を持っていた。しかし、ある時、仲良し夫婦とご一緒する機会があり、その奥様がカメラを旦那様に渡して「ここで撮って!」とオファーしているのを目撃。あぁ…写真を撮って欲しかったら、そう伝えるべきだったと大きなショックを受けた。私は言葉で伝える事なく、「写真撮るよ」と家族が察して言ってくる時をずーーーーーっと待って、不満を貯めていたんだ。

そんな私の経験からもハッキリと断言する。
言葉で伝えることなしに相手に伝わることは少ない。相手が察することを期待てして待ち続けるより、言葉にして伝える方が圧倒的に早い想いを言葉にする力をつけると、気遣いに回していたエネルギーを本来、注力すべきことに注ぐ事ができる。仕事で言えば、周りを察するエネルギーはあなたの仕事のエネルギーをどんどん奪い、あなたを消耗させる。言葉にして伝え合う力をつけるだけで仕事に向かうエネルギーは格段に増すはずだ。