こんばんは。Aokiです。
試飲のお時間が終了しました。
『WHISKY CLUB』からウイスキーを楽しまれた方々は、
少々、酔いも回っているご様子です。
帰りの階段は、ガイドが先頭で、落下防止に努めます。
☆☆☆
「皆さま、本日は、新千歳空港から余市蒸溜所ツアーに
ご参加いただき、誠にありがとうございます。
少しでも、ウイスキー、そして、余市蒸溜所を
好きになっていただけましたら幸いです。」
余市駅では少々硬めの表情をされていた方々も、
この道のりをご一緒する中で、お互いに
気心が知れる間柄になられたようです。
「では、バスの段差にお気をつけください。
この後の楽しい旅をどうぞ満喫なさってください。」
バスの入口で、おひとりおひとりにお礼を申し上げ、
車内へと促します。
さっちゃんの顔が曇っていることには、気づいております。
最後の乗車が、こちらの親子です。
「ガイドさん、今日は本当にありがとうございます。
とても楽しいツアーで、この子もとっても喜んでいます。」
「そう言っていただけると、大変有難いですね。
どうぞ良い旅を。」
そこへ、私の袖を引っ張る小さな手が・・・
「おじさんは、バスで一緒に行かないの?」
責め口調で訴えるさっちゃんに、お母さんがやさしくたしなめます。
「ガイドさんはお仕事があるから、ここでお別れするのよ。」
今にも泣きだしそうなさっちゃんは、口を真一文字に、
黙ってバスに乗ります。
お母さんに、洋服に付けてもらったヤカン、いえ、
ポットスチルのピンバッジも寂しそうです。
お母さんが深々と頭を下げられるので、大変恐縮いたします。
バスが発進し、緩やかな曲線を描く中、車窓には、
こちらをじっと見つめる小さな瞳があります。
☆☆☆
バスは、余市蒸溜所を廻り込むように国道5号線に入ります。
右手に余市駅が見えるころ・・・
「ああ、しまった!」
車内に響き渡る声の主は、八兵衛さん。
「どうしたんだい?八さん。」と長老。
「出発前にトイレに行くのを忘れてた!」
「八さんらしいですね。」と
リタ?ハーマイオニー?おじさん。
「運転手さん、悪いけど、どこか、
トイレのある所で停めてもらえないかい?」
面倒見のいい長老が、交渉にあたる。
「わかりました。
余市駅隣接のお店にトイレがありますから、
そこに停めましょう。」
「すまんね。」
バスは右折し、余市駅前に停車します。
うっかり八兵衛さんが、一目散に余市駅に向かいます。
あっ、そっちは逆。
駅員さんに尋ねて、無事、トイレに辿り着いたようです。
バスは再び緩やかに発進します。
左手に見える公園は、すっかり初夏の装いです。
「あっ!」
「今度は誰だ?」
すっかり一行の世話役となった長老が尋ねます。
「おじさんがいる!」
声の主は、さっちゃんです。
「ははは、さっちゃん、ガイドさんは、
さっき蒸溜所に残っていたじゃないか。
ここにいるわけはないよ。見間違えたんだね。」
八さんが、自分のうっかりを棚に上げて、仰います。
「違うもん!確かにいたもん!」
バスが通り過ぎるとき、さっちゃんのお母さんが、
もう一度、頭を下げてくださいました。
出逢いはいつも、一度きりです。
ですが、それは、新たな出逢いを否定するものではありません。
いつでも、お待ちしています。
~ the end ~
Z.Aoki
試飲のお時間が終了しました。
『WHISKY CLUB』からウイスキーを楽しまれた方々は、
少々、酔いも回っているご様子です。
帰りの階段は、ガイドが先頭で、落下防止に努めます。
☆☆☆
「皆さま、本日は、新千歳空港から余市蒸溜所ツアーに
ご参加いただき、誠にありがとうございます。
少しでも、ウイスキー、そして、余市蒸溜所を
好きになっていただけましたら幸いです。」
余市駅では少々硬めの表情をされていた方々も、
この道のりをご一緒する中で、お互いに
気心が知れる間柄になられたようです。
「では、バスの段差にお気をつけください。
この後の楽しい旅をどうぞ満喫なさってください。」
バスの入口で、おひとりおひとりにお礼を申し上げ、
車内へと促します。
さっちゃんの顔が曇っていることには、気づいております。
最後の乗車が、こちらの親子です。
「ガイドさん、今日は本当にありがとうございます。
とても楽しいツアーで、この子もとっても喜んでいます。」
「そう言っていただけると、大変有難いですね。
どうぞ良い旅を。」
そこへ、私の袖を引っ張る小さな手が・・・
「おじさんは、バスで一緒に行かないの?」
責め口調で訴えるさっちゃんに、お母さんがやさしくたしなめます。
「ガイドさんはお仕事があるから、ここでお別れするのよ。」
今にも泣きだしそうなさっちゃんは、口を真一文字に、
黙ってバスに乗ります。
お母さんに、洋服に付けてもらったヤカン、いえ、
ポットスチルのピンバッジも寂しそうです。
お母さんが深々と頭を下げられるので、大変恐縮いたします。
バスが発進し、緩やかな曲線を描く中、車窓には、
こちらをじっと見つめる小さな瞳があります。
☆☆☆
バスは、余市蒸溜所を廻り込むように国道5号線に入ります。
右手に余市駅が見えるころ・・・
「ああ、しまった!」
車内に響き渡る声の主は、八兵衛さん。
「どうしたんだい?八さん。」と長老。
「出発前にトイレに行くのを忘れてた!」
「八さんらしいですね。」と
リタ?ハーマイオニー?おじさん。
「運転手さん、悪いけど、どこか、
トイレのある所で停めてもらえないかい?」
面倒見のいい長老が、交渉にあたる。
「わかりました。
余市駅隣接のお店にトイレがありますから、
そこに停めましょう。」
「すまんね。」
バスは右折し、余市駅前に停車します。
うっかり八兵衛さんが、一目散に余市駅に向かいます。
あっ、そっちは逆。
駅員さんに尋ねて、無事、トイレに辿り着いたようです。
バスは再び緩やかに発進します。
左手に見える公園は、すっかり初夏の装いです。
「あっ!」
「今度は誰だ?」
すっかり一行の世話役となった長老が尋ねます。
「おじさんがいる!」
声の主は、さっちゃんです。
「ははは、さっちゃん、ガイドさんは、
さっき蒸溜所に残っていたじゃないか。
ここにいるわけはないよ。見間違えたんだね。」
八さんが、自分のうっかりを棚に上げて、仰います。
「違うもん!確かにいたもん!」
バスが通り過ぎるとき、さっちゃんのお母さんが、
もう一度、頭を下げてくださいました。
出逢いはいつも、一度きりです。
ですが、それは、新たな出逢いを否定するものではありません。
いつでも、お待ちしています。
~ the end ~
Z.Aoki