Nikon D610へ“ INDUSTAR 50-2 50mm/F3.5 ”を装着したところ。
レンズが小さいせいかカメラがD5クラスに見えなくもない。
~比較したレンズたち~
押入れの防湿容器を漁ったらいろんなオールドニッコール標準レンズが出てきました。
すべてマニュアルフォーカスレンズです。
いつの間にこんなに…(^_^;)
A: INDUSTAR 50-2 50mm/F3.5・・・ テッサータイプ, 3群4枚・・・1950年代後半~1990年
B: Ai Nikkor 45mm F2.8P・・・ テッサータイプ, 3群4枚・・・2001年2月~2006年3月
C: Ai Nikkor 50mm F1.8S・・・ 変形ダブルガウスタイプ, 5群6枚・・・1980年3月~1982年10月
D: New Micro Nikkor 55mm F3.5・・・ クセノタータイプ, 4群5枚・・・1975年1月~1977年Ai化~1979年10月
E: Ai Nikkor 50mm F1.8・・・ 変形ダブルガウスタイプ, 5群6枚・・・1978年1月~1982年10月
F: Ai Nikkor 50mm F1.4・・・ 変形ダブルガウスタイプ, 6群7枚・・・1977年3月~1981年6月
G: Ai Nikkor 50mm F1.4S・・・ 変形ダブルガウスタイプ, 6群7枚・・・1981年7月~2018年9月継続中
※ Nikkorレンズの生産期間はNikon Lens Versions and Serial Nosを参考にしました。
基本設計はそのままに、途中でAi化やAi-S化などのマイナーチェンジをしているレンズは生産期間が
極端に短かったりします。
Nikkorのマルチコーティングが美しい。
INDUSTARは無コートで部分的にシングルコーティングが施されている。
各レンズの厚みを見たところです。(注:C,F,Gはフィルターを外し忘れましたのでその分少し厚く見えます)
A,B,Cが通称パンケーキレンズと呼ばれる薄型レンズの仲間です。
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~実写比較~
すべてを撮り比べるのはしんどいので、この中からA,B,C,D,Gの5モデルを実写比較しました。
絞り1段ごとに撮影しましたが、ここでは各レンズの開放絞りと、開放から1段絞った絵と、中間絞りのF8と、かなり絞り込んだF16の4枚づつを掲載します。
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A: “INDUSTAR 50-2” F3.5開放 1/1000秒
A: “INDUSTAR 50-2” F5.6 1/500秒
A: “INDUSTAR 50-2” F8 1/200秒
A: “INDUSTAR 50-2” F16最小 1/50秒
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B: “Ai Nikkor 45mm F2.8P” F2.8開放 1/1600秒
B: “Ai Nikkor 45mm F2.8P” F4 1/800秒
B: “Ai Nikkor 45mm F2.8P” F8 1/200秒
B: “Ai Nikkor 45mm F2.8P” F16 1/50秒
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C: “Ai Nikkor 50mm F1.8S” F1.8開放 1/4000秒
C: “Ai Nikkor 50mm F1.8S” F2.8 1/2500秒
C: “Ai Nikkor 50mm F1.8S” F8 1/320秒
C: “Ai Nikkor 50mm F1.8S” F16 1/80秒
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D: “New Micro Nikkor 55mm F3.5” F3.5開放 1/1250秒
D: “New Micro Nikkor 55mm F3.5” F5.6 1/640秒
D: “New Micro Nikkor 55mm F3.5” F8 1/320秒
D: “New Micro Nikkor 55mm F3.5” F16 1/80秒
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G: “Ai Nikkor 50mm F1.4S” F1.4開放 1/4000秒 (シャッター速度上限に付き現像時露出補正-0.6EV)
G: “Ai Nikkor 50mm F1.4S” F2 1/4000秒
G: “Ai Nikkor 50mm F1.4S” F8 1/250秒
G: “Ai Nikkor 50mm F1.4S” F16最小 1/80秒
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~実写後雑感~
ブログサイズの写真ですと画質の差が判りにくいですので、Nikon ViewNX-iを用いオリジナルサイズを
パソコンの27inchフルHDモニターで拡大したりして比較した感想などを述べます。
なお、少しの露出差で色乗りが違って見えますので、その部分は差し引いて評価しました。
各モデルに共通
絞り開放での周辺減光はどのモデルでも多少なりとも発生している。
絞り込んでいくと解像度は上がっていくが、絞り過ぎるとF16あたりから極僅かに眠くなり始めて、F22以
上に絞るとぼやけているのがより判りやすくなる。
これは絞り羽根のエッジにおける光の回折効果よるもので、 絞り込むにしたがって回り込む(回折する)
光の成分が、直進成分に対し比率として多くなり解像力が低下することが原因のようです。
この結果からすると、センサーサイズや画素数にもよるかも知れませんが、デジカメにおいては被写界
深度を深くしたいなどの意図した目的が無い限り、絞り値はF16位までに留めた方が良さそうです。
また、興味深いことに同じレンズタイプ同士は絵作りも似ておりました。
A: INDUSTAR 50-2 50mm/F3.5・・・ テッサータイプ, 3群4枚
絞り開放での周辺減光が最も大きい。
開放F値が大きいせいか絞り開放から思ったより良い画質。
絞るにつれ解像度は少し上がるが、変化量は少なくF11が最も高画質。
拡大すると精緻さが低くあいまいな画質だが、その個性を作風に生かせれば面白いかも。
コントラストもNikkorよりやや低い感じ。
D610へ非CPUレンズ登録をすることでカメラ内蔵の露出計を使うことが可能でした。
例えば開放絞り値F4を登録しておき、レンズの絞り指標をF4に合わせて測光し、この時露出計の適正
値を示すシャッタースピード値が1/500秒だったとすると、実際に撮影したい絞り値が2段大きいF8の場
合、シャッタースピードを2段遅い1/125秒へ変えたり、ISO感度を2段上げるたりすることで露出補正す
るといった具合です。
ただし、このことは光学ファインダーによるミラー方式一眼レフと組み合わせた場合であり、今後主流と
なっていくであろうミラーレス一眼と組み合わせれば、電子ビューファインダーあるいは背面モニターで
実際に写る明るさをリアルタイムに確認しながら露出を調整すればよいわけで、さらにボデー内手振れ
補正が付いているカメラではその恩恵にもあずかれますので、時を越えてオールドレンズやマニュアル
レンズを手軽に楽しめる環境になってきました。
B: Ai Nikkor 45mm F2.8P・・・ テッサータイプ, 3群4枚
INDUSTAR 50-2と同じテッサータイプだが、さすがにNikkorであり、設計の新しさもあってか、周辺減光
やコントラスト、解像度などすべてで勝っている。
INDUSTAR 50-2にも共通するが、解放から比較的シャープなせいか絞り込んでいってもどんどんシャー
プになっていく変化量は少ない。
F8前後が最も高画質。
そして何よりも画の線が太く力強い感じのINDUSTAR 50-2とよく似た描写をするが、これがテッサータイ
プの特徴なのかもしれません。
このレンズもマニュアルフォーカスレンズですが、CPU内蔵で電気接点を備えており、レンズ情報をカメラ
ボディーへ伝えるので、装着しただけでRGBマルチパターン測光Ⅱによる絞り優先自動露出が機能し、
撮影データも記録されます。
生産期間が短く中古市場でプレミア化しつつあるので大切に使っています。
C: Ai Nikkor 50mm F1.8S・・・ 変形ダブルガウスタイプ, 5群6枚
レンズ構成は薄型化しにくいガウスタイプなのにパンケーキ。
薄くて軽いのでカメラバッグの隅に入れっぱなしでも邪魔にならない。
小さい割には画質が良いので、フィルム時代には最も持ち出す機会の多かった標準レンズ。
今回撮り比べてみて改めて、画の線が細く精緻でクリアーな画質を再認識。
開放ではフレアーで少し甘いが、1段絞ると改善され、F5.6~8が最も高画質。
現在でも光学基本設計はそのままに“Ai AF NIKKOR 50mm F1.8D”として受け継がれているようです。
詳細はニッコール千夜一夜物語の第六十夜に詳しい
D: New Micro Nikkor 55mm F3.5・・・ クセノタータイプ, 4群5枚
G: Ai Nikkor 50mm F1.4S・・・ 変形ダブルガウスタイプ, 6群7枚
1981年9月発売から現在まで長きに渡り継続販売している超定番ロングセラーマニュアルフォーカス
レンズです。
さすがに明るいレンズだけあって、絞り開放ではF1.8Sよりもさらにフレアーが多く、画面の中央部から
広い範囲に渡りソフトな感じですが、拡大するとフレアーの中にしっかりとピントの合った像が見えます。
1段絞るとほとんど問題ないくらいに改善され、絞りF4~11の広い範囲でキレの良い高画質で、コントラ
ストも高いニッコール伝統の良さを今なお残す逸品です。
同じ変形ダブルガウスタイプのF1.8Sと同様、画の線が細く精緻でクリアーな画質。
開放から絞り込んでいった時の画質変化が大きいので、絞りを生かした作品作りが面白そうですが、
残念ながら筆者はまだ使いこなせていません。
ヨドバシカメラ : Ai Nikkor 50mm F1.4S
※ C,D,Gの非CPU Aiレンズは、あらかじめ開放F値と焦点距離をD610へ登録しておき、使う際に呼び出せばRGBマルチパターン測光による絞り優先自動露出が機能します。
※ お詫び
撮影時A,Bはフィルタ無しでしたが、C,D,Gはスカイライトフィルターが付いておりました。
その影響で、C,D,Gは少しマゼンタ寄りの発色をしております。
CはKenko製1B SuperPRO(W)フィルター、DとGはNikon製L1Bcフィルターを使用。
透かして見るとKenko製はNikon製より極僅かに濃い目のマゼンタ色をしており、写真にもその傾向が見て取れます。
実使用上はRAW現像時に色調補正をするので問題ないのですが、このような描写比較ではすべて外して
撮影すべきでした。m(__)m
でもこうやって改めて見比べるとスカイライトフィルターは効果的で、撮影後に色調補正できないフィルム時代には不可欠なアイテムでした。
~今後のゆくえ~
“INDUSTAR 50-2”は順光の風景では想像していたよりは良く写りましたが、何やら逆光の玉ボケが『ぐるぐるボケ』とかいう個性的な描写をすることがあるらしいので、今後条件の見合う機会がありましたら再度試写してみます。
また、ニッコールはどれも素晴らしく、特に“Ai Nikkor 50mm F1.4S”は今でも現役で販売されているだけの実力と魅力を備えており、絞り開放のソフトな描写で遊んでみたくなりました。
んン、絞り開放からシャープでクリアーな明るいレンズがあるってか?
けっしてCarl Zeiss Otusなどの超ド級標準レンズ沼にはまらないよう用心用心!
くぅ~っ、次元が違う💦