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「手握っていいですか」と少し気になる人から言われたらどうする?

何年か前の冬だったと思うけど、一人で映画を見に行った時に少し気になる人から「手を握っていいかな?」と話し掛けられた経験があります。

この日は日曜日の休日に朝から暇だったので、封切られたばかりの『バイオハザード・5』を見に行く為に地元のデパートにある映画館に行きました。

このバイオハザードシリーズはプレイステーションのゲームが元になったゾンビの恐怖を存分に堪能できるホラー映画、僕はゲームも好きだったし映画もシリーズの1作目から見ている無類のゾンビ好き、でも興味の無い人からすれば少し変わった好みになるかも知れませんね。

シリーズの4作目から3D映画になったバイオハザードを映画館で見るのはシーリーズ1作目以来となり、初めて映画館の大スクリーンで見る、3Dで暴れまくるゾンビの迫力を存分に楽しみたいと思い会場のど真ん中辺りの座席を指定してチケットを購入、上映開始時間までまだ1時間ぐらいあるし久しぶりのデパートだったしで、何年ぶりかに映画館の下階にあるゲームコーナーで時間潰しをする事に決め、両替をした100円硬貨を握り締めながら遊んだゲームはもちろんゾンビもののゲーム、自室のテレビ画面と比べ物にならない迫力で迫って来るゾンビを相手に拳銃や散弾銃をぶっぱなしながら、ふと時計を見るとすでに上映開始時刻が数分過ぎていたので慌てて上映会場へと向かいました。

登りエスカレーターを駆け上がって息を切らせながら会場に入ると会場内はすでに満席状態、スクリーンに目をやると上映が始まったばかりみたいだったので、チケットに印刷されている番号の座席、真ん中にポツンと一つだけある空席を目指し腰をかがめて「すいません」を連呼しながら何とか真ん中の方まで辿り着くと、暗くてよく見えなかったせいと焦っていたせいもあるのでしょうが、僕が座るはずの空席は一列前の列にあったんです・・・

だからって今更にまた「すいません」を連呼しながら引き返す訳にもいかず、思い切って前の座席の背もたれを跨いで自分の座席に腰を下ろそうとした時、右足がパーマ頭のおっちゃんの頭をかすってしまい、少し「ヤバい!」と思った途端に睨まれたような気がしながらも、あくまでも気付かなかったふりを通して座席に腰を落とし、おっちゃんと目を合わせないように反対の座席に顔を向けた僕の目に飛び込んで来たのが、何か見覚えのある懐かしい女性の横顔・・・

誰だったかな?

なんて考える必要も無く思い出した女性の横顔、それは僕が二十歳過ぎの頃に交際をしていた彼女とそっくりな感じの女性が一人で映画を見に来ている様子・・・

そう言えば彼女は凄くヤンチャな性格をしていて、女性なのに僕の趣味に合わせてくれて二人でゾンビゲームを楽しんだ事があったなぁ・・・

なんて思いつつも、大きなマスクと3Dメガネで隠された横顔ではハッキリと彼女だとは確信が持てないままスクリーンに目を移し、隣の女性の事は気にしないようにして、楽しみにしていた3Dスクリーンに集中していたのですが、確かに映像は迫力満点なのに、僕がおっさんになって感性が変わったせいなのか?

映画のストーリーがイマイチ面白く思えなくて、益々に隣に座っている女性が気になり始め、肘かけに置いた手がふと女性の手と触れた瞬間、初めて彼女と手を繋いだ時の思い出がつい最近の出来事のように頭の中のスクリーンに・・・

彼女と初めて手を繋いだのは神戸のルミナリエを見に行った時、かなりシャイだった僕なのに、ちょっとしたハプニングのおかげでスムーズに彼女の手を握り締める事が出来た思い出が昨日の出来事のように鮮明に・・・

満員電車に揺られながらも初めて行くルミナリエには期待をしまくり、何の期待かと言うのは説明するまでもなく『最近知り合ったばかりの彼女と親しくなれる期待』です。

それまでも彼女とは何回かデートをしていたけど、恋愛経験の少ない僕はどうやって手を繋いでいいのかも解らずに彼女と手を繋ぐタイミングを見計らうばかりの時間が過ぎ、ルミナリエ会場の駅に近付くにつれて電車内には仲良く手を繋ぐカップルの姿が目に付くようになっていたので、僕もどうにかその場の雰囲気に合わせて彼女の手を繋ごうと勇気を振り絞っている最中、もうすぐ駅に到着しそうになったので、電車を降りる時に離れ離れにならないようにと、緊張しながらも、やっとさりげなく握り締めた彼女の左手にはいつの間にか手袋が・・・

「あれ?いつの間に手袋を?」

と疑問に思いながらも、ギュッと握り返してくれた彼女の左手を引っ張る形で電車からホームに降りて横を向いた視線の先には、僕に手を引かれて後ろにいるはずの彼女の横顔が・・・

「あれ?ほな俺は誰の手を引っ張ている?」

と思いながら後ろを振り向き、しっかりと握り締めている手を辿って目線を上げて行くと・・・

恥ずかしそうな表情で僕を見上げている中学生か小学校高学年の女の子と目が合い、顔を見合った瞬間に二人とも慌てて手を離し、僕は隣にいたお父さんらしき人物に「すいません」とひたすら平謝り、すると気まずそうに速足でホームから去って行く女の子とお父さんらしき人物、そんな家族連れを尻目に彼女は周りを気にも止めずに大爆笑、僕も一緒に爆笑するしかありませんでした。

そんなコントか漫画みたいなアクシデントのおかげで、ルミナリエ会場では「スムーズに手を繋ぐ事が出来るかな?」とタイミングを見計らいながら光のトンネルをくぐっていると、何と彼女の方から「手を握っていいかな?」と、風邪気味のしわがれた声で話し掛けて来たんです!

もちろん!

と心の中で答えてそっと握り締めた彼女の左手には又もや知らない間に手袋が・・・

でも今回は間違い無く彼女の手を握りしめているのを確認・・・

でも何か違和感が・・・

と思ったところで目が覚めたんです。

それで視線を上げて見た目の前の大きなスクリーンにはすでにエンディングロールが流れている最中でした。

朝食後に飲んだ風邪薬の影響だと思うのですが、映画の途中ですっかり熟睡をしてしまっていたみたいで・・・

でもしっかりと握りしめている彼女の左手の感覚がやけにリアルに感じたので「まさか隣に座ってる女性はやっぱり交際していた彼女!?」と左を向くと誰もいない空席・・・

まだ覚めやらぬ頭で「そや・・・俺は右手で彼女の左手を握り締めているんや・・・」と気付いたので、寝惚け眼で右を向くと・・・

何とそこにはスクリーンから飛び出したような傷だらけでゾンビその物の顔が!

まさかまだ夢の中?

それとも夢の中で映画を見ている?

と思い慌てて3Dメガネを外してじっくりと眺めたゾンビの顔の正体は・・・


















明らかにパンチパーマが伸びた感じの髪型・・・

顔中には幾つもの刃物傷らしき傷跡が・・・

僕の右手を強く握り締める左手には確実に小指が無い感じ・・・

すると、ゾンビの口からはドスの効いたしわがれた声で「にいちゃん・・・ようも人の頭に蹴りを入れてくれたな・・・にいちゃんにキッチリと世の中のスジっちゅうもんを教えたるわな・・・」との言葉が・・・

あまりの恐怖に身を震わせて「すいません!」を連呼しながらも、物凄い握力で握り閉められた右手を引っ張られ、人目の無い屋上駐車場まで引き摺り出されてしばらくした頃、血塗れになって形の変わった顔に、ビリビリに破れた服装に、その時の僕の様子は何処から見ても、スクリーンから飛び出して来たゾンビぞの物の姿だったと思います。


信じるか信じないかは・・・

あなた次第です・・・



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