ヨーガスートラ 2章36節~2章41節






सत्यप्रतिष्ठायां  क्रियाफलाश्रयत्वम्   2-36

サティヤプラティシュターヤーン 
クリヤーファラーアシュラヤットヴァン


सत्यप्रतिष्ठायां サティヤプラティシュターヤーン
真実を語る習慣が強固になると

क्रियाफलाश्रयत्वम्
 クリヤーファラーシュラヤットヴァン
言動の結果がそのとおりになる。


武道で重んじられる「心技体」は、これら能力がひとつに合わさり力を発します。この36節も同じように、言葉が放つバイブレーションと思考のバイブレーションがひとつの焦点に合わされば、その言動のとおりになります。

肉体などの物質界は最も重い世界です。サーンキャ哲学の25の要素からなる世界観では、より軽くて目にみえない微細な世界が転変を繰り返すことで最終的に物質界ができました。何かを制するには、目に見えないものほど大切にしなさいと教えられる所以です。

そのため、心が上の空であったり、迷いが多いとエネルギーが分散されてしまいます。冗談ばかり言う人のバイブレーションもそういう波長になってしまうようです。

日常会話やマントラを読誦する時も、心が真っすぐにそれへ向かっていると言葉に命が宿り、この世界がより真実味のあるものになります。


【追記】
「神の言葉」とよばれるサンスクリット語は音に命があり、それが製本されると、南インドならタミル文字であったり、北インドではデーヴァナーガリー文字であったり、それぞれの地域の文字で示されます。エネルギーが紙にとどまるとサンスクリット語の持ち味は少し鈍くなります。力がありますが、音のバイブレーションには敵いません。

これが中国経由で日本へ渡った経は最終的にだいぶ発音が変わるのでバイブレーションが全く異なってきます。神様と繋がるためのツールを世界に伝播するためなので仕方のないことなのですが。今は簡単に音声を入手できるようになったことは有難いことですね。

相性や信仰、師から授かったマントラなど、縁があると思ったものを選び、神様に専心する心とともにあれば、生きるヒントと無限の恩恵を授けられることでしょう。正しいマントラの発音に出会うことも大切ですが、誠実な心で唱えられることは何よりも勝ると思います。




अस्तेयप्रतिष्ठायां सर्वरत्नोपस्थानम्  2-37
アステーヤプラティシュターヤーン 
サルヴァ ラトノーパスターナム


अस्तेयप्रतिष्ठायां アステーヤプラティシュターヤーン
不盗の境地が強固になると

सर्वरत्नोपस्थानम् サルヴァラトノーパスターナム
すべての富が集まる。


財産をため込み啓蒙や布施などを社会に還元しないことも、他者の財産や機会利益を奪っているという考えがあります。ため込み行為は、間接的に他人の益を奪うことであり、アパリグラハとも関係しますね。

奪うことは、将来奪われるカルマができることで、今世でそれがなくても来世以降で帳尻が合うようになっているという、ひとつの考え方としてあります。

盗む・盗まないとは違う次元ですが、あるヨガの先生は指導する時、「自分が知っているだけの知識を出し惜しむことなく、出し切るぐらいの心構えですると、その後も自分にどんどん智慧が入ってくる」と話していました。

「ネタがきれるから、ここから先は来週」と内心思っていたら本物にはなれないと。ため込まずに全力で出し切ることは、全てに共通した成功法則ですね。



ब्रह्मचर्य प्रतिष्ठायां वीर्यलाभः  2-38

ブラフマチャルヤ プラティシュターヤーン 
ヴィールヤラーバハ

ब्रह्मचर्य प्रतिष्ठायां ブラフマチャルヤ プラティシュターヤーン
梵行の確立によって

वीर्यलाभः ヴィールヤラーバハ
巨大な力を得る。


スワミ・シヴァナンダ著書の「クンダリニー・ヨーガ」では、クンダリニーの力を覚醒させるための掟があります。

「妻帯者は妻と同室で寝てはいけない、
自分のために別の寝室をつくること。」

「玉ねぎ、ニンニク、塩は摂ってはいけない、
肉食よりも塩分をとるほうがもっと不利益」

とまで書かれています。

スワミ・シヴァナンダ著書の書籍の中では、厳しい戒律が書かれているほうだと思いますが、最もインパクトのある実践書だと感じられました。こちらは英語・ヒンディ語版が出版されています。




अपरिग्रहस्थैर्ये जन्मकथंतासंबोधः  2-39

アパリグラハスタェルイェ 
ジャナマカタンター サンボーダハ

अपरिग्रहस्थैर्ये アパリグラハスタェルイェ
不所有の境地が確固たるものになると

जन्मकथान्तासंबोध : ジャンマカターンターサンボーダハ
前世が何であったか、よくわかるようになる。


不所有を徹底すると過去世がわかるというのは、どのようなロジックなのでしょうか。所有欲は過去世から今世まで続く執着の対象といわれ、「私のもの」という意識は掘り下げていくとアハンカーラから始まります。アハンカーラは他人と自分を識別する根本的な自我意識です。世間一般で使われる「自分勝手」や「あの人はエゴが強い」という意味のようなアクはないのですが、自他を識別する根本的な意識です。

ヨガには壮大なテーマがあります。
「私は誰なのか、
 どこから来て、どこへ行くのか
 何をするために生まれたのか」

今世に結びつけられたものと我物意識が強くなるうちに「私は・・」という自己探求を忘れてしまって、「私の・・」と意識が傾倒し、訳がわからなくなってしまった状態です。

自分の過去世の記憶が、アーカーシック・レコードともいわれるほどの、消すに消せない経験の巨大な記憶があり、物質界の所有欲が強いとそれが思い出せなくなるそうです。アーカーシック・レコードとは「空に刻まれたレコード」という意味です。気を煩うことなく放棄できる心の持ちようになると、空(くう)の世界のこと、過去世のこと、自分の役目が思い出されてくる、という発想です。



शौचात् स्वाङ्गजुगुप्सा परैरसंसर्गः  2-40

シャオチャート スワーンガジュグプサー 
パラェラサンサルガハ


शौचात् シャオチャート
心身の清らかさを確立すると

स्वाङ्गज़ुगुप्सा スワーンガジュグプサー
自分の肉体が不浄であるという意識が目覚め

スワ 自分の 
アンガ 体の部分 
ジュグプサー 離欲、嫌悪


परैरसंसर्गः パラェラサンサルガ
他人の体に触れたりしなくなる。

परै: パラェヘ 他人に 
असंसर्गः アサンサルガハ 触れないこと 


内外の清潔を保つと、心臓部分のエネルギーが澄むようになり、神聖なものと穢れあるものを見分けられるようになります。

清潔を保つことで「私の体は綺麗」と納得することではありません。肉体は清潔を怠った時から、全身のあらゆる箇所から悪臭を放ってきます。

いろんな解説書を読むと「人間の体は糞尿のたまった袋のようなものだ」ときっぱりと書かれてあり、言い過ぎな気もしますが、聖人が皆口を揃えて「糞尿のようなものだ」と書く程なのです。

では、故意に不潔になることで「自分の体は汚いものである」と知る方法はどうなのか。これだと心臓部のチャクラのエネルギーが活性されません。タマスも増大するので負の連鎖になります。

この節の要点は、清浄によって心臓部のフリダヤ・チャクラが澄まされることにより、神聖な存在と、汚れたものを識別できるようになり、自分や他人の体を汚れたものであると知るようになります。



सत्त्वशुद्धिः सौमनस्यैकाग्र्येन्द्रियजयाअत्मदर्शन योग्यत्वानि च 2-41

サットヴァシュッディヒ 
サォマナスヤェカーグライェンドリヤジャヤー
アートマダルシャナ ヨーギャトワーニ チャ

外面的な清浄によってもたらされる結果が前節で、41節では内面的な清浄による結果を述べています。)


सत्त्वशुद्धि サットヴァシュッディ
サットヴァ性が高まる。

सौमनस्य  サォマナスヤ
マナ(心)が澄む。

ऐकाग्रय エーカーグラヤ
集中力を高める。

इन्द्रिय जय  インドリヤ ジャヤ
感覚器官の克服。
(感覚器官は情報をキャッチするために外に向いているものですが、これら情報を遮断したり、コントロールが自在になります


आत्मदर्शन योग्यात्वानि
アートマダルシャナ ヨーギャートワーニ チャ
真我を実現する能力が生まれる。

आत्मदर्शन アートマダルシャナ
アートマ・真我を見る(能力が付く)