まぁ、年間200組強のご披露宴を担当すると、正直、ミスはあります。
たいてのミスは、ミスといえるほどではなく、例えば、マイクのハウリングや出音が大きかったとか、一瞬、音を止めてしまったとか、そいうことで大事になることはないのですが、その中で、過去20年間で、1度だけ、お客様に土下座をしたことがあります。
土下座といえば、ドラマ『半沢直樹』の中で、
「ど~げ~ざ~だ~ぁ!
ど~げ~ざ~し~ろ~!!!!!」
と香川照之が大きな眼を見開いて叫ぶシーンが思い出されますが、まさにその土下座。
といっても、このようなセリフは言われていません。
時は、15年か16年くらい前だったか…
今では定番になっている当日編集のエンドロール。
僕が入っていた会場に、同じく入っている映像制作会社が、まだビデオテープ=VHS=で当日編集のエンドロールを売り出したんです。
当時から当日編集なんて大変だろうなぁ、と思っていたのですが事件は起きました。
確かエンドロールではなく、中座の間に流すプロフィールの中に挙式の映像を挿入する、だったかな? もうその詳細は忘れてしまってますが、映像編集の人から預かったVHSテープを流したら、まったく違う人の映像が出てきたんです。
実は、それが違う人の映像だと、自分ではわからず、その編集者が慌てて、「止めて止めて!」といって音響ブースに飛び込んできました。
どいうことかというと…
映像編集者は編集したテープを自分に預ける際、「もう頭出ししてあるから、そのまま再生して」と言って預けてきました。
「(自分が)確認しなくて大丈夫ですか?」と尋ねたら「大丈夫」というので、そのままデッキに挿入していたんですけど、その後、何か別のテープを確認することになり、いったん先のテープを出しました。
そして再びデッキに戻した際、テープが緩んでいるかもしれないから、いったん頭までもどして、再生される頭出しをしておいたんです。
ところが!
その頭出しをしたのが、別の人の映像の冒頭だったわけです。
ちょっとわからないですよね?
どいうことかというと…
本来流す予定の映像の前に、なんと!違う人の映像が挿入されていた…つまり、新しいテープではなく、使いまわしのテープで、しかも違う人の映像を残したまま、その後ろに、今おこなっている披露宴の新郎新婦の映像を入れてきていたんです。
まさかと思いましたが、「もう頭出ししてあるから、そのまま再生して」と言って預けてきたことの意味がわかりました。
その違う映像が流れた瞬間の披露宴会場は、笑いが起きました。
だって、新郎新婦の名前が違うんだもん。
その笑いの中、司会の方がうま~くつないでくれたので、ジョークで進行できましたが、当然、プランナーは怒り心頭、キャプテンも青ざめてる。
僕だって、再生しちゃった手前、責任の一端はあるので、その映像編集者に怒りましたよ。
で、いったん、プランナーから新郎新婦に状況を説明し、その後はことなくお開きになりました。
で、冒頭のど~げ~ざ~ は、いつしたかというと、お見送りのときです。
司会の方やカメラマンと列に並んで、ご挨拶をするのですが、僕の順番になったとき、すかさず、「申し訳ありませんでした!」と言って土下座です。
それを見た新郎新婦、だけでなく周りの親御さん、友人は驚き、何事かと注目。
速攻、プランナーが飛んできて、「いやいやあなたが謝らなくても…」と言ってフォローしてくれました。
事情を知っている新郎新婦、しかも音響の打ち合わせで顔を合わせていて、信頼も得ていたので、笑ってフォローしてくださって、それはそれで僕には(当然)お咎めはなかったのですが、しかし、PAとしてどんな事情であれ、まったく違う人の映像を流すなんて、ありえない失態をしたという申し訳ない、お詫びの言葉もない気持ちでいっぱいでした。
心の広いお二人だったからよかったけど、本来は超クレームです。
結末は、先の映像制作会社は出禁になり、契約解除になりましたが、土下座は意図しておこなったわけではなく、咄嗟にでた行動でした。
以降、映像には再三の注意をはらって操作していますが、それでも色んなことがあります。
まぁ、土下座にいたったのは、それだけですけど。
心臓縮むゎ。
以上、音響の仕事をはじめて、何年か経ったときのエピソードでした。
長々と読んでいただき、ありがとうございました。
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