-主題解釈の多様性をめぐって-

 

発表者:関西学院大学 伊藤ちひろ氏

 

日本ヴィクトリア朝文化研究学会

第19回 全国大会

近畿大学東大阪キャンパス研究

 

土曜日に日本ヴィクトリア朝文化研究学会の

大会に参加して参りました。

イギリスではシンポジウムなどに参加しましたが、

日本では初めてなので緊張しました。

しかし誰でも参加可能ということで行ってみました。

午前は2つの部屋に分かれて研究発表がありました。

どちらかしか聞けないのが残念です。

午後はシンポジウムと講演でした。

その後は懇親会にて終わりです。

 

個人的に一番楽しかったのが表題の研究発表です。

質疑応答では質問もしました。

発表者はウォーターハウスの研究をされているそうです。

懇親会でもお声がけ下さいました。

お優しく良い方でした。

 

発表はレイミアというタイトルの絵を二枚書いているが

この二枚の絵に描かれているレイミア像の違いから

ウォーターハウスの主題解釈や表現についての考察でした。

ギリシア神話のラミア とキーツの詩、レイミア。

 

 

ウォーターハウスはこの二つのレイミアを元に絵を

描いているがそれぞれの絵に描かれた

レイミア像は異なっています。

その表現の違いを同じレイミアを題材とした

ドレイパーの作品と比較したり、

ウォーターハウスの他作品の表現と比べることで

探求しています。

また表現の違いの理由をパトロンなど当時の

背景にあるのではと考察されてます。

 

 

こちらがまずレイミア第一作。

服の模様や蛇模様のショールが体に巻き付いていることから

彼女の正体が恐ろしい怪物であることを表しています。

男性を誘惑しているファム・ファタールでもありますが、

体勢としては男性が上位にあり、

最後には成敗される話の結果を示しています。

 

 

 

こちらがレイミア第二作。

水面に彼女の姿は写らずに

蛇模様のショールだけが写っている点、

水面と現実の足の境界の曖昧さから

彼女の正体が暗示されています。

ただこちらの作品のレイミアは

より女性らしく描かれています。

それがこのポーズです。

女性性の象徴の一つである髪をほどき、手で広げることで

官能性を感じさせます。

また腕を広げ、胸を強調するポーズも

同様の効果を表しています。

この胸の描写が一番興味深く拝聴しました。

ウォーターハウスが描く女性は

臀部が強調されていることが特徴的だからです。

伊藤さんからもこのように胸を強調する表現は

ウォーターハウス作品では珍しいと教えて頂きました。

 

ウォーターハウスの女性像の表現について学べて

大層、知的興奮を得ました。

その他の発表も纏めて書いていく予定です。