著:奥田 実紀・ちば かおり

 

2019年12月30日 初版発行

株式会社河出書房新社

東大阪図書館より貸出

 

ヴィクトリア朝の子どもの生活についての本です。

タイトルにはヴィクトリア朝とありますが、

エドワード朝までが本書の範囲に入っています。

 

著者は2人とも児童文学の専門家で

児童文学からの引用がたくさんあります。

ヴィクトリア朝に興味がある方だけでなく、

海外児童文学がお好きな方には物語の背景を知れて

面白い本だと思います。

 

本書はヴィクトリア朝社会を背景知識として紹介した後、

子どもの誕生から、幼児時代へ移り、

そして学童期へと子どもの成長に合わせながら

教育や洗礼式などのライフイベントや

おもちゃや食事などの日々の生活について述べています。

以下は自分用の読書メモです。

 

日本や韓国など東アジアではかって喪服は白であり、

黒い喪服は西洋の文化だと思っていましたが、

ヴィクトリア朝にも白い喪服が存在していたことに

驚きでした。

基本的には喪服の色は黒ですが、

子どもがなくなった場合は

白い喪服で葬儀を行いました(p.17)。

 

ヴィクトリア朝の入浴設備について。

“1840年代頃にはお湯のパイプを室内に通す

裕福な家庭が現れ、

1870年代頃には中産階級でも

お湯がでる浴室を持つ家が出てきました。

それでもまだまだ入浴は

贅沢なものでした。”(p.34-35)

“1880年代にはガス湯沸かし器が発明され、

温水浴ができるようになりました。”(p.36)

 

ヴィクトリア朝にクリスマスカードや

クリスマスツリーなどの

クリスマス文化が始まりましたが、

ピューリンタンの長老派が多数派のスコットランドでは

クリスマスはお祝いせずに、

hogmanay(大晦日)のお祭りがメインでした(p.134).

スコットランドではクリスマスをお祝いする

風習がないことを初めて知りました。

さらに、スコットランドでは1958年に公式に

クリスマスが祝日化されるまで、

1890年に出されたクリスマス禁止法が有効でした(p.134)。

ヴィクトリア朝と一言で言っても

地域ごとの特色がかなりあることと

地域差を意識する重要性に改めて気づかされました。

 

最後にナースリーライムとも呼ばれる

マザーグースを記して終わります。

 

“「Little Boy Blue」

Little Boy Blue,

Come blow your horn!

The sheep’s in the meadow,

The cow’s in the corn.

 

Where is that bot

Who looks after the sheep?

He’s under the haystack,

Fast asleep.” (p.32)

 

本書には日本語訳と挿絵が乗っておりますので

是非気になる方はご覧になってみて下さい。

 

階級社会のイギリスで全階級の子どもを扱っているため、

少々労働者階級と中産階級中心であるものの、

挿絵や引用が多くて楽しめる本です。

子どもを通してヴィクトリア朝社会や文化に触れられます。

 

また本書を読んで思ったのですが、

エドワード朝はヴィクトリア朝の続きとして

ヴィクトリア朝と一緒にして語られることが多いです。

では、ヴィクトリア朝とは違う

エドワード朝文化とはどのようかものか、について

思索していきたいと思います。

 

 

 

ヴィクトリア朝の生活史についてのその他の本はこちらから