COVID-19を疑う症例の剖検について

Autopsy in suspected COVID-19 cases

Brian Hanley‍‍,  Sebastian B Lucas, Esther Youd, Benjamin Swift, Michael Osborn‍‍
J Clin Pathol 2020;73:239–242. doi:10.1136/jclinpath-2020-206522

(この翻訳は概要を掴んで頂く為に書かれています。翻訳が不明瞭な場合には原著を必ずお読み下さい。)

要約

Journal of Clinical Pathology

中国の武漢で重症急性呼吸器症候群(SARS)-コロナウイルス-2(CoV-2)が発生してから世界中で感染者が増加して、犠牲者数で英国を含む世界各国に及んでいます。

この発生により、コロナウイルス2019(COVID-19)感染関連の死亡症例の剖検例が必然的に増えました。
イギリスの王立病理学会では、COVID-19に関する皆さんのご心配に対して剖検実施結果についての状況説明をリリースしました。
この論文は、この指針の概要と解説です。
ここでは、危険グループ3微生物についての説明、SARS-CoV-2はどういった病原微生物のカテゴリーに入るのか、そして現在COVID-19感染について病理学的および肉眼解剖学的にどこまで知られてきたのかの概要、さらにCOVID-19感染を疑う症例の剖検を行うことの推奨、解剖時に診断を行う技術をご紹介します。
この論文の結論として、実際の発症例と臨床病理学的な相関関係をお示しします。序論本論文は一致用に入手自由になるで、covid-19世界的流行病の持続期間の間、または、さもなければBMJによって判定されるまで、BMJはウェブサイト期間と病である。

序論

コロナウイルス科には人類に重篤な病気を起こすいくつかの人獣共通ウイルスが含まれます。そのーが中東呼吸症候群(MERS)と重症急性呼吸器症候群(SARS)です。
2019年後半には、SARS-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)による新しいコロナウイルス感染が武漢(中国)で始まりました。それはWHOによりコロナウイルス2019(COVID-19)と呼ばれるしてヒトの疾患に指定されました。
COVID-19感染の病理生物学はまだ完全には理解されていませんが、国際的に解明されつつあります。
SARS-CoV-2は、死亡数としても増加し続けています。
ウイルスの伝播様式は主に飛沫の吸入によるものと考えられていますが、経皮的な感染の可能性もあります。
通常、呼吸器症状に先駆けての発熱が見られます。
COVID-19感染した患者の大部分は穏やかな感染経過を示します;
しかしながら、約20%の感染者は、高い死亡率を伴う重篤な疾患を起こします。この重症化は高齢と免疫抑制に関係しています。
2020年2月に、王立病理学会(RCPath)は、COVID-19を疑う死体を扱う人に対する死体解剖のガイダンスを発表しました。
本論文は、それらのガイドラインを要約するものです。
これは我々が2020年3月上旬にCOVID- 19について理解していることに基づいてかいてありますが、さらに詳細な情報が得られてから変わる部分があるかもしれません。

COVID-19の危険群分類

英国では、その病原体は諮問委員会によってヒトにそれらのリスクにより健康安全政策における高病原性病原体(ACDP)に分類されています。
本感染は医療や病理解剖室に勤務するスタッフの健康に潜在的リスクを与えるものですが、ACDPのガイダンスは、臨床検査室や細菌学研究室に向けたもので、解剖作業は解剖中や解剖後の危険性を反映して適用されてきました。
これらの危険群(HG1-4)は、ヒトへの感染リスク、感染拡大の可能性および、治療や予防処置が得られるかどうかのリスクにより分類されています。(表1を参照)


健康に及ぼす危険な物質の制御(COSHH)はこれらを扱うために4つの封じ込めレベルを定義しています。すなわち、封じ込めレベル3が危険グループ3生物のために使われます。
SARS関連およびMERS関連のコロナウイルスの両方はHG3病原体と考えられますが、ほとんどの他のコロナウイルスはHG2に該当します。
SARS-CoV-2は、最近HG3 病原体に分類されました.
HG3の中の他のウイルスとしては狂犬病、ポリオウイルス、デング熱ウイルス、B,C,D、E型肝炎ウイルスそしてとHIV 1と2が含まれます。
ある種のHG3微生物(例えば、B、C、DとE型肝炎ウイルス)が、HG3微生物のためにCOSHHによって規定されているより低めの封じ込め状態で使われる可能性がある;
しかしながら、SARS-CoV-2はこのlist.7の上にない
一度適切な予防措置は実施され、これらのHG3微生物に対処している病理解剖室職員に対するリスクがわずかで、そして、経験豊かで優秀なスタッフがいる病理解剖室ではこれらのHG3病原体の症例でも扱うことができなければならない。
HG3病原体における遺体解剖中のリスク減少
一般に、疑わしいHG3病原体に感染していると思われる患者を剖検するときには4つの領域に注意すべきです:
リスクアセスメント、病理学を理解すれば具体的なHG3病原体に関する標準的な取り扱い方と一般的な予防処置注意は分かるだろう。
一般的な予防措置の有効利用は、個々の症例ベースでリスクアセスメントにおける不正確ないしは不完全な情報の影響を軽減する。
剖検を行っている従事者は、それぞれの剖検時において彼ら自身と同僚の安全のためにリスクアセスメントを実施するためにCOSHHによるレビューをする義務を持ちます。
剖検の実施前に、同意書または検死申請書、患者を見た臨床医からの情報、検査結果、病院の感染制御、そして外貌検査結果の再確認をするべきでしょう。
死亡がCOVID-19感染に起因すると考慮される場合、この点だけでストレスとなるでしょう。剖検が必要なさそうに思われ、死因に対する医学的証明書は交付されるだろう。
しかしながら、その感染が法医学症例に関係している場合、法的な義務が完全で適切な剖検の実施を進めるのです。
人がCOVID-19感染を伴って亡くなったか、これにより亡くなったかは常に直接的でない場合がある、そして、進行中の疫学と有用な調査データがこれを明らかにする可能性がある。
COVID-19の病理所見
いくつかの症例報告が最近発表されたにもかかわらず、COVID-19の病理所見に関する情報はまだ限られている。

臨床的特徴

英国公衆衛生庁(PHE)は、患者がCOVID-19感染しているかの可能性を評価するための基準を概説した。
これらの基準は、患者が死亡までの時間や死亡前にどこに共通する症状が現れていたのかに示された時間経過を伴わない場合にも適用されます。
これらの基準によりCOVID-19が死亡に関連したと考えられた場合、完全な剖検検査を実施するか、単にCOVID-19感染であったどうかの確認をするためのサンプリングだけをするかの選択が迫られます。
この決断は個々の症例に応じてなされるべきです。また、検死官や関連する人の要望も含まなければなりません。
段階的な検死を考慮するべきかもしれないということです。
まず、診断のためのサンプル採取だけを行って、その結果をみてからその後の完全な解剖学的検査の実施をしていく手順をとっていることがありです。もし可能ならこの段階的な手法が推奨されます。

肉眼的特徴

COVID-19の肉眼の特徴は胸部にあるでしょう。肋膜炎、心外膜炎、肺硬化そして肺水腫が見られる可能性があります。
肺重量が標準以上に増加しているかもしれません。
ウイルス感染に続発する二次感染が細菌感染症に特徴的な化膿性炎を誘発していることもあることに留意する必要がある。

顕微鏡的所見

最近の論文で、肺腺癌のために外科的切除を受けた2人の患者において、手術時にCOVID-19の感染初期肺病変病変を見出し、後の検査でCOVID-19が見つかった症例を報告している。
その病理学的検査は非特異的で、水腫、肺細胞過形成、炎症病巣と多核巨細胞形成を認めるものだった。
これらの患者が手術時にCOVID-19に関して無症状であったと想定すれば、これらの病変はCOVID-19の感染による急性肺損傷の初期の変化だけが見られたと考えてよいだろう。
もう一つの重篤なCOVID-19感染で死亡した50歳の男性症例においては、、より著明な組織病理所見が示された。
試料は剖検時に摂取された。複数のスリガラス様陰影が胸部X線で観察されていたにもかかわらず、剖検後の肉眼的検査では認められなかった。
顕微鏡的所見では滲出物を伴った弥漫性肺胞破壊が認められた。
炎症細胞の主体はリンパ球だった、大型の非定型肺細胞とともに多核巨細胞が見られたが、しかし、完全な形のウイルス性封入体は認められなかった。
肝臓には軽度の炎症を伴う空砲性幹細胞変性が認められたが、これがウイルスに関連があったのか医原性のものだったのかは不明だった。(*医原性とは治療その他により二次的に起こったものかということ。)
COVID-19に起因した病変の特徴は、SARSやMERS-コロナウイルス感染に見られたものと告示していた。

病理解剖室の因子

別の剖検室から十分隔離されているHG3レベルの剖検室には十分な換気が必要です。
ワークステーションにおいては室内の全体換気またはドラフトによる部分換気も可能である。
そこで使用する電気骨鋸はエアロゾル化粒子を吸引する掃除機能を備えたものでなければいけません。
強制的なものではないですが、HG3剖検を行うための独立した高リスク設備を有することが望ましいのです。
剖検に必要な全ての器材(例えば、検体容器、培養ビン等)は剖検開始前にワークスペースに持ち込んでおくべきで、これは出入りを防ぐために重要な注意です。
さらに詳しい情報は、適切な国民健康保険ガイダンス文書(the appropriate National Health Service guidance)を見て下さい。
これらの高リスクの死体解剖が利用できるチームには病理学者、解剖病理学技術者(APT)と第3の伝達係の人がまれるでしょう。
伝達者の存在は有益ですが必須ではありません。
十分に経験豊かな剖検病理学研修医(先輩に評価された人)は、十分な監督下でHG3レベルの剖検に関与してよいでしょう。
妊娠した訓練生に対する特異的感染症リスクははっきりはしていない。
しかし、権威者との相談後、彼らが剖検作業に従事しないことを決めることもあるだろう。

HG3感染症の剖検の実施

剖検でとられるいくつかの技術によってHG3感染症により遭遇するリスクを低下させることができます。
スタッフはきちんと訓練されなければなりません。
病理解剖技術者のために、この曝露が彼らのカリキュラムや、英王立公衆衛生学会の定めた標準訓練の中身と一致している必要があります。
病理学研修医については、これは主任の裁量によります。
ワークスペースで解剖具による傷を防ぐために、先端の丸いハサミ針刺し先端の鈍いPM40の刃を使用して、体腔をを扱うのは一人の剖検者に限ることが大切です。
臓器から組織片を切り出すときには硬い板の上に乗せて、スポンジで固定して着る必要があります。
針は針用の箱に捨てなければならず、針カバーを再度付けないこと。
個人保護具(PPE)の着用は不可欠です。
特定のPPEが剖検において普遍的に使われています;
しかしながら、典型的マスクは、充分な予防と考えられない。
弁で調節されたひだ平面と成形された予防マスクは95%以上効果的で、COVID-19感染を想定される症例の解剖にに適しています。
個人用の人工呼吸器付きの全身スーツはほぼ完全な予防をもたらす予防具でうが、非実用的で必須ではありません。
段階的な検死がRCPathによって推奨される
より多くの精密検査が必要な所では限られた剖検も考慮されるべきかもしれない。
広範囲にわたる感染症においては、必要な体液や組織を採取するために指定限必要な最小範囲に限った剖検が必要です。
しかしながら、このサンプリング法だけでは感染病変が局所であるか限局性を確認するのが困難である場合がある。その際には死後の画像検査の併用で診断精度が上がるかもしれない。

死後のCT検査(PMCT)

施設を探査することへの接近に関する局所合意で組織病理学者は肺組織の有意な所見を証明するために死後の画像診断を考慮しても良いだろうし、たまたま、SARS-CoV-2感染が重なった症例なのかを確認することができる。
最近多施設検査(n=101)は、検査症例の86%にスリガラス様肺陰影やスリガラス様肺陰影が混ざった所見を認め、さらに患者の64%にコンソリデーションが認められたことを報告している。
脈管増大や牽引気管支拡張症も報告された。(それぞれ71%と53%)。
肺病変は両側性で末梢性に分布し、下葉も含まれていた。
自然のままの死後CT検査をするか、脱気後の死後CT検査をするのかの判断は放射線科医により以下のように報告されている。:
既存の臨床気管内チューブを使ったり、解剖時の気管切開が排気や下部気道のサンプリングに使用できる。

COVID-19の診断

剖検時にCOVID-19を診断するために必要な検体採取は、生存患者において必要とされるものと同様です。
採取する試料には5ml以上の血清学的診断に必要なプレーン血液(凝固防止剤などを含まない)、上気道・上部消化管の拭い液(鼻や咽喉)、そして、下気道検体(気管支肺胞洗浄液または痰)が含まれる。
これらの検体を提出する方法に関する完全なおよび最新の詳細を得るためにはのために引用文献のリンクを参照して下さい。
各検体の提出にはそれ専用のE28フォームを必要とする点に留意する必要があります。
PHEからの特別のアドバイスとして、上気道と下部気道から取るスワブは別々の綿棒でとらなければならないということです。
RCPathは、地域の微生物学研究室が類症鑑別をするために標準試料(例えば気道綿と組織標本)を同時に送らるように勧めている。
可能な場合には、ケースバイケースで実態を明らかにするために、各臓器組織の完全なセットと他の検査所見を一緒 がえられるならそれが望ましいと推奨されている。
標準ホルマリン固定は既知のコロナウイルスを不活発にする、そして、SARS-CoV-2は同様にaffected.20であると考えられている
すぐに使える綿棒で気道サンプルを採取できる。
血液、尿、脳脊髄液サンプルが必要だと思われる場合には体腔を開く前に採取されなければならず、汚染を減らすためにできるだけ無菌的になされなければならない。
そのため、アルコール綿で皮膚を清拭することが望まれます。
血液培養をする場合、腸から汚染を減らすために、優先的に鎖骨下静脈、頸静脈または左心室から採取しておく必要があります。

結論

我々は、解剖室勤務者を支援するために、COVID-19感染を疑われる症例の危険群分類、病理学的特徴と術式を概説した。
臨床病理学的な相関の点でCOVID-19が主要な死因であると考えられる場合、国が定めた統計フォーマットのPart1の最後の行に明記しなければいけません。
もう一つの主要な死因とCOVID-19が寄与すると考慮される場合、それはパート2に記述して下さい。
最後に、王的な報告は診断をした研究室によってなければいけませんが、COVID-19が確認されたどんな症例でも英公衆衛生庁に通知することは重要です。

 

この原著論文の著作権について

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