「労務事情」連載中!!(毎月1日号)

https://www.e-sanro.net/magazine_jinji/romujijo/

今日の労働判例

【みんなで伊勢を良くし本気で日本と世界を変える人たちが集まる事件】

名古屋高裁R1.10.25判決(労判1222.71)

 

 この事案は、忍者村などのテーマパークを運営する会社Yに採用された原告らXが、不当に解雇されたとして、従業員としての地位確認や給与の支払いを求めた事案です。裁判所は、従業員としての地位を認め、給与などの支払いも一部認めました。

 ここでは、解雇の効力について検討しましょう。

 

1.解雇の有効性

 裁判所は、一方で、Xのうちの1人が、Yの経営に批判的な言動を取っていた、というYの主張を正面から否定していません。

 けれども、その証拠となる陳述書が、問題とされる言動から2年後に作成されたものであることや、問題とされる言動自体、「従業員間でする愚痴やうわさ話といった態様のもの」にとどまり、解雇に相当する勤務態度の不良や職場秩序を乱す行為がなかった、としています。

 さらに、解雇の前段階の注意や指導もなかった、としています。

 このように、解雇の合理性が、内容的にもプロセス的にも認められない、という評価がされたのです。

 

2.実務上のポイント

 Yは、最初の数か月はアルバイトであり、正社員になったのち3か月間は試用期間である、したがってXの解雇は試用期間満了前の本採用拒否である(したがって、解雇の合理性の基準ももっと緩いはず)と主張しています。

 けれども、YはXの採用の際、アルバイト→試用期間→本採用、という説明を明確にせず、契約書なども残されていません。アルバイトと雇用の条件も異ならなかったようです。

 このように、雇用条件を証明する雇用契約書や条件通知書などが一切ない状況で、Yの主張が認められなかったのは、それが従業員にとって不利な内容の証明に関することからしても、止むを得なかったと思われます。

 

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

https://note.com/16361341/m/mf0225ec7f6d7

https://note.com/16361341/m/m28c807e702c9

 

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!