145-《房思琪的初恋乐园》by林奕含 | トミモの『中国語の原書とドラマを求めて・・・』

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私にとって145作品目の読了原書です。 

         これ↓

 

林奕含著 《房思琪的初恋乐园》

(*画像は百度百科からお借りしました)

 

痛ましいです。

物語全般、

本書の基になった著者の体験、

そして

精神を病み、

3度自殺を試み、

4度目の自殺の結果、

26歳の若さで命を絶ってしまった著者の林奕含さん。

亡くなる数週間前の動画がありました。

下矢印

著者は台湾人女性ですが、

今年に入って本書は大陸で多くの人に読まれ、

世論を動かしていると聞きました。

なぜ突然それほどの注目を集めることになったのか?

発端となったのは、

今年大陸で起きたある事件だそうです。

鮑という苗字の40代後半男性が、

13歳の少女を養女にし、

彼女が14歳になった日を境に性行為を強要。

中国の現状の法律では、

14歳以上と性的関係を持っても違法になりません。

まず法的に合法となる14歳を掲げ、

そして倫理的には「恋愛」を主張しているそうです。

この法改正をめぐって、

《房思琪的初恋乐园》を例に、

線引きになる年齢の14歳が如何に不適切か

大陸では世論が動き出しています。

 

本書は動画で著者が述べているように、

実体験のエッセンスを交えながらも、

ルポタージュや自叙伝ではなく、

フィクションの文学に仕上げてあります。

 

題名にある“房思琪(ファン・スーチー)”

は主人公の少女の名前です。

房思琪は住居のコンドミニアム内に住む

40代の予備校講師から13歳の時に

性的関係を強要されます。

予備校講師は彼女に対し、

性交後から「愛」という言葉を巧みに乱用します。

そうすることで、

性犯罪の加害者/被害者という本来の形を、

恋愛関係の愛情の強い側/愛が足りない側、と

まるで彼女の方に非があるかのように

洗脳していったのです。

顕著なパワーバランスの下で、

気付いた時にはすでに始まって定着している

いじめの構造を彷彿します。

いじめや虐待に遭っている人間と同様に、

彼女も親・友達に打ち明けることが出来ません。

それでも生き延びるために取った道は、

この予備校講師が口にする説を妄信すること。

「私が先生を深く愛せれば全て解決する」

自分にこう言い聞かせて、

関係は3年以上続きます。

しかし、どんなに取り繕っても

自身をだますことは出来ず、

眠ると悪夢にうなされるため睡眠に怯え

彼女は日常的な不眠症状態に陥ります。

昼間も記憶がよく抜け落ちるようになり、

18歳のある日、

とうとう完全に精神が崩壊します。

 

この物語には、

主人公を重ね合わせるように、

体と心を他者から傷つけられた女性が

あと2人登場します。

房思琪と同じ高雄のコンドミニアム内に住む

美しく聡明な许伊纹。

彼女は夫からDVを受けています。

郭晓奇は台北に住むティーンエイジャー。

房思琪の加害者である予備校講師から、

彼女は初回騙し討ちの形で強姦されます。

行為後は、

講師から言葉巧みに恋愛と置き換えられることで、

彼女の場合はストックホルム症候群のように

加害者の男を愛していると思い込むようになります。

 

この3人の女性に共通している事柄は、

他者から肉体と精神を傷つけられた被害者なのに、

相手から、そして自身でも

「愛」という言葉で

更に自分自身を苛んでしまった点です。

 

この小説と著者の人生を、

多くの人に知ってほしいと思いました。

社会問題への向き合い方、

そして自分や家族をどう守っていくのか

考えるきっかけになると思います。

 

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