はじめに
台湾のクワガタムシの分布や生態等に関しては
書籍に加え、独自に収集した資料と訪台時の経験を交えて記します。
シェンクリングオオクワガタ
Dorcus schenklingi (Moellenkamp,1913)
分布:台湾ほぼ全土
対岸の中国大陸ラベルもあるようだが真相は不明
標高:1000~2500m
体長:オス野外最大88mm メス50mm台
(台湾大学に93mmの標本の噂)
発生時期:おおよそ3~12月(5・6月最多)
南部の藤枝地方が最早発生
発見場所(おおよそ比率):
灯火90% 樹木5% 路上等5%
材割での発見は困難
雌雄発見比率:オス約20% メス約80%
その他:
フルーツトラップでは中小型が集まる
大型個体は多少の雨でも飛翔する
二度の訪台時には(2000・2001)
ライトトラップに40mmにも満たないオスが飛来。
公衆トイレの便器横でひっくり帰った65mmほどの個体を発見。
個体数に関しては、個人の感覚的な見方として
東北地方でライトトラップに飛来するオオクワガタより
やや少ないといった印象でした。
シェンクリンオオクワガタは台湾特産種で、保護されており(以下シェンク)
野外個体の市場流通は事実上ありません。
また、シェンクは大陸に分布するアンタエウスオオクワガタの
代置種ともいわれており、産卵形態は似ています。
実は2000年のはじめの頃
シェンクとアンタエウスの交雑実験をしたことがあるのですが
産卵した10数卵は全て腐敗し、異種間の雑種(*F1)の発生はありませんでした。
(*F1=first fillial generation)
↓ アンタエウスオオクワガタ(インド産)
久しぶりのシェンク
改めて見ると他種と間違えることのない特徴的な種です。
入手したペアは、オスが同年3月30日、メスは同年4月10日に羽化したもので
今年になってやっと産卵するようになりました。
↓ オス 合望山飼育個体80mm
↓ 大型になると内歯はより前方に位置する
↓ メス 合望山飼育個体50mm
↓ メスの前胸背板側縁はギザギザ風
産卵~割り出し
割り出しは、連休初日の7月13日に行いました。
↓ 割り出し直前
↓ 初齢
↕ 2齢初期
↓ 坑道中のメス
割り出しの結果は、卵=2 初齢=5 2齢=3 計10頭
今回の割り出しでは朽ち木からのみ卵・幼虫が発見でき
マットからの発見はありませんでした。
↓ カワラ菌床800ccへ投入
↓ 棚も少しずつ埋まってきました
以前飼育していた時はマットでも80mmを超える個体が出てきました。
カワラ菌床で飼育するのは初めてなのでこの先どんな成長を遂げるのか楽しみです。
最後になりましたが
台湾のクワガタムシに関する多量の資料と情報を提供してくださった
呉氏・朱氏・林氏には心からお礼申し上げます。 謝謝
*記事中のF1とは
本来の意味である異種間の交雑個体第一代目
(first fillial generation)ということであり、
生き虫界で使用されている表示とは意味合いが異なります。
参考文献:
李恵永著,台湾鍬形蟲(自然観察図鑑4)
2004年9月発行:新親文化事業有限公司,
カワラ菌糸で上手く幼虫期間をひっぱれれば大型個体が羽化出来るかもしれませんね。期待しております。
飼育部屋も充実してきたようですが、何か手長のようなものがぶら下がってますね^_^ちょっとびっくりしました。
シェンクは久しぶりなので楽しみです。
マットの詰めが甘かったせいか朽ち木にしか産んでいませんでした。
「長手のぶら下がり」はどうしようか迷ったのですが、フィギアなのでカットせず出しました。