中国の7~9月期のGDP成長率は、前年比6.5%増にとどまった。これは、リーマンショック後の世界的な混乱期である、09年1~3月期のGDP成長率6.4%増以来の低成長率である。問題は、今後のGDPがさらに減速することである。米中貿易戦争の本格化に伴い、来年のGDPは劇的な低下も予想されている。6%割れである。
一方、消費者物価上昇率はさらに上がる要因を抱えている。現在ですら、実態を十分に反映していないと批判されている。3%を上回る消費者物価上昇率になると、不動産バブルの崩壊も加わり、中国経済は危機的な局面に遭遇するリスクを抱える。
『ロイター』(10月19日付)は、「中国成長率、09年以来の水準に鈍化、内需が減退」と題する記事を掲載した。
(3)「第3・四半期の中国の国内総生産(GDP)伸び率は、当局による債務圧縮の取り組みや米国との貿易摩擦が響き、世界的な金融危機下にあった2009年第1・四半期以来の低水準となった。発表を受け、当局者らは一段の政策支援を表明した。ただ、中国の株式市場では貿易戦争への不安から見切り売りが強まり、為替市場では人民元が対ドルで急落して成長見通しへの懸念を裏付ける中、当局は数々の難題に直面している」
7~9月期のGDPは、前年比6.5%増で、前期比では0.2ポイントの低下となった。デレバレッジ(債務削減)と米中貿易戦争が重なる不利な環境下では、やむを得ない成長率であろう。だが、いずれも中国が招いた災難である。デレバレッジ着手は、習政権が意図的に放置してきたもの。米中貿易戦争も非は中国にある。米国の技術窃取を行いながら、「徹底抗戦」とは厚かましい限りだ。要するに、中国政府が招いた問題ばかりである。習独裁政権ゆえに招いた問題であるから、習氏が政権の座にいる限り、問題解決は困難であろう。
(4)「オーストラリア・ニュージーランド(ANZ)銀行(香港)の中国担当上級エコノミスト、ベティ・ワン氏は『6.5%という数字はわれわれのコンセンサス予想を間違いなく下回っている。製造業を中心とする2次産業が弱さの源泉だ。第4・四半期の見通しを引き下げるかもしれない』と述べた。華宝信託(上海)のアナリスト、ニー・ウェン氏は『米国の追加関税発動や新興国の需要減退など、輸出への逆風が強まるため、先行きの経済見通しは明るくない。来年のGDP伸び率は6.0─6.2%に減速する可能性が高い』との見方を示した」
今後の中国経済の見通しに、明るいものはない。製造業が米中貿易戦争の直撃を受けるからだ。中国の製造業が不振に陥れば、新興国からの輸入が減るので、中国からの輸出が落込むというスパイラル的な輸出減になる懸念が出てきた。米国の存在を甘く見た、中国民族主義者の失敗であろう。
来年のGDP成長率は、6.0~6.2%へ落込む懸念も出てきた。ここまで落込む場合、住宅バブルの完全崩壊が前提になる。住宅販売(床面積)は、1~9月で前年同期比2.9%増に過ぎない。1~8月の同4.0%増から見て急減速である。可処分所得から見た家計債務負担が限界に達している結果だ。来年、住宅バブルの行き詰まりによって住宅在庫が急増すれば、GDPにはね返って行くであろう。
『大紀元』(10月17日付)は、「中国、9月CPIが2.5%上昇、実態を正確に反映せず」と題する記事を掲載した。
(5)「中国国家統計局は16日、9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.5%上昇と発表した。CPI上げ幅は4か月連続で上昇した。だが、この上昇率は市民の実感と大きくかけ離れている。中国側の発表によると、9月のCPIを押し上げた主因は食料品価格の上昇だ。食料品価格の上昇率は同3.6%で、今年2月以来の高水準となった。9月生鮮野菜の価格は約15%、生鮮果物は約10%、卵は7.1%とそれぞれ上昇した」
市民生活に直結する物品の値上がり率が大きい。これは、CPI値上がり率以上の「切迫感」を消費者に与えて当然だ。だいたい、あの広大な面積の中国のCPIを、一つの数字にまとめることが、実態からの乖離感を大きくしている。地域ごとに算出して、それをまとめて一本に表わす。そういう工夫があってしかるべきだろう。
(6)「中国当局は今年のCPI目標を3%前後と設定している。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月16日付)の報道によれば、一部のエコノミストと中国人消費者は、当局のCPI統計は実際の市民生活コスト上昇を正確に反映していないと指摘した。また、今年夏の中国大都市の家賃が上昇しているほか、中国市民の教育費、医療費や他のサービス関連支出の負担も拡大している。専門家は今後、中国のCPIの上昇は加速するとの見通しを示した」
今年夏から大都市の家賃が上昇している。ほかに、教育費、医療費や他のサービス関連支出の負担も拡大している。これは、中国財政の悪化を国民生活にしわ寄せしている結果であろう。季節商品の値上がりよりも、政府関連の価格値上がりが深刻だ。専門家は今後、中国のCPIの上昇は加速するとの見通しを示したのは、中国財政悪化のシグナルに違いない。
(7)「中国人民銀行(中央銀行)が9月14日、今年7~9月期都市部住民意識調査の結果を発表した。同調査は人民銀行が全国50の都市の2万世帯を対象に実施したもの。これによると、約6割以上の回答者が10~12月期において、物価上昇圧力が強まると予測。WSJは、米中貿易戦が激化するなか、中国市民の収入の伸びが減速し、価格上昇による生活費が増加することで、中国経済を支える個人消費に大きな打撃を与えると指摘した」
中国人民銀行による消費者意識調査では、約6割以上の回答者が10~12月期において、物価上昇圧力が強まると予測している。一方で、米中貿易戦争によって収入増が鈍化する中で消費者物価は上昇する。中国の個人消費が落込むのは必至の情勢になってきた。習政権にとって頭の痛い問題である。
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