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世界を簡単にするな

NHKで放送されているドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る。」の原作小説「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」を読みました。

ドラマが放送されているのをみて、原作が知りたくなり、学校の図書館の司書さんにお願いして購入してもらいました。
軽い気持ちで読み始めましたが、途中で泣きそうになるし、すごく考えさせられる小説でした。

あらすじ

主人公の安藤純は自分が同性愛者だと認識している、男子高校生。
彼氏は年上のマコトさん。
ある日、純はクラスメイトの三浦紗枝が本屋でBL本を買っているのを目撃してしまう。
三浦は腐女子を決して否定せずありのままを受け入れてくれた純に告白する。
そのまま二人は付き合うことになるが、純はだんだんと自分の気持ちに嘘をつけなくなり、
二人はどんどん不穏な空気になっていく。

この二人が選んだ道は、
純はこれからどうなっていくのだろうか。


感想

イッキに読んでしまいました。
このような題材の本は初めて読みました。

手に取ることすらちょっとためらわれてしまうようなド直球のタイトルで、この本を読んでるときも、友達に「何それw」と笑われてしまいました。

この小説の中身も、隠語など一切使われず本当に気持ちいいぐらいのストレートを投げてきます。

この小説には、主人公の純くんや、三浦さんだけではなく、亮平というチョーいいやつや、純くんをいじめる小野くん、ネット友達のミスター・ファーレンハイト、いつも行っているカフェ(バー)のケイトさん、など、いろんな人が出てきます。

ちなみにネット友達はゲイで、純くんにとってはとっても大きな存在です。
物語を大きく動かす人物でもあります。

『同性愛なんてありとあらゆる生物に発現しうる、取るに足らない現象。真に恐れるべきは、人間を簡単にする肩書が一つ増えることだ』(略)『人間は自分が理解できるように世界を簡単にしてしまうものなのさ。そして分かったことにする。(略)』

『物理の「ただし摩擦はゼロとする」みたいな?』

『そう。「空気抵抗は無視する」もだね。ジュンはいいセンスをしているよ』(略)『摩擦がゼロなわけはない。空気抵抗を無視して良いわけがない。だけどそうしないと理解できないから、世界を簡単にして事象を読み解こうとする。(略)』

これは純くんとネット友達の会話です。

なるほどなと思いました。

同性愛者という肩書は、その人がこの世の中のマイノリティであって、特別な、異質な存在だということを思わせるでしょう。

同性愛者だけでなく、
腐女子、オタク、ニート、精神病者、男、女、
いろんな言葉、肩書きがその人を簡単に見せてしまっていて、私たちはそれを分かった気になっている、その人を理解したつもりでいるということです。

私たちが普段物事を考えているときに、
摩擦をゼロにするように、空気抵抗を無視するように、特定の事柄を自然と無意識に物事から外してしまう、
そのようなものが世の中で言われる、マイノリティというものだと思います。

でもそれが世界を簡単にしているなんて誰も考えませんよね。
当事者からしてみれば、簡単な言葉で片付けられることなんて日常茶飯事なのかもしれません。


でも私は、すごく心に響きました。

留学生っていう肩書は、
現地では英語が喋れない子供だとみなされ、
日本に帰ってみれば英語が大好きで英語でいい点数とれる人
みたいに思われてるように自分で思います。

こんな風に思っているのも、
私がその人のことを勝手に決めつけてその人を簡単にしていることなんだとも思います。


そんな中で主人公の純は、ゲイであることをみんなに理解してもらおうと必死にもがきます。
心の中で、
摩擦をゼロにしたくない、空気抵抗を無視して、世界を簡単にしてわかったつもりにはなりたくない
と叫びます

純の周りの人たちは、その気持ちをしっかり受け取ってわかろうとしました。その過程で喧嘩になってケガを負ったりしました。
でもそれはもう青春そのものでした。

他人のことを理解するのって意外と難しいものです。
自分はきちんと理解していると思っているかもしれませんが、もしかしたら摩擦をゼロにして、空気抵抗を無視して得られた答えなのかもしれません。


私もこんな風にきちんと人と向き合って考えてみたいと思いました。

友達のこと、親のこと、兄弟のこと、しっかり向き合って考えなければならないとき、世界を簡単にしないできちんと自分で考え抜いていきたいなと思いました。

人だけではなく、社会にも言えることだと思いました。

摩擦をゼロにするな。空気抵抗を無視するな。
世界を簡単にするな。

ぜひ皆さんに一度、手に取ってほしい一冊です。




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