「山崎元が斬る!グローバル3倍3分法」(一般投資家向けイベント)の会場観覧の様子をレポートします。

「山崎元が斬る!グローバル3倍3分法」(一般投資家向けイベント)の会場観覧の様子をレポートします。 【連載】愚者小路、渦中の現場から。
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日興アセットマネジメント主催「山崎元が斬る!グローバル3倍3分法」が開催

続いてのニュースです。
2019年10月26日、六本木の東京ミッドタウンタワーにて「山崎元が斬る!グローバル3倍3分法」が開催されました。

事後補足

上記、レポートページが公開となったため公式サイトへのリンクを追加しました。

楽天証券経済研究所 客員研究員の山崎元さんと日興アセットマネジメント商品開発第一部 部長でグローバル3倍3分法ファンドの開発者でもある有賀 潤一郎さん同ファンドの是非を大議論するというイベントとなっています。

一般観覧者として投信ブロガーも数名招待された模様です。

現場の愚者小路さんと中継がつながっています。
愚者小路さん、そちらはどういった様子でしょうか?


愚者小路
愚者小路

はい、現場の愚者小路です。


日興アセットマネジメント主催「山崎元が斬る!グローバル3倍3分法」についてレポート致します!
「外国債券は不要」とのスタンスを示す山崎元氏が斬って斬って斬りまくる「ヤマゲン無双」になるという予想が大きく裏切られる形となりました。

「山崎元が斬る!グローバル3倍3分法」イベントのあらまし

日時・会場

2019年10月26日の午後3時3分、六本木の東京ミッドタウンタワーで行われた。
33F入口よりさらにエレベーターで上がり、案内された部屋は大きめの会議室兼イベントスペースのようだった。

部屋の後方にはライブ配信のため、撮影も含め10名ほどスタンバイしており、気軽に来てしまった私と現場のガチ度のギャップに私は軽く動揺を覚えた。

スタッフは全員オリジナルの「グロ3ポロシャツ」を着用していたが、アレは非売品なんだろうか。
とてもカッコイイので何かの機会にプレゼントとかすれば案外話題になるかもしれない。スタッフに案内されながら、私はそんなことを考えていた。

登壇者

山崎元(楽天証券経済研究所 客員研究員)
有賀 潤一郎(日興アセットマネジメント商品開発第一部 部長)

公式サイトの画像を見ると意識高い系ラーメン屋のようなポージングをさせられている有賀氏。
しかし実際はいたって物腰の穏やかな紳士である。

動画について

イベントの内容はライブ配信された。

チャットで質問も受け付けていたらしいが、生観覧者である私からはその詳細は分からなかった。
後から見られればと思っていたものの、再配信は行われていない。念のため質問メールは送ってあるので何か回答があれば追記したい。

事後補足

レポートページが公開され、その中に動画や対談内容がダイジェストとしてまとめられています。
詳細は下記リンクをご参照ください。

【あわせて読みたい】イベント前に山崎元氏がトウシルで関連コラムを書いていた

イベントのおよそ1週間前、山崎元氏が楽天証券のオウンドメディア「トウシル」にてレバレッジ運用に関するコラムを公開している。

当イベントへの布石だったのか、イベント前に考えを整理しておく目的だったかは不明だが、山崎元氏のスタンスを理解する助けにはなるだろう。

山崎元 VS 有賀潤一郎!対談内容をダイジェストでご紹介

ダイジェストとは言え、以下の内容は愚者小路の意訳です。いわゆる書き起こしでも主催者のチェックを通ったものでもないため、内容の正当性や完全性は一切担保できかねることをご了承願います。

実際、質問フォームへの書き込み等で打ち込みできなかった箇所もあります。

裏取りが必要な場合は必ず主催者や登壇者に問い合わせてください。

司会:
山崎氏にとって理想の投資信託・資産形成の在り方は?

山崎:
資産運用はリスクプレミアムのコレクションであると考えることができる。分散投資により効率的にリスクプレミアムをコレクションできるのだ。
反面、分散することでリターンが薄まってしまう。

司会:
グローバル3倍3分法ファンドはどういう想いから生まれたのか?

有賀:
分散投資によってリスクを減少させる効果が期待できるが山崎氏の言う通り、リターンが薄まってしまう。
グローバル3倍3分法ファンドでは分散しながらもリターンを得られるよう商品開発をした。

山崎:
どうやってレバレッジをかけているか説明してほしい。

有賀:
先物によってレバレッジをかけている。実際に投資元本を借金して投資をするというのは投信法上できない
借り入れている金利は先物価格に反映されており、グローバル3倍3分法ファンドでは流動性が良く裁定金利が影響しにくい先物を選んでいる。

具体的には国内株式と5種類の先進国債券が先物。
先進国株式・新興国株式・REITは現物(マザーファンド方式)。

山崎:
現在多くの国でマイナス金利が常態化しているが、マイナス金利の債券先物を買い付けるのはどういう気分?

有賀:
金利がマイナスということは借入コストもマイナスになっている。だから金利のマイナスをネガティブにのみ考えてもいけない。
マイナス金利よりもむしろ逆イールドの方が気持ち悪い
債券の値動きについては株式との逆相関を期待している。

山崎:
どれぐらいの逆相関となっている?

有賀:
いずれもマイナスになっている(下記資料参照)。
大きい場合はマイナス0.5まで行っているものがある。

グローバル3倍3分法ファンドのアセットクラス逆相関
配布された資料より、各アセットクラスの相関係数が記載されている。たしかに逆相関だ。の図

山崎:
先物の場合、ロールオーバーが発生する。ロールオーバーのインパクトは大きいか?

有賀:
かかるコストが何ベイシスになるかは言えないが、最低限になるようにしている。

山崎:
コストは明確なマイナスリターン。商品としての信託報酬はどうなっているか?

有賀:
税抜き0.44%。3倍している割に安い。
ネットチャネルでの販売を意識しているのでコストはリーズナブルに抑えている。
リーズナブルに抑えた分、皆様には長期保有で応えてもらいたい。

愚者小路注:
ネットチャネルを意識しているというだけあり、グローバル3倍3分法ファンドはSBI証券、楽天証券、マネックス証券、カブドットコム証券など主要なネット証券で購入できます。

山崎:
3倍していることを考えると44ベイシスは悪くない。ある程度リーズナブル。
他のファンドがいかに不真面目か分かるコスト水準だ。

運用でレバレッジをかけることをどう考えるかがポイント。
若い時にリスクを取れるようであれば最初にレバレッジをかけておくというやり方もある。

愚者小路注:
つみたて投資における初期の資金不足をレバレッジで補う考え方です。下記ページで説明している内容と推察しました。

山崎:
一方、投資の失敗は借金で投資した時に起こりやすい
「レバレッジだからいけない」というわけではない。
「レバレッジを皆でやりましょう」ともならないが。

グローバル3倍3分法ファンドには年1回決算と奇数月分配の2種類ある。しかし奇数月分配のタイプは年寄りを騙して売るための仕組みと言える。

長期保有してほしいと言っておきながらなぜ多分配タイプがあるのか。

有賀:
(苦笑いしつつ)やっと斬られてきた。
年1決算をオススメしているが、奇数月分配のニーズもあるので作っている。

ファンドの残高を見ても年1決算の方が主流になっている。昔と比べるとこれは大きな変化であると思う。

山崎:
客が利口になってきているということだろうか。

山崎:
どんな投資方法にも穴がある。
逆イールドから順イールドに変化した時、デフレからインフレに変化した時など弱みや「つまずき」が発生するかも、という想定が欲しい。

有賀:
リーマンショックみたいな暴落が一番困る。
債券が200%あってもなお、株・REITのリスクは債券よりもはるかに大きい。
特に金利が上がって、かつ株が売られるという状況が最も良くないだろう。

司会:
グローバル3倍3分法ファンドの評価はいかほどか?

山崎:
個人投資家がこういう仕組みを自分で作るのは難しい。
投信という器を利用して有効フロンティアの上を目指すのは興味深く、面白いものを作ってくれたと思う。

奇数月分配は恥ずかしいけれども。

司会:
ここからはこの会場で観覧している方からの質問に答えていく。

証拠金不足により償還の心配はあるか?

有賀:
証拠金が足りなくなる前に現物等売却して証拠金を作るので心配はない。

山崎:
受益者に追証がかかる心配はない。そこは投信のいいところ。
ただし理論上絶対大丈夫とは言えない。

司会:
5倍とか10倍とかできないのか?

有賀:
事前にインタビューして4倍5倍は怖いという意見があった。

司会:信託期間の延長の可能性は?
※信託期間は2028年9月21日までの10年間としている。

有賀:
目論見書に記載ない以上、延長しますとは言ってはいけない。
ただし一旦10年で期間を設けておいて出来る出来ないを踏まえて検討する。

司会:
目論見書の上限1兆円に達したら売り切れ?
※「信託金の限度額」が1兆円とされている。

有賀:
こちらも明言はできない。達する前に検討するだろう。

山崎:
2兆3兆でも問題ないモデルではあると思う。

司会:
今の経済は山崎式経済時計で何時?

山崎:
12時を回ったところを金融緩和で巻き戻しているところ。

司会:
どうして構想15年もかかったの?

有賀:
債券先物指数をロールオーバーしていった時にどれぐらいのリターンになるか、バックテストするためのツールがしばらくなかった。
分配がなくても買ってもらえるようになったという意識の変化も関係している。

司会:
最後に総括を。

山崎:
技術が進歩によって、これからプロダクトの進化のブレイクスルーが起きてくる。
変化を楽しんでいければと思う。

有賀:
分散投資をリターンにつなげることができると証明したかった。
究極的には皆に喜んでもらいたいし、山崎さんにも買ってほしい

山崎:
(マイクOFFで)楽天証券の社内ルールを調べておきます

イベント自体はここまで。以下、愚者小路の個人的評価と見解。

愚者小路から見たグローバル3倍3分法ファンド

イベント前に私はグローバル3倍3分法ファンドの個人的評価をしておいた。

この評価が変わるかどうか楽しみにしつつイベントを観覧したが、結果として考えは変わらなかった。
だからって箸にも棒にも掛からぬ「誰得ファンド」というわけでもないし、もしそうだったらイベントになんて行っていない。
ある程度の合理性を持ったファンドだと思うし、新しいコンセプトのファンドを作ったという点では山崎氏の称賛と同感だ。

債券は先進国の5か国のみという点では分散度合いが十分かどうか判断は分かれるだろうし、どれだけの理屈があろうとレバレッジでリスクが3倍に膨れていることに変わりはない。

特にレバレッジについては十分な理解と納得が必要で、リターンが高いからという理由で安易に手を出せるものではない。
イベント内で山崎氏が言っていた「投資の失敗は借金で投資した時に起こりやすい」というのはまさにその通りで、レバレッジが時として個人のコントロール能力を超えてしまう事を私は重く受け取っている。

他のファンドと併せ持つと一気に複雑化する

複数のファンドを併せ持つポートフォリオ運用にあたり、一商品のみ3倍というのはポートフォリオの集計・把握を難しくする要因になる。
グローバル3倍3分法ファンドの評価額分だけ各アセットクラスを3倍して集計する手間を考えると気が重い。(できないレベルの話ではないが)

グローバル3倍3分法ファンドはつみたてNISAやiDeCoで購入することはできない。
税制優遇口座を使っていれば何かしら普通の無レバレッジファンドでの運用となるので、大なり小なりこの「集計・把握が複雑化する問題」には直面することだろう。

ポートフォリオの全容が掴みにくくなる、言い換えればポートフォリオの透明性が失われるというのは一つのリスクであると私は考える。
ポートフォリオをシンプルに保つ事と長期投資をストレスなく続けることは極めて密接にリンクしている。

シンプルさを損なうと投資の継続すら困難になってくる場合すらあるとまで断言してしまうのは言い過ぎかも知れないが、それでも私は「シンプル第一」でありたい。

私がグローバル3倍3分法ファンドに手を伸ばしていない、そして今後も手を伸ばさないであろう理由はこんなところである。

今後グローバル3倍3分法ファンドに起きてきそうなこと

別に基準価額が上がる下がるの話ではない。

2019年10月現在でグローバル3倍3分法ファンドについて話題にしている、もしくは保有している人というのはいわゆる「アーリーアダプター」と呼ばれる層である。

対して、話題になるようなファンドには一定率で「ある層」が流入してくる。

ファンドの事は全然分からないけど、このファンドさえ買っておけば間違いないらしい。
ネットですごい評判だし。

・・・という層だ。
この層を一言で形容しようとすると不適切な言葉しか思い浮かばないので、「この層」としておく。

これからyahoo知恵袋でもこういった質問が増えてくるかも知れない。

「初心者です。グローバル3倍3分法ファンドがいいって聞いたんですけど、今からでも買いですか?今買ったらいつ利食いすればいいですか?」

かつて「ひふみ投信」ブームが起きた際にも「この層」が多く見られた。案外「ひふみ投信解約してグローバル3倍3分法ファンド購入しました」という流れも少なくないのではないかと考えている。

「この層」による気まぐれ資金流入&気まぐれ資金流出が頻発すると、それだけ運用は非効率になってしまう。
特に気まぐれ資金流出はちょっと下がっただけでも、もしくはただ横ばいなだけでも発生しかねない。

ちなみにグローバル3倍3分法ファンドの信託財産留保額はゼロだ。当記事を読まれてる皆様にはこれが何を意味しているか分かることだろう。

以上を踏まえ、現在グローバル3倍3分法ファンドに賛同している方、既に保有している方には冷静な情報発信をオススメしたい。
(余計なお節介であることは重々承知したうえで)

リターンが大きいことばかりを声高にアピールしていると、「この層」の誤解を招く原因にもなる。
このファンドはどうなったらリターンが出るのか、どういうリスクがあるのか、(それこそイベント内で話題になったように)どういう局面で値下がりが起こりうるのか、をしっかり解説することがもしかしたら今後の安定運用/効率運用にもつながるかも知れない。

「これさえ買っておけば間違いない」なんてファンドはないんだよ、という当たり前を同じ消費者として説明できるのは、他でもないアーリーアダプターの皆様なのだから。


愚者小路
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以上、現場の愚者小路でした。

※当連載のまとめ記事はこちら
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