新型コロナウイルスの蔓延は、世界経済や日本経済に暗い影を落とし、世界的な需要の大減退、つまり、かつての世界恐慌以来のデフレ恐慌の再来リスクが高まっている。

【参照先】
『百貨店4月売上マイナス72.8%の衝撃発表、高島屋のフライング営業再開は大きな賭けか』
https://www.mag2.com/p/money/922951
『「牛角」など展開の外食チェーン 赤字64億円 新型コロナ影響』
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200522/k10012441341000.html
『鉄鋼メーカー、巨額赤字で高炉休止へ、新型コロナの追い打ちで一時休止も追加』
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nmc/18/00011/00069/
『世界各地で新車需要吹き飛ぶ、自動車「赤字続出」の衝撃~海外販売は壊滅的。内需も冷え込めば、国内工場の全面停止も起こりうる。』
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/23468
『【コロナ:世界の動きまとめ】世界の航空便80%減。豪ヴァージン、ついに大手初の経営破綻』
https://www.yamatogokoro.jp/column/corona_world/38154/
『1~3月期、経常益32.0%減 全産業、リーマン以来の下落率』
https://news.yahoo.co.jp/articles/3adecc575ed77c7295b082e2d30d57d66bf8cc30

多くの業種・業界で、コロナ禍により売上が急降下し、収益も吹っ飛ばされ、未曽有の赤字額を計上せざるを得ない企業が続出するだろう。

解雇・失業・内定取り消し・新規採用停止・昇給ストップ・給与ダウン・ポスト削減・諸手当削減など、企業の雇用環境や就業環境を取り巻く空気は、これまでになく不穏なものになっている。

こうした負の影響は、上記に挙げた業界内だけに止まらず、納入業者や委託業者にも瞬く間に波及するだろう。

得てして、正の影響の波及は遅々としたものだが、負の影響は周囲の予想をはるかに凌駕するスピードと勢いで波及しがちだ。

令和時代を暗澹たるものにする恐慌の到来により、生き残るべき企業が生産力を落とさざるを得ない、あるいは、倒産せざるを得なくなったりするだろう。

また、多くの人材が解雇・失業の憂き目に遭い、給与カットにより就業意欲を著しく削がれる者も後を絶たないだろう。

これらはすべて、我が国の国富である生産力・サービス提供力という供給力の脆弱化や瓦解につながる甚大なリスクであり、これを放置することは国家の自死や崩壊を意味する。

なぜなら、国富の毀損は、即、国家や通貨の信用の下落に直結し、経済復興に爆発的な威力を持つ財政政策そのものを無力化してしまい、国家経済の自力再建を不可能にしてしまうからだ。

『コロナ対策「財政赤字」はいずれ国民が背負う。政府に都合が良すぎるMMTの問題点』(矢口 新)
https://www.mag2.com/p/money/921547
「コロナウイルス対策で各国政府は未曾有の規模の財政支出を約束している。一方で、ほとんどの国は財政赤字なので、そんな「空手形」に対して危惧する専門家は数多い。(略)
(筆者註:レバノンやアルゼンチンが外貨建て債務の返済を不履行とした際に自国通貨を発行して外貨を調達できなかったのは…)両国が外貨調達できないのは、信用力がないから。外貨を買えないのは、誰も両国の通貨を受け取りたくないからだ。なぜなら、MMTのように何の裏付けもなく通貨発行されてはたまらないからだと考えられる。(略)
家庭や企業でも家長や社長が、MMTに沿って家庭や社内だけで通用する通貨を好きなだけ発行することができる。家庭や社内では、家長や社長の信用力でその通貨は流通する。信用力さえあれば対外的にでもそうした「疑似通貨」は通用する。(略)しかし、信用力がなければ、それらは対外的には紙切れだ。つまり、MMTによる財政赤字の拡大は、対外的な信用力を失うことになるのだ。(略)
では、なぜ日本は大丈夫なのか?それは、個人資産を含む十分な民間資産があるからだ。そして、政府には徴税権があるからだ。
MMTのような「ない袖は振れない」。日本の財政赤字は、いずれ国民が埋めることになる。それができなくなった時には、日本もレバノンやアルゼンチンのように「債務不履行」が現実味を持ってくると言える。」

矢口氏のような、60年代以前の陳腐で古臭い貨幣観の持ち主は、いまだに貨幣の価値や信用力を担保するのは「貨幣の希少さ」や「発行国の財政収支」だと盲信している。

こんな妄想は、世界中にドルをバラ撒き世界最悪の財政赤字国家たるアメリカが発行する米ドルが世界最強通貨であり、財政収支ランキング(対GDP比)でナウル・ミクロネシア・ツバルがワン・ツー・スリーフィニッシュしているという事実だけで、簡単に論破可能だ。
(ちなみに、イラクが7位、コンゴも9位にランクイン)
ナウルとかツバルの貨幣を歓んで受け取るものなどいないし、そもそも、かの国々の貨幣単位すら知らぬ。

貨幣価値や信用力を担保するのは、財政収支とか貨幣の希少さではなく、一国の生産力・サービス提供力・公的インフラ・教育・科学技術力・遵法精神・政治の安定度・国民の規範意識の高さ等々多岐にわたるというのが常識だ。

間違いなく言えることは、管理通貨制度に移行して50年近くも経つに至っても、政府による通貨発行権の存在をガン無視し、財政問題にばかり焦点を当て、財政収支からマクロ経済を騙ろうとするのは100%ジャンクだということだ。

生産力・サービス提供力・公的インフラ・教育・科学技術力・遵法精神・政治の安定度・国民の規範意識の高さ等といった貨幣の信用力堅持に欠かせないファクターを維持向上させるには、国富たる供給能力を常に強靭化せねばならず、その実行部隊である国民一人一人の生活水準もまた質量ともに十二分に満足できるものでなければならぬ。

それを可能にするには、政府による積極財政策を通じた民間経済への貨幣供給である。

日本人は総じて勤勉だが、それに甘えて増税緊縮政策に舵を切り、貨幣供給を怠ると、あらゆる産業は収入を途絶され、適切な富の分配や人材育成、技術発展が不可能になり、個々の国民も所得の減少や雇用の劣化から消費を減らし、それが廻りまわって企業の供給力を毀損させる。

つまり、貨幣の信用力の源泉となる供給力や技術力といった主要なファクターは、政府が貨幣を出し惜しみすればするほど弱体化し、信用力の基盤を崩壊させる。
信用力をより強固にし続けるためには、貨幣を退蔵するのではなく、それを世に放ち実体経済下で酷使せねばならないのだ。

貨幣というものは、使えば使われるだけ国民に富をもたらし、企業の供給力を高度化・強靭化させる性質がある。

増税緊縮派のバカどもは、こうした貨幣の基本原理を知ろうともせず、貨幣を使うほどその価値が減じるかのように誤解している。

矢口氏も、貨幣の信用力が大切だと主張するなら、貨幣価値を生む原理原則くらいはきちんと勉強してもらいたい。

また彼は、円が紙切れ化せずに済んでいるのは、日本には個人資産を含む十分な民間資産があり、政府には徴税権があるからと述べているが、これも増税緊縮思考のバカが陥りがちな初歩的な勘違いだ。

知ったかぶりして個人資産とか、徴税権と軽々しく言うが、それらはすべて”円という貨幣”そのもの(※外貨建て資産も最後は円に換金される…)であり、彼の論は、いわば「円(貨幣)の価値を担保するのは円(貨幣)そのものである」と言うに等しい。

まことに馬鹿げた主張ではないか。
それなら、別に国民を怒らせてまで徴税せずとも、政府がいくらでも製造できる円を造って貨幣価値維持基金として積み立てておけばよかろう。

彼は、「MMTのような「ない袖は振れない」。日本の財政赤字は、いずれ国民が埋めることになる」と大嘘を吐いている。

だが、通貨発行権を持つ政府に”ない袖”などない。
袖は幾らでも何時まででも振り続けることができるから、財政赤字など気に掛ける必要は微塵もなく、国民がそれを埋める義理も義務もない。

矢口氏は為替・債券のプロディーラーだそうだが、この程度の理屈も知らずに一端のディーラー気取りで恥ずかしくないのか?