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童話の時間

針ねずみと笛吹き(14)


 また別の日、月と星の穏やかな光に照らされるような笛の音になだめられて、針ねずみの心は安らぎました。

 月と星が雲に隠れると、闇までが味方でした。

 漆黒の闇はビロードのように柔らかく針ねずみを包み込んで、
「もう何も怖がらなくていいのだよ」
 と何度も言ってくれました。

 それを聴くうちに、針ねずみはようやく安心することができました。

 笛の音が遠くに幽かに鳴るのを聞きながら、針ねずみは毛布のような夜に背中の針ごとくるまれて眠りました。



 来る日も来る日も、笛吹きの吹いてくれる笛の音に抱かれながら、怖さは次第に薄れ、怯えは癒され、少しずつ健やかさの戻るうちに、あるとき、ふと、自分の中に何かが芽生えそうな気配がするのを針ねずみは感じました。

 遠くから何かが聞こえたような気がしました。

 誰かが叫んでいるのでした。

 それも、確かに自分に向かって呼びかけているのでした。

「ああ、誰だったろう、あれは…。
 そして、何と言っていたんだろう…」 

 




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by nakamura-fumine | 2019-03-27 11:25

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