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安全

カルタヘナ法

遺伝子組換え生物に関する「カルタヘナ法※1」について取り上げます。

※1 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律

目的

カルタヘナ法は、生物多様性条約 (1992年採択)の目的

(1)生物の多様性の保全
(2)生物多様性の構成要素の持続可能な利用
(3)遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分

のうち、(1)生物の多様性の保全 を目的としています。

カルタヘナ法は、生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(カルタヘナ議定書)(2003年6月公布)の批准のため、2004年2月に施行されました。

対象

カルタヘナ法の対象は、

【定義】 遺伝子組換え生物等(法第2条第2項)
細胞外において核酸を加工する技術、及び、異なる分類学上の科に属する生物の細胞を融合する技術により得られた核酸またはその複製物を有する生物

です。

対象となる生物の例としては、以下が挙げられます。※2,3

◇ウイルス、ウイロイド、細菌、真菌、動植物の個体・配偶子・ 胚・種子など
 (ヒトは対象外、培養細胞、DNA断片など、生物で無いものは対象外)

※2 参照: 文部科学省「ライフサイエンスの広場」 > 安全に関する取組 > 遺伝子組換え実験
http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/anzen.html
※3 予防原則の観点から対象を、自然条件において個体に成育しない細胞を宿主として用いる実験やゲノム編集技術等に広げている機関が多い。

(参考)
■遺伝子組換え生物等(法第2条第2項)
・次に掲げる技術の利用によって得られた核酸またはその複製物を有する生物をいう。
1.細胞外で核酸を加工する技術
2.異なる分類学上の科に属する生物の細胞を融合する技術
◇セルフクローニング(同一種同士)、ナチュラルオカレンス(種間で核酸の交換が知られている種同士)は該当しない。
・セルフクローニング:宿主とする細胞と同種の細胞由来のDNAを、試験管内でベクターにつなぎ込んで宿主細胞に移入し、増殖させること。(できた組換え細胞の遺伝子構成は天然のものと変わらない。 アミノ酸、核酸、酵素などを発酵生産するときの生産増強には、セルフクローニングによって改良された菌株がよく使用される。)
・ナチュラルオカレンス:自然界で発生することが知られている変異と同等のものを人為的に作成することも含まれる。(インフルエンザウイルスのリアソータント株ーワクチン製造用)

第一種使用等および第二種使用等

「カルタヘナ法」では、遺伝子組換え生物が生物多様性に影響を及ぼさないかの事前審査や適切な使用方法など、様々な措置を実施する必要があります。「第一種使用等」、「第二種使用等」の二つの使用形態により、必要な措置や手続きが異なります※4

■第一種使用等: 環境中への拡散を防止しないで行うもの( 例:野外栽培試験等)
・「第一種使用規程」、「生物多様性影響評価書」を提出し、主務大臣の承認を受ける必要
■ 第二種使用等: 拡散防止措置を講じて行うもの(例:閉鎖空間での微生物実験等)
・拡散防止措置を必ず執るよう規定 (実験のレベル等に関わらず全ての組換え実験が対象)
・執るべき拡散防止措置が省令に定められていない場合には、その都度、大臣の確認を受ける。
(その他の規定)遺伝子組換え生物等に関する情報提供、輸出入時の措置等

※4 平成29年8月8日 カルタヘナ法に関する説明会資料
http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1766_01r2.pdf

使用目的と管轄省庁

商業化又は実用化に向けた使用等は産業利用(研究開発要素のないものや研究用であっても不特定多数へ販売されるものは原則として産業利用)となります。
1.研究開発(文科省): ・文科大臣確認実験 ・機関実験
2.産業利用(産生物の利用目的別に申請省庁が異なる)
・工業用試薬→経済産業省
・医薬品→厚生労働省
・動物用医薬品→農林水産省

遺伝子組換え生物等の使用等に係る措置※4

研究開発等における、遺伝子組換え生物等の使用等に係る措置等は以下の通りです。

1.研究開発段階の第一種使用等について
①『第一種使用規程』や『生物多様性影響評価書』を文部科学大臣・環境大臣へ提出
②国は学識経験者の意見を聴取し、パブリックコメントを行った後に、当該遺伝子組換え生物の使用が生物多様性に影響しないと認める場合に承認

2.研究開発段階の第二種使用等について
①研究開発段階の遺伝子組換え生物等を第二種使用等する場合、実験に用いるすべての微生物等の特性に応じた拡散防止措置(P1、P2Aなど)を執る。 ← 全ての組換え実験が対象
②実施に当たっては、 「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」等に基づいた拡散防止措置を執る
(拡散防止措置が定められていない場合、あらかじめ、主務大臣の確認を執る)

第二種使用等にあたって執るべき拡散防止措置は、「実験の種類」や「実験分類」等から決定されます。 ※4 (研究開発等の場合)

【実験の種類】
・微生物使用実験、大量培養実験
・動物使用実験(「動物作成実験」又は「動物接種実験」)
・植物使用実験(「植物作成実験」、「きのこ作成実験」又は「植物接種実験」)
・細胞融合実験

【実験分類】
・クラス1 :微生物、きのこ類及び寄生虫のうち、哺乳綱及び鳥綱に属する動物に対する病原性がないものであって、文部科学大臣が定めるもの並びに動物(ヒトを含み、寄生虫を除く。)及び植物
・クラス2 :微生物、きのこ類及び寄生虫のうち、哺乳動物等に対する病原性が低いものであって、文部科学大臣が定めるもの
・クラス3 :微生物及びきのこ類のうち、哺乳動物等に対する病原性が高く、かつ、伝播性が低いものであって、文部科学大臣が定めるもの
・クラス4 :微生物のうち、哺乳動物等に対する病原性が高く、かつ、伝播性が高いものであって、文部科学大臣が定めるもの

【拡散防止措置の具体例】
「カルタヘナ法」で、第二種使用の場合の、実験時及び保管・運搬時の拡散防止措置について、具体的には、実験の種類と分類等に応じた拡散防止措置のレベル(P1,P2,P3等)が決められています。※5
なお、各拡散防止措置の具体的項目については、拡散防止措置チェックリストを参照することができます。※6

例)微生物実験 (特定の場合を除く)

宿主の実験分類 核酸供与体の実験分類 拡散防止措置
1 クラス1 クラス1 P1 レベル
2 クラス2 クラス1 P2 レベル

※5: 文部科学省ライフサイエンスの広場>安全に関する取組>遺伝子組換え実験>遺伝子組換え生物の第二種使用等について
http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n815_01r2.pdf
※6: 文部科学省ライフサイエンスの広場>安全に関する取組>遺伝子組換え実験>拡散防止措置チェックリスト http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/kakusan.html

まとめ

「カルタヘナ法」についてまとめると、
1.目的は生物多様性の保全
2.カルタヘナ議定書批准のため2004年に施行
3.   対象は遺伝子組換え生物等
4.遺伝子組換え生物が生物多様性に影響を及ぼさないかの事前審査や適切な使用方法など、様々な措置が規定されている
5.使用形態を第一種使用等(環境中への拡散を防止しないで行う使用等)および第二種使用等(環境中への拡散を防止しつつ行う使用等)の二種類に分けて規定しており、主務大臣の承認、確認が必要になる場合がある
6.第二種使用等にあたって執るべき拡散防止措置は、「実験の種類」や 「実験分類」等から決定される (研究開発等の場合)

【ポイント】ライフサイエンス研究者は、遺伝子組換え生物等を取り扱う前に、法令、及び内部規程に従い、その使用形態に応じた措置(主務大臣の承認、確認、拡散防止措置等)をとること

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