ここ数日、Twitterで研修医の言動に関して様々な議論が飛び交い、また私自身も日々の診療で思うところがあったので、今日はそれをここにまとめたいと思います。
(1) 上級医との付き合い方
過日、Twitter上でフォローしている方がYouTubeにアップロードされている動画をたまたま視聴しました。
「世の中には、相手を徹底的に貶めて自尊心を破壊し、支配下に置く人間が居るから注意せよ」という趣旨の動画であり、これはカルト教団, 軍隊のみならずDVを行うパートナーにも当てはまる特徴(洗脳の方法)なのです。
こうした話を受けて、私は初期研修時代に経験した不快な出来事を思い出しました。その内容と, それから得た教訓を私はTwitterに連続投稿という形でシェアした訳ですが、それをまとめてくれるサービスがあったので利用しました。以下のリンクで閲覧できます。
悲しいことに、我々は小中高校の学校教育と, 中学〜大学で加入する部活・サークル等で「教師/顧問→生徒」や「先輩→後輩」という力関係において、上述のような支配・洗脳を受けることが少なくありません。そのため、社会人になった後でさえも、順応し過ぎた余りに気付かないリスクがあると私は考えています。
(2) 医療のプロとしての心得
一昨日〜昨日辺り(2020年5/19~20くらい)だったでしょうか。これまたTwitter上にて「酔っ払いの急患を診て腹が立ったので、太めの点滴針を刺してやった。上級医も賛同した」という趣旨のツイートを行った研修医がおり、それへ同じく医療関係者から様々な批判が生じていました。
アンガーマネジメントの第一歩は自分を知ること。相手に対して陰性感情を抱いてしまうのは仕方ないとして、その状態をメタ認知で把握することが重要です。相手に報復したい、鬱憤を晴らしたいという気持ちで頭がいっぱいになっていると、既に自分の認知は歪み、正常な判断力を失いつつあります。
— Hashimoto (@r_hashimoto) 2020年5月19日
医者の職業倫理として超えてはいけない一線があります。医療行為は科学的妥当性のみに基づいて実施されねばならず、懲罰を目的とするそれは医の倫理に反するばかりか場合によっては傷害罪です。 https://t.co/sc1bkovCPP
— 杉本 幸太郎 (@sugikota) 2020年5月19日
確かに、酔っ払って言動が支離滅裂, 飲酒運転, 果ては暴言・暴力に及ぶ患者に救急外来で対面すると、負の感情が生じるのは私も同じです(と言うか、大方の医療関係者はそうでしょう)。しかし我々医療スタッフには(当然一般市民にも)そもそも、そういった連中を処罰する権限はありません。法律上、一般市民は現行犯に限って私人逮捕ができるようですが(以下『私人逮捕』のWikipediaのリンク参照)、『悪人』に対する罰の内容(量刑)を決定するのはあくまで法律, 裁判所です。とはいえ、その者が暴力を振るい、医療スタッフらに危害が及ぶのであれば躊躇なく警察と警備員を呼びましょう。
酔っ払い(特に飲酒運転者)を診療すると「何だよこいつ💢」と感じるかもしれませんが、↓のようにあくまで倫理的に振る舞いましょう。
— コロナを追放したいカ医ロ・レン (@ErVoiceof) 2020年5月19日
暴力を振るわれた場合、警察を遠慮なく呼びましょう。
間違っても、ライトセーバーで切り刻んだり、フォースで窒息させてはいけません。 pic.twitter.com/csPDUS4jWP
また、過去にも私はTwitterや本ブログにおいて、大学病院や他科に対する愚痴を多く綴っています。
医学生・研修医を「アンプロ」と言う前に - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー
【若手医師は特攻隊なのか】自民党議連が提案。「初期研修2年目は半年間、医師不足地域で研修を」 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー
大学病院救命センターに勤務していて感じたことなど。 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー
大学病院・医局は監督者として適格なのか - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー
今の日本の医療システムは欠陥が多く、修正が必要であることは否定しません。しかし、将来の専門診療科(進路)を決めるに当たり、その領域の専門性を軽んずるような皮算用はすべきでないと私は思っています。以下、その思いを綴ったツイートをまとめたものをリンクとして貼っておきます。
最後になりますが、医療現場という労働環境は、人様の健康を預かるという点で非常にストレスフルなものです。途中で精気を失って文字通り倒れる前に、適宜休みを取り、ストレスは健康的な方法(e.g. 運動などの娯楽)で発散させましょう。