かくして、先生が新明国四版あとがき 付記五に「業余」とお書き頂いた「週休五日制」のわたしの日課が始まり出した。全く髪結いの亭主よろしく、カミさんは店で商い、亭主は週に二日商売に従事するが、残りの五日は奥の自分の部屋に籠もって「チョキチョキマン」という長丁場が動き出す。

 「週休五日制」は、今時の日本ハヤリのリゾート構想の一環などという、頽廃思潮のお先走りの構想によるものでは毛頭ない。恩師がお入り用の用例を、一枚でも多く提供するための時間を生み出す、苦肉の策によって自らの生計を規制して、編み出した自己流の時間割であった。と、表現すれば美談の押し売りのように聞こえるのだが、実は、用例を採る作業を通じて、わたしが一からもっと勉強したかったというのが本音である。ただそのことで、先生のお仕事を多少ともお手伝いできるならば申し分なく、一石二鳥ということになる。そのために実践したに他ならない。

 この作業を見て、必要箇所をハサミで「チョキチョキ」と切り取ることから「チョキチョキマン」、糊付けをしているのを見て「ペタペタマン」、その前に必要箇所に赤ペンでチェックしているところを「チェックマン」、出来上がったカードを五十音順に並べているところを「ペラペラマン」などとわが家族の間でパーっと広まったらしいが、「チョキチョキマン」が一番優勢で、自然とこの表現に落ち着いて現在に至っている。従って、わたしの用例採集作業と殆ど同じ歴史を持つ我が家のこの表現を本書の題名にした所以である。

 散髪屋さんや植木屋さんらのイメージが強い表現ではある。散髪屋さんや植木屋さんは刈り捨てて(切り捨てて)形を整えるチョキチョキマンではあるが、当方は切り取ったものの集積によって、それを利用する、いわばリサイクルのチョキチョキマンである。個人家庭内だけで通用する言い方は、どこの家庭でも結構多いのではないかと思う。スーパーマンに始まってウルトラマン、ビックリマン、アンパンマンなど、漫画チックな英雄像からチョキチョキマンに一体どんなイメージが浮かび上がるのか。それこそ「自由に」想像を逞しくして欲しい。




(注)このチョキチョキマン物語は、すべてを原稿から電子化していないため、ここまでです。また、機会がありましたら、掲載するかもしれません。



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