開業獣医師Chamoの愚痴と本音

開業獣医師の愚痴と本音……その他いろいろ

動物病院の料金(ワクチン&フィラリア)について その2

 前回、予防関係(フィラリア予防やワクチン)の料金が相場に比べ極端に安い病院には、安い理由がある。ビジネスとしては賢い方法です。 というお話をしました。

 今回は、もっと凄いビジネスを展開する先生、経営者について少し触れてみたいと思います。

 

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写真は我が家の飼い猫です。本文とは関係ありません(;^_^A

 

 

 さて、その前にまず、混合ワクチンや狂犬病ワクチンは毎年接種しないといけないのか? 本当にフィラリアの予防は必要なのか? という疑問があるかと思いますが、これについては、機会を設けてくわしく説明したいと思います。話がややこしくなってしまうので、今回は割愛させていただきますね。

 

 

 さて本題。前回、予防関係は大きな利益を生むという話をしましたが、もう一つ付け加えるなら、誰でも(獣医師なら)簡単に短時間で大量の患者さんをさばけます。言ってしまえば知識も経験も乏しく、何の設備がなくても、針とシリンジがあれば可能です。

 

 メッチャ効率の良いお仕事です。

 

 通常の診療、例えば、病院で30分間、1件の患者さんに対して診察や相談をして、結果、診察料だけで800円、下手したら無料。なんて事はどこの病院でも、よくある事だと思いますが、我々はそれについて愚痴を言う事はあまりありません(モンスターペイジェントを除く)なぜなら、それも仕事ですから。また、数十分以上かけて検査をしたり処置をして、頭と体力を使う事もしばしばです。内容にもよりますが、時間当たりの労働対価は決して高いとは言えません。

 ところがワクチンを打つだけなら、ものの5分で終わります。フィラリア薬を渡すだけなら数十秒です。しかも利益率が高い。おまけに、打つだけなら、たいした経験も設備も要らないのです。

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 そうです。そこに目をつける病院が出て来たのです(さすがです! 普通は思ってもやりません)ぶっちゃけ、昔からそのような病院はありましたが、ここ最近では、企業経営として目をつける先生(獣医師以外も)が多く現れてきました。

それについて少し解説していきます。

 

 動物病院や動物関連会社の経営者(経営者は別に獣医でなくても構いません)が狂犬病予防接種やフィラリア予防の時期、つまり春にスタッフやアルバイトを使って全国安行をさせるのです。

 

 最近ではホームセンターやペットショップと契約して注射を打ち、フィラリア薬を売ってまわります。そして数十分~数時間後には別の会場に移動していくようです。

 

 そうです、これは主に行政が行う狂犬病の集合注射をパクったやり方です。ただ、行政の場合は近隣の先生方や地域の獣医師会などにお願いし、何か問題がおこった時は近隣の病院で対応するという手はずになっています。

 まあ、その集合注射にもいろいろと問題があるのですが、これは少しでも接種率を上げようという役所、しいては厚生労働省からの委託事業です(東京都のように、この制度を廃止して、狂犬病予防接種は全て近隣の動物病院での接種に切り替えた地域もあります)

 では、個人経営者や企業が行う集合注射はいいのか? 法的には問題ありません。ぶっちゃけやったもん勝ちです。以前は勝手に公園や路上で行っていた強者もいましたが、行政からの指導もあり、今ではホームセンターなどの敷地内で行う為、違法ではありません。

 

 それ以外にも、他県のペットショップなどと契約して、その時期だけ予防注射やフィラリア予防薬、ノミダニ予防薬を処方しに行くという業務形態をとる会社(病院)もあります。

 

 では何か問題なのか?……やりっぱなしなんです(+o+) 打つだけ打って、さっさと次の会場に移動してしまいます。もしくは帰ってしまいます。接種後に体調異変が起きようが、お構いなしです。

 

 我々は通常の診療において、狂犬病ワクチンや混合ワクチン、またはフィラリアの注射で訪れた飼い主さんに対して、特に、接種が初めて(当院初診の場合も含む)の場合は、出来るだけ午前中、午後なら早い時間に来院するようお話しています。

 副作用等が発現した場合の対処を考えてのことです。場合によっては出直して頂く事もあります。これは全て安全の為の対応です。

 実際、緊急を要する副作用が発現する事も稀にあります。

 

 集合注射の場合、帰ってから具合が悪くなって、再びそこを訪れても、そこはただのホームセンターやペットショップです(そのような場所で予防接種を受ける場合、毎日診療している動物病院が店内に存在しているか確認してください。存在していれば、有事の対処はしてもらえるはずです)

 

 接種直後にショックが起きた場合、対処できる先生がいるのでしょうか?(新卒や臨床経験の乏しい先生ばかりのチームだったら……)ここではあまり詳しい事は書けませんが……

 そこでは接種後の登録狂犬病は接種及び登録が義務づけられています)も、しませんし、登録の説明すらしない先生もいます。中には混合ワクチンまで同時接種して、血液検査無しフィラリア薬を処方(血液検査の必要な要指示薬です)していく業者までいます。

 

 料金は相場より安いのが普通です。集客の為に近隣の動物病院より値段を下げています。飼い主さんにとってはありがたい事でしょう。

 

 因みに、行政が設定している料金は狂犬病予防接種¥2950 新規登録料¥3000 注射済票¥550 です。(いずれも税込み)

 一般の動物病院はこれと同額か少し高いところが多いと思います。 

  フィラリア検査は、その内容(直接、集中、抗原)によって異なりますが、採血料を含めておおよそ¥1600~3000 の範囲ではないかと思います。

 予防薬は種類や体重によって異なりますので、詳しい金額は控えますが、小型犬の最低料金(フィラリア予防のみの薬)は1回分¥650~1000弱が多いのでははないでしょうか?

 犬の混合ワクチンも種類によって異なりますが、¥6500~10000くらいかな。

 

  当然、ホームセンターやペットショップなどで行う場合はもっと安いです。

 

 一般の病院でも、相場より極端に安いところがあります。そのような病院はたいていホームページで料金を告知しています(料金の表示は駄目だと聞いています。でも、インターネット上は規制が無い? みたいです)

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 動物病院の料金(ワクチン&フィラリア)について その1を参照して下さい

https://blog.hatena.ne.jp/vetchamo/vetchamo.hateblo.jp/edit?entry=10257846132634286010

 

 

 まあ、安い事はありがたい事だとおもいますが、安い理由はある(全てと言っているわけではありません)のです。

 

 それにしても、地域にもよりますが、フィラリア予防薬は検査してから処方してもらいたいものです。

 当院では、つい1昨日前にも、フィラリア感染犬の新患がありました。

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 メッチャ動くのでピントが合ってません(;^_^A

 赤いのは赤血球で、透明な紐状のものが、ミクロフィラリアです。

 

 

 以下はフィラリア予防薬の使用説明書です

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このように、全てのフィラリア薬に、血液検査をしてからの投与と記されています。

基本的に、よほどの事由が無い限り、我々は能書に従った投薬を行う義務があります。

 

 

 

私の病院は、たまにペットショップから依頼を受けて、子犬の検診やワクチン接種に伺う事がある(院内と同じ救急処置は出来ない事を了承の上)のですが、まだ新卒や経験の乏しい先生の場合には、必ず先輩獣医師を同行させています。

 ワクチンを打つだけなら誰でもできますが、問題は何かあった時の対処です。

 

 

 ※そのような診療を行う病院や会社が全て、能書を無視したり、やりっぱなしだと言っているわけではありません。誤解無きようお願いします。これはあくまで私個人の愚痴です。

 

 それはそれは、ものすごい収益でしょう。短時間で目玉の飛び出るような収益を上げて消えていきます(おいしいとこだけを大量に持って行くのですから当然です)

 他県のペットショップやホームセンターにやってきて、チラシなどを使って集客し、短時間で、一番効率良く利益を上げていく……当然、近隣には動物病院が点在しています。獣医さんは優しいから、誰も喧嘩はしませんが、これがヤクザやさんの世界だったら戦争です(笑)

 実際、法的に訴えてもどうにもなりませんから、近隣の先生は泣き寝入りです。なので、やったもん勝ちなのです。

 

 ところがこれは飼い主さんからみたらありがたい事なのです。病院に行かなくても、長い時間待たなくても、全ての事がいっぺんに出来て、しかも料金が安い……私が普通の飼い主だったら行くかもしれません(;^_^

 

 たしかに……注射を打つだけ、予防薬を処方するだけなら誰にでもできます。それでも我々は万が一の事態に対処できるよう、知識と経験、そして設備を整えて日々の診療にあたっているのですがねえ……

 

 以前、そこで狂犬病予防接種後に体調を崩した犬が救急でやって来た事があります。飼い主さん曰く、ここで接種後、具合悪くなったらどうしたらいいか? と聞いたところ、近隣の先生には連絡している。と言われたとの事……聞いてねーよ!! いつやってるのかも知らねーし! 

 よくあるケースでは、狂犬病は? と聞くと、今年は集合でやりましたという答え。もしやと思い、登録は? と聞くと、登録ってなんですか? というお答え……やっぱり……それ、役所の集合注射じゃないですよ。

 てか、いーかげんにしろよ! と心の中で叫びましたが、飼い主さんに罪はありません。

 そういえばそんな事言っていたかも? という方もいましたので、全ての業者が登録の説明を怠っているとは思いませんが、その業者は少なくとも登録はしてくれません

 他人が打った予防接種の証明書をもって、別の病院が登録に行く事はできないので、そのような場所で接種した場合は、その証明書を持って、飼い主さん自らが、平日に役所に出向いて新規、もしくは継続の登録をする必要があります(1年毎の更新です) ちゃんと安い理由はあるのです。

 

 また別の飼い主さんは、いつもは検査してからじゃないとフィラリアの薬を貰えなかったのに、あそこは検査無しで貰えて、待ち時間もなく費用も安かったと……前の病院同様、おたくも検査するんですね! 検査は必要ないので薬だけ下さい! と言われた事もあります……

 おい!……だから、フィラリア薬は要指示薬なの! 能書に書いてあるんだって! 

検査してから処方しろよ!(ちなみに地域にもよりますが、私が開業している地域では未だにフィラリアの感染犬がいます) 我々は基本、能書通りに獣医療を行う義務があります。 どうしても能書通りに行えない場合に限り、その説明をしなければなりません。そして納得頂いてから能書外治療をします。

 まあね……フィラリア検査って面倒な割には利益が低いですからね……

 

  ※そのような行為を行う病院や会社が全て、能書を無視したり、やりっぱなしだと言っているわけではありません。誤解無きようお願いします。これはあくまで私個人の愚痴です。

 

 と、長々と書いてしまいましたが、私個人の意見としては、多くの開業の先生方が言われている程、彼等が酷い事をしているとは思いません。

 なぜなら、決めるのはあくまで飼い主さんです。そういった病院も、企業も、単にビジネスとして利益の多い方法を選択しているだけです。彼等が法を犯しているわけではありません。

 世の中は情報化社会です。情報を集め、自分が良いと思った方を選択すれば良いと思います。 

 

 私が書いているのはあくまで個人的な愚痴です。そう、彼等のおかげで私の病院は予防益が下がりました。愚痴ぐらい許してくださいね(;^_^

 

 

 最後に

 一旦臨床を離れたが、できる範囲で臨床獣医師としてまた働きたい。または開業やその他の理由で、一時的にまとまったお金が欲しい。など、いろいろな理由があると思いますが、そういった先生にとっては、予防の仕事は低リスク高リターンだと思います。  別に勧めはしませんが。

 でも、新卒の先生は……夢を追い、志をもって獣医師になったのではないですか? その仕事がやりたかったのですか? まあ大きなお世話ですね。

 

 それにしても大変な時代になったものです。昔は気心のしれた飼い主さんと世間話しながら診療したものですが、今は態度がでかい、とか、料金が高かったとか、いろいろネットで叩かれます……

 

 今だったら私は絶対開業なんてしませんね……獣医さんも飼い主さんも変わったのです……寂しい限りですが……

 

 ビジネスじゃ絶対に勝てない……

 

正直、早く辞めたいなぁ……そう思う今日この頃です。

 

 

 次回は何書こうかなぁ……獣医師会について? 訴えられたらヤだからやめとこう(;^_^A

 

 薬についてかいてみようかなあ~

 

 最後まで私のくだらない愚痴にお付き合いくださり、ありがとうございました。