開業獣医師Chamoの愚痴と本音

開業獣医師の愚痴と本音……その他いろいろ

副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)

  いろいろと忙しくて更新できていませんでした(;^_^A

 ブログを集客に使う先生方は頻繫に更新しているようですが、私はそんな気も体力もありません……

 それでも、時間がとれて気が向いたときにボチボチ書いていきますね。

 

 

  それでは表題から

 

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 新患でいらしたある飼い主さんの開口一番

 

ステロイドは使わないで下さい!」

 

「え?……まだ診てもいないんですけど……」

 

 実際にあったやり取りです(;^_^A

 

 

今回は、世の中で、人の医療でも獣医療でも悪の権化と化している薬剤。ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)について触れてみたいと思います。

 

 と言っても、副腎皮質ホルモン剤については医師、獣医師、薬剤師、はたまた一般のブロガーの方々が、事詳しく説明されている記事が、それはそれは数多く存在しているので、私は言及を避けます。

 

 てか、疾病の種類にもよるし、効能、使用方、副作用の出方や種類…そんなの個人差、個体差もあるし、時と場合によって変わるに決まってるじゃん!!  

 まず、そこのところをご理解下さい。

 

 特に、一般ブロガーの方が書いている記事の中には、極端なものがあります。そのような偏った方向からのみ考察した記事をうのみにしておられる方のいかに多い事か……

 まあ、医療側には責任は無い。とは言いませんがステロイド=悪者 という考え方が少なからず、一般の方が思っているイメージではないでしょうか。

 

 ステロイドは万能薬です。抗炎症、抗ショック、抗アレルギー etc・・・・・・

 

 因みに私は幼少の頃、酷い喘息に悩まされていました。この世にステロイド薬が無かったら死んでいたと思います。

 

 現在、私は個人的に自己免疫疾患の猫を飼っていますが、その仔もステロイドがなければ生きていけません。

 

 皮膚科領域でも使用されます。勿論、漫然と長期間の使用は、特殊な症例を除いて、避けるべきですが、用途用法によっては欠かせない薬剤です。

 

 特に獣医療においては安価であるという事も重要な要素になります。他の免疫抑制剤、例えばシクロスポリンなどに比べ、非常に安い薬価です。

 

 獣医皮膚科領域において、ステロイド以外の痒み止め、例えば抗ヒスタミン、抗アレルギー薬などは、ほとんど効果がありません。しかも高価です。それでも効けばラッキーというレベルです。

 

 飼い主さんとしては、何とか痒みを緩和してあげたい。でも、悪の権化であるステロイドは使いたくない。そこで我々はあまり効かないと分かっていても抗ヒスタミンや抗アレルギー薬を提案します。

 勿論、根治療法の為の検査やシャンプー療法、食事療法、生活習慣についても指導しますが、取りあえず痒みを抑えるための内服を処方します。

 

 しかしながら前述の通り、痒みに対してこの手の薬が劇的に効く症例は限られている為、次の手段として、ステロイドではない免疫抑制剤などを提案します。例えば、シクロスポリンやアポキルなどです。

 しかしながら、これらの薬剤は非常に高価な為、投薬をためらう飼い主さんが多くいます。

 そこで、結局、元の治療の繰り返しになるのですが、何が何でも、ステロイドは使わない方が良い!などと書いている無知な輩のおかげで、簡単に改善する疾病でも重篤になってしまうケースまで目につきます。

 

 人医療も獣医用も専門家の仕事です。基本的に我々は病気を治す。もしくは病気とうまく付き合う為に投薬や助言を行います。

 確かに、問題のある処方をされる先生がいるのかもしれません。ですが、基本的には副作用が多発するような処方は、特殊な疾患を除いて、医師なら、獣医師なら当然考えて処方するに決まっています。

 

 それでも、ステロイドに限らず、他の薬剤についても、ネットで調べた情報を元に、治療薬剤をオーナー側から提示される事があります。

 

 以前はそういった飼い主さんとも真摯に話し合い、時間をかけて納得頂いていましたが、正直バカバカしくなりました。

 なぜかって? その方にとっての正義はネットであり、目の前の獣医師の言葉ではないからです。

 

 勿論、ネットには私達がしらない情報もあるし、その中には役に立つことも多く含まれています。かくいう私も、多くの専門知識をネットから得ています。

 しかしながら、間違った意見や事柄が発信されている事もご理解ください。

 

 特に、民間療法については、全ての人や動物に対して有効なわけではありません。私は、民間療法を否定しているわけではありません。何事もケースバイケースです。

 

 

 結論として

 ステロイドは身体の救世主。ただ、使い方によっては諸刃の剣となりますが、通常の使用でビクビクすることはありません。

 この薬で命を繋げている人や動物も大勢います。

 脱ステロイドは、特に獣医皮膚科領域にとっては課題ですが、ステロイドについて、宗教的なまでに否定的な記事は賛同できません。その記事を書いている人は臨床家ですか? その方が責任をとってくれるのですか?

 正しい情報を見極めて下さい。分らなければ専門家に聞いて下さい。切にお願いします。

 

 参考までに、人の癌代替え治療についての記事がありましたので貼っておきます。

wired.jp