眠る | プリムローズ咲く

プリムローズ咲く

日々の気づきや思いを書き留める備忘録

3歳のRちゃんが入園してすぐの頃、お母さんがこう言った。

 

「この子はお昼寝をしないんですよ。前の保育園では寝ないので、静かに遊ばせてもらっていたみたいです。プリムローズでもそうしてくださいね。」

 

「・・・」

 

「でもね、本当はお昼寝をして欲しいんです。夕方になったらキーキーして疲れているのがよくわかるから」

 

「うちの保育園では、寝ないで遊ばせるいうことはしてないんですよね。みんな、5歳の子も含めてお昼寝をする様に努めています」

 

「あらっ、その方がいいわ。でもRちゃんは寝ない様に頑張る子で、寝ることにファイトするんですよ。Good luck!」

 

あはは、幸運をと言われてもねえ。それはRちゃんのお昼寝に、それだけ手を焼いているということで、前の保育園の先生たちも早々に諦めたのではないかしら。

 

プリムローズ保育園では、ランチの時間から教室に暗幕の様な遮光性のあるカーテンを付けて、お昼寝モードにしている。子供達は光に敏感だから、部屋が暗いと落ち着いてくる。ランチの間も小声で話すことにしていて、その後のお手洗い、歯ブラシ、片付けの間、それからコットの上で絵本を読む間も、教室の中は薄暗い。でも誰も文句を言わないのは、そういうものだと思っているからだと思う。

 

全員コットに横になってブランケットに包まったら、ストーリーの時間だ。アメリカ人の先生がFor the children’s hour by Carolyn Bailey and Clara Lewis の中から、その季節に会ったお話を読んでくれる。同じお話を繰り返すこともあったり、子供たちが覚えてしまっているお話をリクエストすることもある。その時にはランタンのロウソクを灯すから、薄暗い教室にポッと小さな明かり。アメリカ人の先生の本を読むトーンも落ち着いていて、それが終わったら、この詩を読む。

 

The Golden Boat

 

Here is the boat, the golden boat

That sails on the silvery sea

And here are the oars of ivory white

That lift, and dip, lift and dip

Lift and dip

 

Here are the ten little fairy folk

Running along , runnning along

To take the oars of ivory shiete

To carry the boat, the golden boat

Across the silvery sea

 

Here is the moon so big and round

That shines on the boat

That is homeward bound

Back to the harbor safe and sound

From its sail on the silvery sea

 

この銀色の湖を金色の小舟で渡るというイメージは、お昼寝の時間のトーンを作る。この詩にある様に、起きているモードから寝るモードへ移っていくのは、櫂を漕いでゆっくりと渡ってゆくイメージだ。櫂を水に入れて櫂を漕いでというところは、特に読み上げた時の調子が耳に心地よい。そして湖を渡ったところにある眠りの意識へと入っていく。

 

お休みなさいと言った後は、必要なら子供の側に行ってマッサージをしてあげたり、トントンと背中を叩いてあげたりする。ペンタトニックのハープで、子守唄の様なメロディを奏でることもある。

 

これは毎日のルティーンで、保育園が開いている限り変わることはない。いつも同じ、子供はこの変わらない日常が好き。ほとんどの子は寝るんだなということが分かっていて、初めのうちはガソゴソしていても、だんだんと落ち着いてきて寝始める。眠らない子はコットの上で体と心を休める様に促す。

 

さて、Rちゃん。私は絶対に寝ないわよとばかりにコットの上で動く。コットの横にブランケットをひいて、その上で蹲ったり、トイレに行きたいと言ってみたり、おもちゃを持ってきて遊んでみたり。確かにお昼寝とファイトしている。

 

はいはい・・あまり相手にしないことが大事ね。

 

Rちゃんは叱ってねとばかりにあれこれと注意をひいていたけど、先生たちが取り合ってっくれないことに気が付いたのか、それとももう飽きたのか、それとも頭の中は起きるモードでも体は寝るモードに入りつつあったのか、コトリと寝てしまった。その間約30分。注意を引くためのRちゃんのイタヅラを無視出来たという、先生たちの我慢勝ちだった。

 

Rちゃんは毎日寝るということはないけれど、寝る時もある。お昼寝が出来た後は、とてもすっきりとした笑顔になって、楽しそうに遊んでいる。

 

詩にある様に、妖精たちが運んだ金色の小舟に乗って眠りの国へ行ったRちゃんは、そこで天使と交流してから、起きている意識に戻ってくるんだろうな。そこでは、Rちゃんを守ってくれている天使たちと遊んで楽しいんだろうな。


Rちゃんが毎日眠ります様に。