地方移転税制が進まない理由、まずは省庁移転からでは?

地方移転税制とは

 

東京に本社が集まり過ぎているのを防ぐため、地方創生に関する対策として、地方拠点強化税制というものが2015年からスタートした。具体的には、本社機能の移転や拡充を行うと、税制面での優遇が受けられるというものだ。

 

 

地方移転税制の条件は

 

条件①:移転先の都道府県の地域再生計画にあっているかどうか

(→地域再生計画とは、地域が地方創生交付金などの支援措置で地域経済の活性化などを行うこと。自治体が計画を策定する。例えば、本社機能の新増設などがある)

 

条件②:本社機能(総務、人事、経理グループ、研究開発、国際関連部署など)で従業員が10人(中小企業においては5人)以上増加すること

 

税制面でどんな優遇があるのか

 

メリット①:本社機能の新設or増設での地方での建物などの購入による特別償却or税額控除

メリット②:本社機能で新たに雇い入れる従業員に関わる税額控除

メリット③:中小企業基盤整備機構(いわゆる中小機構)が資金調達時に債務保証を行ってくれる(審査あり)

メリット④:地方税の不均一課税に対応するため、事業税、固定資産税などについて軽減措置が行われる

 

支援対象外の地域は

 

近畿圏/中部圏/首都圏の地域(詳細はこちらより確認可能)

 


 

わずか企業の利用が3年間で74件しかなかった理由

この地方移転税制は、簡単に言えば、税金を安くするから、地方に本社移転してください。というものだ。この税金がどれだけ安くなるか?という事が焦点になってくると思う。

各メリットに対して突っ込んでいこう。

 

メリット①:本社機能の新設or増設での地方での建物などの購入による特別償却or税額控除

 

→本社機能の新設に関わる税金はなくなるものの、新設する時の費用は掛かってくる

 

メリット②:本社機能で新たに雇い入れる従業員に関わる税額控除

 

→税額控除は有難い、ただ中小企業で“本社機能としての人財”を5人以上地方から集めるのって難しいし、雇用も大変だよ

 

メリット③:中小企業基盤整備機構(いわゆる中小機構)が資金調達時に債務保証を行ってくれる(審査あり)

 

→審査あるから、例え移転税制で許可が下りたとしても、債務保証をしてくれない場合もあるよね。それ、リスクになってしまう。

 

メリット④:地方税の不均一課税に対応するため、事業税、固定資産税などについて軽減措置が行われる

 

→調べればわかりそうだが、もっと簡単に一覧でA県ならどれだけ軽減措置が行われるか知りたい。PRしてほしい。

 

一度は、移転しようと考えた企業も、間違いなく移転コストを考えたときに

 

移転する前<移転後

 

となってしまい、計画がとん挫したことは間違いない。今回採択された74件の場合についても、

 

東京の高い家賃VS移転後の交通費・整備費+直接営業での不利な側面

 

どちらが安いか天秤にかけて、それでも高い家賃を払うよりも、出た方がメリットがあると考えたところばかりだろう。


 

東京一極集中を是正するためにはまず、各省庁移転からではないか?

地方移転税制の説明イメージ東京

よく降っては湧く、各省庁の移転問題。今では7つ(文化庁・消費者庁・総務省(統計局)・特許庁・中小企業庁・観光庁・気象庁)が移転対象として徐々に移転している現状だ。色々な圧力がありながらも、移転を行ってきたと思う。しかし企業も同じ状態ではなかろうか?徐々に本社移転をするのは出来るかもしれないが、いきなり地方で10名、5名採用というのはハードルが高い

仮に省庁本体が移転すれば、そのインパクトは大きい。省庁の仕事を請け負っている関連会社は、営業も含めてこぞって移動するに違いない。対面できないと、中々この辺りの仕事は進みづらいのも本音だ。ウェブ会議で各省庁からすんなりと仕事が獲れるとも思えない。

 

まず、各省庁移転後に、さらに輪をかけて地方移転税制の優遇施策か条件緩和を行っていけば、徐々に地方への期待も募っていくのではなかろうか。