財務相も360度評価 2019年から導入(日経新聞)不正の改善は進むのか?
私が考える、新しい日本的経営の土台は「貢献主義と自立」にあります。
そして、貢献主義の企業の必須条件の一つとして、360度評価を考えています。
パワハラなど、エゴによる権力を牽制するためには必要な制度だと思っています。
先日の日経新聞に「財務相も360度評価を取り入れる」という記事が掲載されました。
今日はこの記事について掘り下げてみます。
日経の記事はこちらです(有料会員以外は一部のみ)
ーー目次ーー
- 1 記事の内容は? 発端、経緯、目的
- 2 この記事を読んで思うこと 〜 日本らしさ
- 3 変えていくべきところが見えてくるが、根深い問題を含んでいる
- 4 既得権にも配慮が必要
- ーーー追記(2018.10.24)組織風土と人事政策についてーーー
1 記事の内容は? 発端、経緯、目的
日経新聞によりますと、今回の改革の発端を次のように記載しています。
- 「森友学園」への国有地売却を巡る決済文書の改ざん問題を受け、再発防止に向けた改革が必要である
財務相では、この問題が起こった原因を次のように捉え反省しています。
- 上意下達(じょういかたつ)とされてきた風土が不祥事に繋がった
この改革の目的
- 法令遵守を徹底する組織に立て直す
そして、目的を達成する方法として導入する仕組みが次の2点です。
- 360度評価
- 内部通報制度
次のような効果があると考えているようです。
- 部下の目が上司へのけん制になる緊張感がハラスメントをなくす一助になり得る(同省幹部)
その他の情報
- 外務省や経済産業省などでは導入済み
- 19年度中の本格運用をめざす
- 地方組織にも適用する
- 内部通報した職員がその後に不利益を被らないしくみを整備する
目の保養にどうぞ
2 この記事を読んで思うこと 〜 日本らしさ
表面化した問題はコンプライアンス違反ということです。
コンプライアンスの問題は、決して人ごとではありません。
組織の問題と日本人の気質は、国内全ての組織に共通です。
もちろん、業界によって、独特の考え方や仕事の進め方がありますから、その点は、部外者には理解しにくところがあります。
それを差し引いても、共通なところがあるように思います。
この記事を読んで思ったことは・・・・
今回は改善計画の発表だけで
「なぜ、改ざんを指示するようなことが行われたのか?」
根本的な原因については、触れていない。
(表面化した問題の再発防止策だから、しょうがいないのかもしれないけれど)
「今後はこのようなことがないようにする」
という決心はしたようだけど、ちょっとうがった考えが浮かんでしまう。
- これは本気でやるつもりなのだろうか?建前なのかもしれない
- 巧妙に抜け道を考えているのではないだろうか?
- 目先を変えて、ごまかしていないだろうか?
- 現状起こっているコンプライアンス違反はないのか、ちゃんと調査したのか?
多分、同じように思った方も多いと思います。
日本人の組織の特徴を知っていて、自分自身日本人の気質をもっているので、ついつい、うがってしまうのだと思います。
(1)責任の所在をはっきりさせない
- 日本人は良くも悪くも、個人責任にしない傾向がある
- 合議制で決断をするから連帯責任という風土がある
- 社会的制裁が加われば、それ以上は気の毒だ
- 自分も同じようなことをしてきているので、責任をはっきりさせたら、自分にも飛び火する(組織ぐるみ)
- トカゲの尻尾のように誰かに責任を負わせるケースもある
- 各個人は、組織全体を守るという気持ちがある、組織に愛着を持っている
トカゲの尻尾のように特定の誰かを犠牲にするよりは、あやふやにして全体責任にしたほうが全員の利益になるという、連帯意識があるようです。
(2)制度を変えても、風土は変わらない
- 過去に不祥事を起こした隠蔽体質の企業の多くは、結果として、同じことを繰り返す傾向にある
- ルールを作っても、なかなか考え方が変わらない
- 記者会見は表向きの話であって、本当のところは表に出てこない
こんなところでしょうか。
もちろん、不正はどこの国でも発生します。
それぞれの、背景があると思います。
もちろん
長期的に見れば、不正は露見するわけですから、不正は良い選択肢ではありません。
しかし、
- 短期的に、その方が良いと思ってしまう
- このまま露見せずに過ぎていくと確信している
- 隠蔽する管理能力がある
と、思ってしまうところがあるのかもしれません。
不正はやめるべきだと思ってる人も多いはずだけど
自制機能が働らかない、見て見ぬ振りをする
理由があるわけで、ここを変えていく必要があります。
大企業では、隠蔽情報を上層部だけで把握し、歴代社長が先送りなどという事例もあります。
公表するタイミングを逸するとますます難しくなりますね。
やはり、初期消火が大事なわけです。
3 変えていくべきところが見えてくるが、根深い問題を含んでいる
不正や隠蔽体質は、短期的には「その組織の利益」そして「自分自身の利益」と思っているでしょう。
そして、その分の不利益を外部のステークホルダーに負担させているというわけです。
最終的には、発覚して穴埋めしたり、損害賠償を請求されることになるわけですから、結局、その組織の不利益になります。
さらに、その組織で真面目に働いている人の名誉も傷つきます。
不正まで行かなくても、良心を痛めるような仕事をしている企業もあるかもしれません。
不正の背景は、組織としての損得、個人としての損得、ここから発生します。
このブログのテーマである「エゴと依存」が大きく関与しているわけです。
このような不正の背景として考えられることを列記します。
- 組織人として、組織の損得=個人の損得であると考える
- 出世するため(自分の地位や所得のため)に、自分に最善の選択をする
- 組織全体の風土には、従わなければならない
- 不正が明るみになればいろいろな人が困る、組織を裏切るような気がする
- 組織を離れたら、自分の立場(サラリー、地位、社会的立場)が悪くなるので、j不正を断れない
- 組織は、組織の利益のために存在するという考えがある
自分が良ければ他人が困っても平気だと思い、積極的に自己利益を追求する人もいます。
一方で
自分の立場や職位・地位を守りたいという保身、つまり消極的な自己利益を求める人もいます。
これらは、タイプは違いますが、どちらもエゴだと思います。
同じエゴでも
消極的なエゴの人は、もともとはそれほど悪い人ではないと思うのです。
家族のため、組織のため、つまり、共感力のある人で、本来は善良な人だと思います。
善良な人を操るために、依存を利用するのです。
(露骨な恐喝をしなくてもコントロールできるのです)
日本は、転職が厳しい社会です。
(これからは、改善されると思いますが)
実際に、会社にNOと言って辞めた人は、精神的には楽になるかもしれませんが、経済的には厳しくなるケースがあるわけです。
そこが、付け入るポイントになっています。
ブラック企業にとっては、転職しにくい世の中のほうがメリットがあるとも言えます。
- 会社をクビになったら、家族が路頭に迷う
- 家のローンがあるから、辞めるわけにはいかない
- 会社をすぐに辞めるなんて、不真面目だ。忍耐力がない
こんな風に思う人は多いようです。
このような背景を、一個人が変えていくことは難しいのですが、少しずつ変えていく方法はあります。
私も、今、その方法を体系化しています。
このブログのタイトルのように、まず、百万人から、というわけです。
それぞれが、考えてみるもの楽しいと思います。
みなさんは、どう思いますか?
創造力がかき立てられるのではありませんか?
新しい価値観で、仕事を進め、20世紀の製造業のように世界から注目を浴びる企業が出てきて欲しいのです。
マスメディアは既得権の大きな組織ですから、世界的に注目を浴びるまでは、積極的に報道することは、ありえません。
世界が注目しても、報道しない可能性も高いです。
しかし、出版業界は対応するでしょうし、インターネットもあります。
話を戻します・・・
ちょっと困難な道のりですが、新しい日本の経営スタイルとして成果を出せば、世界から注目されるでしょう。
そうなって初めて、国内に広まるものと思います。
(おまけ)
貢献と自立をベースにした組織が、官公庁から始まるというのは、難しいと思っています。
(日本一優秀な人がいるわけだから、素晴らしい組織の運営システムを作って、自ら率先し、さらに民間にも広めるという方法もあるとは思うのですが・・・)
保守的なメンバー、長期在職者による管理体制など、ハードルが高いからです。
ある意味、法律に守られて、ある意味、法律に縛られています。
日本の中で、もっとも既得権が強い組織でもあります。
また、部門を超えた業務はできにくい仕組みになっていて、若い人の新しいアイディアが全体に広がることはないでしょう。
ある意味、視野を広く持たせないように仕向けているのかもしれません。
(これは、ある友人の解釈なんですが・・ちょっとうがってますね)
財務相の改革は、うまくいくでしょうか?
若くて優秀な官僚であれば、転職もできるはずですから、内部告発したり、新しい組織を提案したりできるのかもしれません。
そんな官僚の活躍を期待したいです。
4 既得権にも配慮が必要
私が理想だと考えている貢献と自立をベースにした経営では、エゴと依存を完全に排除するという攻撃的なものではありません。
できれば、既得権とは言わないまでも、過去の貢献にもある程度、報いるべきだと思います。
極端に排除するという考えは、これもまたエゴですから。
まだまだ、書きたいところですが
今日はこの辺で☆
この「既得権にも配慮」は次の記事で書きます。
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ーーー追記(2018.10.24)組織風土と人事政策についてーーー
一般的な話です。主に企業の話です。
人事関連の施策では、制度を変えても成果がでないことが多いです。
その理由は、今まで風土を変えることが難しいからです。
風土は組織内の各個人の判断基準となるものです。
今まで培ってきた習慣そのものでもあります。
やって、成果を出すには、トップが腰を据えてやらなければなりません。
そういう意味では、
- トップに強い変革に意志がある
- 長期政権で粘り強く改革を進めることができる
この二つの条件を整えないと、実現は難しいです。
(変革の強い意志)
少し時間が過ぎれば、利益目標に目線を向けてしまうものです。
そうすれば、現場も元に戻ってしまいます。
(長期政権)
仕事の進め方は、簡単にはできません。
社長が2年ごとに変わっていくのであれば、そもそも、責任の所在もうやむやになってしまいます。
うやむやになれば、やはり、元に戻ってしまいます。
さらに、2つの人事上の政策が必要です。
- 新しい人事施策を実施しないと評価されない
- 既存の上層部にも適用し、今後、違反すれば降格要件にする
不正があった企業が、再発防止策を発表しても、また不正を起こすことがあります。
これは、判断基準が変わっていないためです。
つまり、風土が変わっていないためです。
風土・習慣を変えるには、トップの意欲と時間、人事評価の見直しが必要となります。