第105話 『セレバンダー』 (Bパート)

 

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≪秋風≫ブリッジで、簡単な祝杯を挙げ、
ほっと一息して、ムーンベース艦隊が護衛を解き、
再び、少数の戦力を残して、月へ戻ります。
 
USTは護衛もかねて、念のためしばらく同行。
アーク2号を係留して、ステーションに乗り移ります。
 
が、一安心も、つかの間、
しばらくすると、次々に不具合が発見されます。
 
来津浩彦(SSS1技術員)
「部長、
 西側、A5区画から、第3区画まで、
 集光率、変換率、出力が上がりません。」
 
蔦田昭夫(SSS1技術部長)
「521Aもだ。下がってるじゃないか?」
 
引見忠保(SSS1総責任者)
「どう言う事だね?
 怪獣に襲われた時に、損傷したか?」
 
蔦田昭夫(SSS1技術部長)
「わかりません。
 が…
 
 いえ、システムは生きてます。
 おかしい。」
 
ナワテ
「壊されてはいなくても、怪獣の破片か死骸が、
 まだ、引っかかってるのかも、知れません。
 
 場所を教えて下さい。外から見てみます。」
 


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最初は、先の怪獣に襲われたための、
何らかの影響… と、思われていましたが、
やがて、外のパネル部分に、
妙な腐食跡のような物を、発見します。
 
これも、
「怪獣を倒した時に、体液・体組織が付着して、
 パネルに影響を、与えているのだろう。」
と、
考えた物の、
その腐食部分が、徐々に大きくなって行きました。
 
ナワテ
「これは… 何なんだ?
 
 さっきのやつの、体組織じゃないのか?」
 
電送写真と、データーを解析したB班は、
先の怪獣とは、また別な物と結論付けました。
 
ユウキ
『先の怪獣に、付着か寄生、または共生していた、
 別種の宇宙生物と、考えられます。
 
 地球上で言うなら、植物や菌類、
 付着性刺胞動物などに、似ていますが、
 未知の部分が多く、危険性も不明です。
 
 排除出来るなら、排除して下さい。』
 
UST、そしてステーション職員も、
最初は手作業で、排除しようとしましたが、
根を張ったように、くっついていて、
中々うまく、行きませんでした。
 
やがてそれは、徐々に増殖し、
表面上を覆って、増えて行きました。
 
が、怪生物は、ステーションの外壁や、
パネルに沿って伸び、増えて行くので、
武器を使う事も、ためらわれました。
ステーション自体を、傷つけてしまうからです。
 
ついに人の身長を、超える高さになってしまった時、
ステーションに、当たらないように、
リモートレーザーで、攻撃をしてみます。
 
ところがこの怪生物は、命中した部位だけ飛び散っても、
飛び散った破片が舞い降りると、再び付着し、
そこからまた、増殖していきます。
 
レーザーや電撃系の武器では、ダメージを与える以上に、
飛び散って増殖を、助けるような物でした。
 
とは言え、熱線銃の類には強いらしく、
ほとんど効果がありません。
 
ゴウリ
「駄目だ、熱線ではむしろ、
 エネルギーを吸収している、ようにすら見える。」
 
ナワテ
「思えば、
 太陽光ステーションを、狙って来たのだから、
 熱や光には、強いのかも知れません。」
 
ゴウリ
「じゃあ、冷凍弾はどうだ?」
 
考え込むナワテ。
 
ナワテ
「いえ… ここは地上じゃない。
 宇宙空間です。
 
 周りは、マイナス270度で、
 そこで生きてる、生物なんですよ。
 
 単純な冷凍攻撃では、多分…」
 
ユリコ
「水は?」
 
ナワテ
「水?」
 
ユリコ
「水でとり込んで、凍らせられれば、
 動きを止めて、排除出来るのでは?」
 
ナワテ
「そうか!」
 
これは、良いアイディアに思われましたが、
ステーション側の準備が、出来ませんでした。
 
蔦田昭夫(SSS1技術部長)
「申し訳ありません。
 水を爆弾のように使う事は、想定してなかったので。
 
 水は、
 飲料水の他は生活用水、一部冷却水程度です。」
 
そうしている間にも、怪生物~セレバンダーは増殖し、
小ぶりの怪獣サイズにまで、なってしまいました。
触手の様な器官を、動かし、延ばし、
さらに触れた先で、根を張るように増えていきます。
 
ゴウリ
「こ、これは、仮に、
 上の方を、吹っ飛ばしたとしても。」
 
クロス
「根絶出来ずに、下が残る限り、
 またいくらでも、再生されますね。」
 
ユルガ
『外の4人、一度戻れ。
 事情を聞いて、今、ステーションで話し合った。
 
 怪物に取り付かれている部分を、放棄する。』
 

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怪物に侵食されている区画が、18%にまで達し、
完全排除は、現状では不可能と判断。
 
背に腹は変えられず、汚染区画を切り離して、
そのまま、投棄する事になります。
 
外に出て、排除作業に当たっていた、UST4人と、
他の技術者・ステーション職員を、中央ブロックに集め、
西側エリア、パネル部を中心にした、
ステーションの21%のブロックが、切り離され、
ゆっくりと、離れて行きました。
 
ところが、
これで終わったと思って、作業に戻ると、
再び、切断区画を中心に、
出力の低下が、見られたのです。
 
蔦田昭夫(SSS1技術部長)
「どう言う事だ?
 付着した怪物が、まだ残っていたのか?」
 
来津浩彦(SSS1技術員)
「そんな事は… 無いはずですが。
 
 細菌の動きは速くはないし、確認はしてましたし。
 切り離しブロックも、余裕を持ったはずです。」
 
ナワテ
「いや、まだいるぞ!」
 
と、
外のモニターをチェックしていた、ナワテが、
緊張した声を、張り上げます。
 
確かに、切り離した境界部や南側パネルにも、
細菌状の付着が確認出来、再び大きくなっていました。
 
ユリコ
「ナワテ隊員! あれ!」
 
と、ユリコ隊員の操作する、モニターを見ると、
切り離されて、離れていくパネル部分の一部で、
何かが、破裂しています。
 
拡大すると、怪物の成長部分先端から、
花の種のように、小爆発が起こり、
タンポポの綿毛のように、細菌の一部が放出され、
ステーションに向かって、浮遊して来ていました。
 
ナワテ
「な、なんて、やつだ!?」
 
ユルガ
「まずいぞ、切り離しは確実だが、
 最後の手だと、思っていたのに。」
 
しばらく沈黙ののち、話し合われますが、
やはり、ステーション自体を放棄して、
脱出するしかないとの、結論になります。
 
ナワテ
「残念です。
 あと、もう少し、時間があれば、
 きっと弱点も、見つけられたでしょうに。」
 
が、その間にも怪物=セレバンダーは、
太陽光パネル部を侵食して、加速度的に増え、
大木の集合体レベルの、巨大な怪物になって行きました。

 
一度大きくなると、先端の無数の触手が動き回り、
さらにステーションの表面や、接合部にもぐりこみ、
一部は中にまで、入りかけていました。
 
引見司令が、全館にアナウンスし、
全職員は中央下部の、メインポートに集合し、
脱出艇で、逃れる事になります。
 
サイレンと赤ランプが点滅し、脱出命令が繰り返されます。
が、その頃になると、
触手の先端の一部は、ステーションの中に入り込み、
故障や不具合、爆発が生じていました。
 
ステーション下部の、脱出ポートに急ぎ、
次々に、逃げてくる職員。
手分けして脱出を促し、護衛するUST。
 
が、脱出ポートに来ると、
セレバンダーの触手が、先回りしており、
脱出艇は破壊、侵食されていました。
 
やむを得ず、脱出艇ごと攻撃して、
ポートの触手は、一時的に撃退する物の、
脱出手段は、失われてしまいます。
 
やむを得ず、脱出ポートを遮断し、
一つ手前のブロックに、集合する全員。
 
ユルガ
「他に全員が脱出出来る方法は、ありませんか?」
 
引見忠保(SSS1総責任者)
「あとは…
 このブロック自体を、閉鎖して切り離すしか。
 
 あ!?」
 
ゴウリ
「どうしました?」
 
引見忠保(SSS1総責任者)
「サブ動力室に、まだ2名残っています。
 
 今、ライフ・ランプの点滅に気がついて。
 16区の27回廊。」
 
ナワテ
「なんだって! こんな時に!」
 
引見忠保(SSS1総責任者)
「しかし、連絡が出来ない。
 これは生命状態と、ポジション・シグナルを、
 モニターするだけだ。
 
 動いていないし、呼吸も心拍数も平静過ぎる。
 たぶん、気絶してるんだと思う。」
 
ゴウリ
「よし!俺が迎えに行く!」
 
しかしその後、ブロックを切り離しをチェックすると、
この場の機器は損傷していて、作動しない事がわかります。
 
蔦田昭夫(SSS1技術部長)
「あとは… 出来るとすれば、
 中央制御室からの操作で、切り離すしかないが。
 
 怪物のいる方に、戻る事になります。」
 
クロス
「ぼくが行きます。
 
 ゴウリ隊員達を待つ間に、中央制御室に行き、
 タイマーで切り離しを、やりましょう。」
 
ユリコ
「危険だし、もし行けても、
 クロスさん自身は、戻るのに間に合うの?」
 
クロス
「ぼくなら最悪、制御室から直接飛び出します。
 USTスーツは、宇宙服になる。
 
 怪物の向こうには、ムーンベース艦がいるから、
 怪物に襲われる前に、回収してくれれば良い。
 
 でも、このまま、ここにいても、
 脱出出来なければ、全員助かりません。」
 
ユリコ
「それは… そうね。
 
 わかったわ。」
 
蔦田昭夫(SSS1技術部長)
「非常用と書かれた、盤を開ければ、
 あとは、ブロック切断のスイッチは、
 分かるはずです。」
 
クロス
「ありがとう!」
 
と言う声を後ろに、駆け出すクロス。
 

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セレバンダーを撃退しながら、中央制御室に飛び込むクロス。
 
非常用制御盤を見つけ、ブロック切り離しの、
タイマーをセットします。
 
クロス
「今、ゴウリ隊員達が、戻れているかがわからない。
 
 その意味では、長めにしたほうが安心だが、
 あまり時間をかけすぎて、襲われても困る。
 よし…」
 
と、
タイマーを10分にセットし、リモートレーザーを戻します。
 
クロス
「タイマーをセットしても、ここがやられて、
 駄目になったら、意味が無い。
 
 あと10分は、守り切る。」
 
ウルトラホープを出し、変身するクロス。
光と共に現れる、等身大のゾフィ。

 

 
徐々に制御室に進入する、セレバンダーの触手を、
スラッシュショット、サブグレイダー、
M87光線で、撃退して行きます。
 
制御盤に迫る、セレバンダーに向かい、
ウルトラバリアを作って、そのまま飛ばすと、
機器は素通りして、セレバンダーのみが、
押し戻されていきます。
 
やがて守り切り、ブロックが切り離されたのを知ると、
ゾフィは外に出て巨大化し、SSS1を虚空へと押します。

 
そのままSSS1は、宇宙の彼方へ、
どこまでも、流れて行きました。
 

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クロスが、ムーンベースの巡洋艦に救助されると、
その後、アーク2号に移動して、
地上に残ったヒデコ隊員を除く、USTの5名が再会します。
 
それから、SSS1の職員・作業員は、
ムーンベースの、シャトルで、
地球まで送られる事に、なりました。
 
一足先に戻る事になった、UST~アーク2号。
 
ユルガ
「大変な結果に、なってしまいましたが、
 全員無事だったのが、不幸中の幸いです。」
 
モニター越しに、今は一息ついている引見司令。
 
引見忠保(SSS1総責任者)
『いや、しかしね、
 技術的には、成功してたんだよ。
 
 システムも順調。
 実際には、ぶっつけ本番と思っていた、
 集光効率や、ダメージ・コントロールも、
 想像以上にうまくいってた。
 
 唯一のイレギュラーが、怪獣の襲来だった。
 それ以外は、うまくいってたんだ。』
 
蔦田昭夫(SSS1技術部長)
『同感です。
 太陽光集光システムが、ああ言う形で、
 未知の怪物を引き寄せるとは、思わなかった。
 
 でも、今回、それを学べました。
 
 次は、その課題を、クリア出来れば、
 また一歩、実用化に近づきます。』
 
少し驚いた表情の、ユルガ隊長。
 
ユルガ
「あれだけ恐ろしい、思いをしたってのに。
 科学者ってのは、めげないものだな…!?」
 
ナワテ
「科学者がみんな、ああじゃありませんよ!
 あれは引見チームの、性格ですよ!」
 
ユルガ
「そ、そうか。」
 
まだムーンベースに残る、引見チームを後にして、
一足早く、アーク2号が、
噴射炎を上げて、ムーンベースを飛び立ちます。
 
太陽、そして広がる宇宙空間を背景に、
地球に向かって、アーク2号が飛んでいきます。
 

【第105話・終わり】

 
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