第329話 『メカニクナス』 (Bパート)

 

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【夜 アーク3号内】
 
全員でミーティングの時、クロスがこの疑問を投げかけます。
 
ゴウリ
「あれじゃないか?
 
 とりあえず、ラーターにカモフラージュした探知機と、
 見破ったんで、奪ったんだけど、
 クロスが戻って来たので、まずいと思い、
 トイレにいる間に、元に戻したとか?」
 
ナワテ
「宇宙人が、そんな、
 行き当たりばったりな事、しますかね?
 ガバガバじゃないですか?」
 
シズカ
「いや、しかし…
 
 まだ、防衛機構が調査に来るとは、
 思っていなかったと、すれば、
 計画だった対応で、無かった可能性はある。
 が…
 
 受付嬢が、もしもシロなら、
 どうやって宇宙人は、気付かれずに入り、
 取ったり戻したりの、行動が出来たのか?」
 
アカイ
「待合室と受付の構造は、どうなっていたんだ?」
 
ユリコ
「入って、正面が待合室。
 
 左脇が受付の、カウンターになっていて、
 誰かが入るなり出る時に、チャイムが鳴り、
 その時に奥から、受付の人が出て来て、
 カウンターに立って、対応してました。」
 
アカイ
「すると、チャイムが鳴らなければ、
 気付かれずに待合室に、出入りする事自体は、
 出来るわけなのか…」
 
ヒデコ
「その、最後に待合室にいた女性が、
 何か絡んでる、可能性は?」
 
クロス
「それはぼくも一瞬、考えたんだけど。
 
 受付嬢同様、普通の人間のようだった。
 撮影した映像の、拡大を見る限り、
 通院も、まだ2回目で、
 事件に関わっていたとは、考えにくい。」
 
結局、この夜には、結論が出ませんでした。
 
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ところが翌日、出かける前に、
新聞と地元紙を、チェックしていたクロスは、
あっと、小声を上げます。
 
ユリコ
「どうしたの? クロスさん?」
 
クロス
「これ…
 昨日の人だ。」
 
と、見ると
『鞘稲手市(さやいなでし)で、また犠牲者。
 右圭 るいさん (18)』
と言う見出しと、顔写真が載っています。
 
クロス
「間違いない。覚えている。
 
 あの人は宇宙人や、手先なんかじゃない。
 犠牲者のほう、だったのか。クソッ。」
 
悔しそうなクロスですが、新聞を握りしめると考え始めます。
 
クロス
「受付嬢も、外来者も人間だった…。

 
 そして、レーダー上では、

 移動していないはずの、探知機の位置が、
 一時的に、待合室で消えて、また戻る。
 
 もしかしたら…!?」
 
ユリコ
「何か、わかったの?」
 
クロス
「シズカ班長と、アカイさんだ!
 もう一度、湖畔総合病院へ行こう!」
 
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【湖畔精神総合病院(こはんせいしんそうごうびょういん) 手前】
 
病院の裏側の細い道に、≪アスベライク≫で乗り付けた、
ユリコ、シズカ、アカイ、クロスの4人。
シズカとアカイが、次々に調査機を出すと、
ケーブルをつないで、セットして行きます。
 
スイッチを入れると、スクリーンに映像や数値等の、
解析結果が、表示されていきますが…。
 
アカイ
「地中探知レーダー… 不明だ。おかしい?」
 
シズカ
「質量捜査機、サーモ、電探類も反応しない。
 どう言う事だ???
 
 機器は正常。結果だけ出ない。
 こりゃ…
 
 ネガティブエリアを、3次元表記出来るか?」
 
アカイ
「今、やっています。出ます。」
 
病院の地下、数十メートルより深い部分は、
100メートル四方が、解析不能エリアになっていました。
 
アカイ
「何なのかはわからんが、故意のジャミングで、
 自然の産物で無いのは、間違いない。
 
 こんなもんが、あると言う事は…」
 
クロス
「病院の地下が、宇宙人に要塞化されている。
 と、考えるしかない。」
 
ユリコ
「じゃあ、ライターが無くなったり、出たのは?」
 
クロス
「ライターは“東西南北方向”には、動いていなかった。
 
 おそらく、何らかの仕掛けで、
 待合室自体が、地下に移動していたんだ。
 
 上の病院は、何も知らない病院の人達で運営され、
 だから調べられても、決してボロは出なかった。
 
 何らかの目的で、犠牲者を獲得する時だけ、
 待合室を、地下に移動させて、
 上とソックリ同じ、宇宙人の病室に、
 招き入れて、処置してたんだろう。
 
 だから病院の人も、犠牲者も気がつかなかった。」
 
ユリコ
「そうとわかれば、突入しましょう!
 このままなら、また犠牲者が出るわ!」
 
クロス
「もちろんだ!」
 
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【湖畔精神総合病院(こはんせいしんそうごうびょういん) 裏】
 
病院から、少し離れた造成地に着陸する、アーク3号。
コンテナが開くと地底戦車≪エルグランザー≫が、出て来ます。
 
そのまま、地中に潜って行く≪エルグランザー≫。
 
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【≪エルグランザー≫ コクピット】
 
ユリコ
「そのまま、真っ直ぐです。
 100メートル以上、地下だわ。」
 

ゴウリ

「よし、このまま突っ込むぞ。」

 
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不透視エリアらしい、金網状の壁を突き破ると、
地下の空洞と、要塞のような建物が発見出来ます。
 
要塞上部は、数本のエレベーターらしきチューブが伸び、
病院以外にも、何箇所かの地上と、
繋がっているらしい事が、想像出来ます。
 
ゴウリ
「じゃあ、打ち合わせ通りに、
 ナワテは留守番で、残り3名で潜入。
 
 一応、交渉の可能性も、ゼロでは無いが、
 やってる事を見れば、即戦闘の可能性が甚大だ。
 油断するなよ!」
 
ユリコ、クロス
「了解!」
 
と、要塞の中へ進入すると、程なくして、
警備ロボットのような機械が、襲って来ます。
 
が、大した戦闘力では無いようで、
3人は倒しながら、要塞深部へ。
 
司令室らしき部屋に、一人の宇宙人、
ゾーレトーレルは、いました。
 
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【要塞 司令室】
 
銃を構えて、3人が星人に向き合います。

 

 
クロス
「勝手に地球に侵入して、何をしている?
 地球人を自殺させて、何かの実験か?
 
 どちらにせよ、許される事ではない。
 もう、大人しく、降伏したまえ。」
 
ゾーレトーレル
「勝手?
 
 地球人には、そんな事を言う、
 資格も権利も無い。」
 
クロス
「どう言う事だ?
 同じ宇宙人、人間同士で、
 ここは我々、地球人の星だ。
 
 あらゆる法も権限も、まず我々にある。」
 
ゾーレトーレル
「無い。
 
 それは、対等の権利を有する、
 人間同士での、話だ。
 君らは、そうではない。」
 
狐につつまれたように、顔を見合わせる3人。
 
ゴウリ
「何を言ってるんだ!?
 姿形は違っても、この通りお互い、
 知性体同士、宇宙人と言う人間同士だろう?」
 
ゾーレトーレル
「違う。
 君達は、真の人間ではない。
 真の人間は、純粋な精神が物体に宿っている物だ。
 
 だが、君達を調べたところ、
 精神活動は、脳内で電気信号を介している。
 これは我々にとっては、機械により近い生命体だ。」
 
ゴウリ
「じょ、冗談言うな!
 それじゃ、俺達は機械だって言うのか!?」
 
ゾーレトーレル
「そうではない。
 
 機械なら純粋に、プログラミングの範囲の行動を取る。
 イレギュラーやアクシデントも、想定の範囲で起こる。

 むしろ、信頼出来る道具だ。

 
 しかし君達は、それとも違う。
 
 おそらく本来なら、進化の過程で、
 真に人間に、なるはずのところを、
 人間の手前の、不完全な段階で引っかかったまま、
 今に至って、しまったのだろう。
 
 君達は人間ではないが、機械でもない。
 人間になり損なっている、有機体の機械であり、
 我々の基準では、メカニクナスと呼ばれる。」
 
ゴウリ
「な、何言ってるんだ!?
 コイツは?
 
 誰がどう見たって、俺は人間だ!」
 
ゾーレトーレル
「自分が何者か? 全体のどの立場か?は、
 自分自身では、中々わからないものだ。
 
 だが、君達がメカニクナスとわかった以上、
 我々から見れば、権利も立場も無い。
 
 それでも我々は、純粋な善意で、
 君達を人間にしようと、実験を試みた。
 
 だが、中々うまく行かず、
 失敗が続いてしまった。」
 
ユリコ
「そんな…
 訳のわからない、一方的な理屈で、
 人の命を、奪っていたの?」
 
ゾーレトーレル
「人ではない。
 人を殺せば殺人だが、君達は人ではない。
 メカニクナスに過ぎない。
 
 それを、我々は諦めず、
 最後の最後まで、君達を人間にしようと、
 善意からの、努力を…」
 
ゴウリ
「冗談じゃない!
 こんなやつ、交渉の余地無いぜ!
 地球から出て行くか、降伏するかどっちだ!」
 
ゾーレトーレル
「メカニクナスには、そんな権利は無い。
 人間に逆らう、メカニクナスは、
 法律上、処分される。
 
 立場を、わきまえたまえ!」
 
左右から、再び警備ロボットが現れます。
めいめい武器を出し、反撃する3人。
 
やがてゾーレトーレルが、エレベーターらしき、
光る台座に、乗り込みます。
 
ユリコ
「地上へ逃げるわ!」
 
クロス
「任せて下さい!」
 
飛び込んで、もみ合うクロス。
両者は取っ組み合いながら、移動して行きます。
 
ゴウリ
「あああ、行っちまった!?」
 
ユリコ
「こいつらを片付けて、私達も行きましょう!」
 
ロボットを全滅させると、辺りに爆弾を仕掛け、
≪エルグランザー≫に戻る、ゴウリとユリコ。
 
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【地上】
 
エレベーターが止まると、偽装された地上出口でした。
 
クロスから離れると、巨大化するゾーレトーレル。
 
そのまま、踏み潰そうとしますが、
一瞬遅れてクロスも、ウルトラホープをフラッシュさせます。
 
閃光とともにゾフィが現れ、ゾーレトーレルを跳ね飛ばします。

 

 
ひっくり返って倒れる、ゾーレトーレル。
 
ゾフィが飛び掛って、殴りますが、
ゆっくり消えると、後ろ側に現れます。
 
不気味な煙を出しながら、構えるゾーレトーレル。
不意に光線を放ちます。
 
1発は当たって、後ろに下がるゾフィですが、
2発めはかわして、カウンターのように、
ネオアタックビームを、放つゾフィ。
 
命中すると、命中部位の色が変わり、
笑い声のような音が、響きますが、
ゆっくり空中に、浮かび出したところに、
M87光線が命中すると、木っ端微塵に爆発します。
 
さらにゲートが開いて、円盤が出て来ますが、
浮かび上がったところで、
ゾフィの、サブグレイダーが命中。
 
真っ二つになって、断面に小爆発が走ると、
そのまま地面に落ちて、さらに爆発します。
 
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【UST作戦室】
 
カジ
「我々、地球人は人間ではない!?

 
 そんな事を、言ってたのか?」
 
ゴウリ
「信じられないでしょ?
 
 そんな理屈が通るなら、何だって出来る。
 勝手過ぎますよね!」
 
ユルガ
「だがなあ…
 
 人間だって、一昔、二昔前なら、
 人種や出生、色んな判断基準で、
 『お前達は人間ではない』
 と言って、
 別のルールや法、扱いを強いていた。
 
 そう言う考えの宇宙人も、いないとは言えんよ。」
 
ナワテ
「人間と、人間以外、人間モドキの、
 判断基準かあ。
 
 突き詰められると、難しいですね。」
 
座って今回の、ファイルを読んでいた、
マキノハラ博士が、振り返ります。
 
マキノハラ
「どんな判断基準を、考えるにせよ、
 そう言う物は、おおむね、

 決めた側が相手に、当てはめるものだ。
 
 基準を、当てはめられる側が、
 『それで良いです』と、同意するかどうかは、
 また別問題だし、むしろ無い事が多い。
 
 家畜にせよ、植物にせよ、
 「こう言う立場、扱いで良いでしょうか?」と、
 当該種族に、確認したわけではないからねえ。」
 
モニターには、鞘稲手市(さやいなでし)の事件が、
解決したと言うニュースが、流れていました。
 
「こうしてUSTと、ゾフィの活躍で、
 またも、宇宙人の侵略計画は、
 未然に防がれました。
 
 地球侵略を狙う、凶悪な宇宙人は、

 宇宙人ゆえに、人権など考えず、

 一方的な論理で…」
 
【第329話・終わり】

 
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