男性ホルモンと男性更年期

昔からの人々の悩み(体臭、口臭、脱毛症、性の悩み、美容、不老長寿etc)

最近、『医心方』が気になっています。

『医心方』とは日本に現存する最古の医学書、全30巻(国宝)。

有史以来九世紀までの漢訳された医書を集めて撰集・編纂し、人間の心と体に関するあらゆる知識を結集させたものである。
その出典は、医書、仙書、本草書、養生書、鍼灸、陰陽道、道教、儒教、仏教、易経、天文、占相、史書、哲学、文学、婆羅門の秘方等々…
漢訳されているので一見中国だけの文献からの引用に見えるが、伝道僧や求道僧が中国訳したインドの文献も多い。薬剤の原料は、朝鮮半島、日本、中国はもとより、インド、スマトラ島、オーストラリア間近の熱帯の島々も含むアジア全域、及びユーラシア、アフリカの動植物・鉱物が、想像を超える早い時代に中国へ渡り、内服、外用薬として調合され、駆使されていたことが明らかになり、古代文化の交流も見えてくる。
(「『医心方』事始」 槇 佐知子著より引用)

984年(平安時代)に丹波康頼により円融帝に献上され、長い間宮中に秘蔵。
皇族や時の権力者など、限られた人しか読むことができませんでした。

(丹波康頼は、鍼灸を専門とした宮廷医。40歳未満で亡くなる方も多かった当時において、72歳で編集に着手、74歳の時に献上、80歳過ぎでお亡くなりになっています。長寿なうえに、エネルギッシュな!)

医心方の内容は、

内科、外科、産科、婦人科、小児科、皮膚科、泌尿器科、性病科、寄生虫科、耳鼻咽喉科、眼科、歯科、鍼灸、指圧、養生、飲食、未病対策、救急医療から、
占相、呪術、性愛術、あらゆる願望への対処法など多岐にわたります。

古代において、集団を守り・導く巫女が、同時に、自然の植物などを駆使し、病を癒す医師のような役割も担っていたように、
現代では医学に含まれない呪術や占相などは、昔は『生きる』ための重要な方法として考えられていました。
ちなみに、平安時代の陰陽師として有名な安倍晴明。
彼は丹波康頼より9歳下で、同時期に宮中で活躍されていたことが考えられ、また清少納言や紫式部とも晩年には重なる歳月があるそうです。

ところで、実は、医心方自体は私まだ読めていないのです。
興味を持ったきっかけは、医心方を訳した『槇 佐知子』さんの医心方関連本を読んで。(今まさに読んでいる最中でもあります(笑))

新型コロナウィルス対策として『免疫力を上げたい』とおっしゃるお客様も多く、古代の健康法気になるなぁと手に取ったのがきっかけでした。

『医心方の世界 古代の健康法をたずねて』は、昭和の美しい情景が思い浮かぶエッセイの中に、春夏秋冬、季節合わせた健康法、著者が実際に試してみた医心方の処方、その効果などが紹介されています。とても読みやすく、医心方へのとっかかりとして入りやすいです。

『医心方にみる美容 王朝人の秘法』は、医心方全巻から美容に関する内容を集めた本。
(目次↓)

口臭、体臭、ワキガ、育毛、潤いとツヤのある美肌の作り方、美容や健康に良い食べ物、体操、セックス、不老長寿の薬の作り方などなど。
人間の悩みというものは、平安時代(有史以来の本を集め、編纂しているので、それ以前からもですね)から現代まで変わらないんだな、としみじみ思いました(笑)

(原文、訓読み、現代文がそれぞれのっています↓)

現代のような薬がない時代、動植物や虫はもちろんのこと、玉石や鉱石、他にも様々なものが薬剤として用いられましたが、もっとも身近な材料は、やはり植物だったのではないでしょうか。
植物の芳香成分を抽出した精油を用いるアロマテラピー(芳香療法)も植物療法の一つ。
こういうお悩みや治療に、こういう植物を使っていたんだ。
そういった意味でも大変興味深かったです♪
処方の中には、呪術的な要素が強く「これ、すごいな。。。」と思うものも(笑)

注意!
本でも注意されていますが、素人が処方を軽々しく試すのは絶対ダメです。
処方の中には、現代では有毒とされている材料(例えば水銀など)が使われていたり、また分量も時代によって異なるため正確な量がわかりません。
著者も、試す際には、分量が多少違くとも体に害のない食べ物などを使う処方を選んでいます。

さて、少し『医心方』の歴史に戻って。
宮中に秘蔵されていた医心方ですが、16世紀、朝廷より丹波家のライバルで同じく医者の家である半井家に下賜されます。
その後は半井家にて門外不出の書として秘蔵。
江戸時代末に、長年、幕府からの提出命令を拒み続けてきた半井家が、ようやく医心方を1か月の約束で幕府に貸し出し、丹波康頼の子孫で江戸幕府の侍医であった多紀氏を筆頭に、幕府の医療機関総出で写します。
こうして、表舞台にでてきたのもつかの間、倒幕、開国。
西洋医学がメインとなったため、医心方はまた表舞台から消えます。
そして、20世紀に入り、古典医書として出版されるも、今度は、第28巻「房内篇」いわゆる性についてのアレコレが書かれている巻が検閲にひっかかってしまい、発売と同時に発禁書に。
それが話題となってしまったため、長らくセックス本のイメージが持たれてしまいました。
その後、1982年に半井家に伝わっていた半井本を文化庁が買い上げ、この貴重な医書は1984年に国宝に指定されます。

医心方は、まるで暗号のようで解読がとても難しい書なのだそうですが、槇 佐知子さんは1974年に医心方に出会い、独学で解読、現代語訳に取り組み、1993年から2012年にかけて全30巻を刊行しています。

『『医心方』事始』では、各巻が簡単に紹介がされているのですが、医心方の目次も記載されているのでチラリ。


かなり細かく症状別に治療法が紹介されています。
現代で考えると糖尿病と思われる症状の治療法や男性・女性特有のもの、妊婦さん、子どもの治療法までも様々。

巻28房内篇について。
先程も書きましたが、利用している図書館に医心方が所蔵されていなかったため、医心方自体は読めておらず、槇佐知子さんの関連本で目次や紹介内容を読んだだけなのですが、、「これは、気になってしまう方もいるだろうなぁ」と。
目次がこちら↓

医心方28巻には古代中国の房中術の書なども載せられていますが、『医心方にみる美容 王朝人の秘法』の美容とセックスの章で少ーしだけ紹介されていたので、少ーしだけ引用。

黄帝が素女にこう質問した。
「わたしは気力が衰えて調子がさっぱり出ず、気分も欝々とし、常に身に不安がつきまとっている。いったいどうしたらいいものだろうか」と。すると素女がいうには…

「最近、気分が落ち込み気味で。以前と比べて仕事の調子もいまいち。気力が湧かないんだよね」
私が勝手に重ねてしまっているだけかもしれませんが、男性更年期障害も含め、ミドルエイジ男性のお悩みと被るなぁと思ってしまったり。
古代から現代にいたるまで、男性の悩みというのは変わらないのかもしれないと思いました。

さて、載せられている内容ですが、どうやら時代的に男性上から目線のものが多く、女性はカチンとくる内容もあるようです。
ただ、男女にかかわらず、心を重ね合わせたセックスは若々しさを保ち、寿命を延ばすとの記述もあるそう。
子孫を残すためだけでなく、『健康によりよく生きるため』にも、性愛に関することがらは重要なことと考えられていました。
現代においては、残念ながら、その認識が足りないような気がします。
男女関わらず、いくつになったって大事だと思いますし、自分の中でもこれからもずっと向き合っていけたらな、と思っています(*´ェ`*)

新型コロナウイルス問題が落ち着き、医心方を図書館で読むことができるようになりましたら、また続きを書きたいと思います♪