カービングターン考察:①上下動
第1回:『上下動』について
シーズン頭恒例の決起集会的な滑ろう会をの中で後輩を教えたり、改めて自分の滑りを見直した中で、自分の中での理解を一度整理したくなったので書いてみようと思います。
そもそも上下動は何のためにする?
個人的に間違った上下動をしている人と話した限り、教えている側が『本質的な意味での上下動』を理解していない(あるいはあえて教えていない?)のではないか?という印象を受けることが多いです。
初心者のうちはタイミングを取りやすくしたり、角付け*1をコントロールしやすくするために上下動を活用するのは一定の効果はあると思います。
もちろん、中には理論を理解しなくともできる人もいるでしょうし、『やって覚える』タイプの人に理論を説明したところで上手くならないこともあるとも思いますが、『検定種目で求められるから』と板が角付けされていないのに上下動をさせたあげく、変に上下動を意識させるあまり腰を折ってしまったり頭が変に入って軸が内倒してしまったりしては本末転倒だと思うんですよね。
上下動による荷重*2は角付けがされていなければ板がずれてしまうだけなので、そこはやはり角付けがあっての荷重であり、角付けによってできる『バンク(法面)*3』に対して圧が増えるから板がたわむということは理解した方がいいんではないかと思うんですよね。
カービングで大事なのは『線のようなターン弧』ではない
カービングと言えば一本の線のような弧が注目されがちですが、それがそもそもちょっと違うのではないか?と個人的には思っています。
海外のイントラや協会でも『ペンシルライン(鉛筆の線)』なんて言われますが、個人的にもっと注目してほしいのは線のような部分ではなく、上にも出てきた、シュプールの外側にできる法面(バンク)です。
カービングターン中はエッジが雪を切り出し、小さな『バンク』を生み出します。
そしてこのバンクの強度(=厚みと角度)が移動するボードの遠心力や推進力と釣り合った時にボードのサイドカーブ*4が作用し、板に迎え角*5をつけなくとも(=板を振らなくても)曲がれる、というのがカービングの本来の理論で、『ターンとブレーキの違い』もここにあります。
ちなみに多少硬いバーンの方がカービングはしやすく、逆に柔らかい雪や春のザラメでのカービングでは難しいのはこのバンクの強度を出しやすいかどうかというところに影響されます。
※スピード種目の競技者に関して言えばここを理解しておかないといつまで経ってもプロには追い付けませんよ~
つまり何が言いたいかと言うと…
カービングはそもそも『より早く』滑るために開発された技術なので、基本的にある程度のスピード(もう少し厳密に言うと外力*6)があって初めて成立する技術だということと、カービングの物理的な作用を理解しておかないとなかなかその先には進めませんよ、ということです。
よく初級者~中級者の人がカービングを真似しようとして緩斜面や低速で板を立ててコケるのを見ますが、あれはそもそもカービングに必要な外力を理解していないから起こる現象ですからね。
最初にも書いた通り、本来の意味においての立ち上がり抜重、沈み込み荷重はエッジの下にできるバンクに対して屈伸運動で体重を乗せていくことに意味があるので、板の角付けができていない(=内傾角*7がない)状態での上下動をすることにはほとんど意味がないんですが、どうにもそこを理解していない人が多いような気がするんですよね。
上下動=重心の落下方向のコントロールの結果
上記の文脈から言うと、上下動にはエッジが雪面をとらえた状態(ホールドともいう)になったところへ自重を伝えていくという意味もありますが、より高度なカービングターンにおいては
1.より強い内傾角を作っていく
2.雪面に対して重心が近くなる
3.結果重心が下がっているように見える
という、『結果としての上下動』が主になってくるので、そこを理解せずにとにかく傾けようと、お辞儀をするようにして頭の位置を下げたりや腰を折ること(=どちらも視界は傾いているが内傾角は増やせていない)にはデメリットはあっても、メリットはないんじゃないの?というのが今日書きたかったところです。
熱くなってきて文字数がかなり増えてしまったので、今日はこの辺で!
続きはいつか書きます(笑)
それではまた次回!
Ogi