酒と砂糖とMTHFR

副腎疲労症候群とは何なのか・・・徹底的に調べましたし、今も学び続けています。この「病気とされていない『変な症候群』」について知る事が、今の日課でもあり、とても重要な仕事にもなりました。

副腎疲労の原因を理解し、二度と同じことを繰り返さない、大事な人を同じ病気にさせないために、とにかくこの「変な病気」について知らなければいけないと思っています。

リサーチを続ける中で、僕が特に注目しているのはMTHFR遺伝子変異のことです。

副腎疲労症候群の原因は強いストレスが長期間続くことなのですが、同じようにストレス状態に置かれても副腎疲労になってしまう人とならない人がいるわけです。あるいは、副腎疲労になっても短期間で回復する人もいれば、何年もかかってしまう人もいます。その違いは何なのかと突き詰めていくと、その要因の一つがMTHFR遺伝子変異ではないか、という事なのです。

僕自身もドクターに勧められてその検査を受け、見事にビンゴだったわけです。ドクターの話を聞けば聞くほど、この遺伝子変異が副腎疲労の引き金の一つであると確信しています。

MTHFRなどというものは、ドクターに検査を受けるように言われるまで、聞いた事もありませんでした。しかし、それは生命と健康にとって非常に重要で、これが損なわれると、栄養が適切に機能せず、体はエネルギーを処理できず、修復もできないのです。

MTHFR遺伝子の突然変異は、体内のメチル化プロセスに関係しています。

メチル化プロセスはなかなか複雑なのですが、基本的には、メチル葉酸がメチルコバラミン(B12)とホモシステインと一緒になってメチオニンと呼ばれる物質を作り、SAM(S-アデノシルメチオニン)に変わります。人間の体はこのSAMが必要です。エネルギーの維持、感情の安定、集中力など、さまざまな目的でSAMを必要とします。健康な細胞を生み出し、アドレナリンを分解し、体内のヒスタミンを取り除き、グルタチオンを作り、質の良い睡眠がとれます。

僕のドクターは、これを「ビタミンBサイクル」とも呼びます。ギアが入ってエンジンを回転させ、機械が動くのと同じようなことだと言います。

ここで、 こんな状況を想像してみて下さい。ギアの歯車に小さな石ころが入り込んで、動かなくなってしまいました。

人の体に置き換えると、砂糖やアルコールがあなたのシステムに入り込んだときに起こることと似ていると言います。体のメチル化「ギア」が回らなくなってしまうのです。つまり、 アルコールはメチル化酵素をブロックしてしまうし、砂糖は炎症を増加させます。その結果、メチル化プロセスに問題が発生してしまうのです。

さらに悪い事に、アルコールも砂糖も肝臓に直接大きなストレスをかけます。肝臓は解毒がうまくできなくなって、メチル化のギアにさらに別の「石ころ」が加えられるのです。そしてその体が、MTHFR突然変異を持っている場合は、それがかなり悪化するのです。まさに僕がそうだったわけです。

gears

体が悲鳴をあげて機能低下に陥る直前の僕の酒量は異常でした。会社を経営し、外国人の僕が日本のビジネス習慣に合わせることに苦労しながらも仕事がどんどん忙しくなって、スタッフがどんどん増え、その中で外国人従業員のモラルの低さに呆れはて、自分の肩にのしかかる日々のプレッシャーとストレスに対処するには、飲まずには一日を終えることができませんでした。

ドリーに「毎晩こんなに飲んでて大丈夫かな」とよく聞きました。彼女も僕と同じようにアルコールが必要だったのです。

そうです。僕たち二人はまったく同じストレスの中に追い込まれていたのです。まずビールを2本、それからウオッカやジンを3~4杯のみ、その後ワイン。これが通常でした。取引先の人などと飲みに行った時には、こんなものではありませんでした。

ずっと後になって、アルコールがMTHFR突然変異を持つ体にどれほど悪影響を与えるかということを知ることになるのです。

alcohol

  • アルコールは酵素の通り道をふさいでしまい、十分なSAMを取り込むことができなくなります。 SAMの機能の1つは、アルコールなどから肝臓を守ってくれるのですが、SAMが足りない場合、肝臓が危険にさらされます。
  • SAMは、抗酸化剤および細胞保護剤であるグルタチオンを作り出すのに必要です。しかしそのグルタチオンをアルコールが使い果たしてしまうのです。つまりアルコールをとればとるほど、グルタチオンが少なくなり、酸化ストレスが増加します。 また、アルコールがSAMを妨害してしまうため、グルタチオンも供給されなくなってしまうのです。
  • SAMは、アルコールによって引き起こされる炎症を抑えてくれるのですが、SAMがアルコールによって足りなくなってしまうと炎症を止めることもできません。その結果、炎症が増加し、メチル化プロセスがさらに困難になります。

アルコールが体に良いわけがないことはもちろんわかっていましたが、このようにアルコールが悪影響を与える仕組みを知ると、本当に納得します。

僕が完全にダウンしてしまう前、お酒がいつまでもいつまでも残って、二日酔いの状態が3日も4日も続いているような感じがしていました。弱くなったな~と思いながらも、飲み続けていたのです。

さらに悪いことに、アルコールはリーキーガットの原因となり、インスリン機能を低下させ、それにより血糖値が上昇します。血糖値の大暴れには僕も長期間にわたって悩まされました。

数年前から始まった自分の体の不調を振り返ると、MTHFRの遺伝子変異は、間違いなく副腎疲労症候群の重症にまで進んでしまった事、そしてドクターを困らせるほど回復に時間がかかってしまったことの原因だと思うのです。

MTHFR変異を持っていなくても、アルコールと砂糖の過剰摂取は肝臓と体全体にストレスを与えます。

アルコールを飲み過ぎると肝臓がビタミンB欠乏症や肝硬変を発症する可能性もあります。

hangover

飲み過ぎた時や、砂糖を取りすぎた時の対処法をドクターが教えてくれました。

  • 体が回復する時間をしっかり取ります。アルコールを沢山飲んだり、砂糖を取りすぎた時には、これらを断つ日を数日取って、体を回復させます。
  • 水を沢山飲みます。解毒を助けてくれます。水に電解質または海塩を加えて飲むようにします。
  • タンパク質を含む軽食をとり、血糖値のバランスを取り戻します。
  • グルタチオンなどの抗酸化物質を摂取します。
  • メチルフォレートとメチル12を含むビタミンBとB6を摂ります。(もし気分が悪くなる場合は、メチル化サポート以前に、肝臓をきれいにする必要があります) 

副腎疲労がいつまでたっても良くならない、2年以上治療しているのに改善しない、という場合は、念のため、MTHFR遺伝子変異の検査を受けてみるのも良いのではないかと思います。自分の体の特徴を知ることはとても大事です。何を気をつけるべきか、がよく分かります。