秀吉の朝鮮出兵以降、薩摩の苗代川という集落に住み、代々上質の「薩摩焼」を生産し続けた朝鮮出身の人々がいます。この本の表題作である「故郷忘じがたく候」は、その著名な窯元である14代沈寿官氏と著者の交流を中心に、彼らの歴史を語った作品です。ゴリゴリの歴史小説ではありませんが、司馬遼太郎らしい筆致から、14代の人柄や苗代川の風情が浮かび上がってきます。
14代が1966年にソウル大学で講演し「あなた方が36年をいうなら私は370年をいわねばならない」と語ったエピソードや、当時の朴正煕大統領と酒を酌み交わした話など、当時の韓国社会の一面も垣間見えて興味深かったです。
苗代川という地域は今は「美山」というそうで須賀、行ったことがないので一度訪ねてみたいですね。
ちなみにこの14代沈寿官氏は今年の6月に亡くなられていたのですね。本を手に取ったタイミングとしては本当にたまたまだったので須賀、ますます気になる存在になりました。
「斬殺」は戊辰戦争時の伊達藩を中心とした奥州情勢が、「胡桃と酒」は細川忠興に嫁いだ明智たま(細川ガラシャ)が題材となっていて、こちらも楽しくページをめくれる作品です。
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