娘が、遅い夏休みを取った。
大親友の大食いのミーちゃんと7歳年上の韓国人の親友ユナちゃんと3人で旅行したのだ。
ユナちゃんに関しては、ソウルから来た娘に書いたことがある。
行き先は、韓国。チャレンジャーだな。
今回の旅行は、ユナちゃんの初めての里帰りに2人が便乗する形で実現した。
そして、ミーちゃんと私の娘との独身最後の旅行という意味合いもあった。
はじめ日本大好きのユナちゃんは、帰らなくてもいいと思った。それに、昨今の日韓関係を思うと、むしろ帰らない方がいいと思ったという。
だが、ユナちゃんのご両親が会いたがっていた。かつてガチガチの反日だったご両親は、ユナちゃんが日本で働くようになってから、ガチガチが多少軟化したようだ。
私の娘が韓国に留学していたとき、ご両親は、日本と日本人は「嫌い」だった。しかし、最近は「好きではない」という表現に変わった。
好きにはなれないが、嫌いだと断定することはなくなった。
ユナちゃんのご両親は、頭の固い人だと思っていた。しかし、そうではなかったようだ。2人は、韓国政府も好きではない、と言っているという。
日韓基本条約を結んだ国交のある国をまるで仮想敵国にして、国民の支持を得る韓国政府のやり方が「下品」だと言うのだ。
「話し合いのできない人を政治家とは言わない。あのトランプだって話し合いの場を設けているのに」とお父さん。
だから、同じ理由で安倍政権も「下品」と断定している。
筋は通っているように思える。
今回の旅行は、不測の事態を考慮して、2泊3日という短いものになった。
往復の飛行機は、奮発して大韓航空を使った。娘曰く「LCCとは離着陸の快適さが段違いなんだよな」とのことです。
娘からは、「鬱陶しいから付いてくるなよ、付いてくるなよ、付いてくるなよ」と言われたので、成田まで見送りに行った。私は間違っていないと思う。
泊まるところは、ユナちゃんのご両親が強く勧めたので、ユナちゃんのご実家にした。
お父さんが言った。「ここなら、あなたたちを守ることができる。安心しなさい」
そして、用心棒としてユナちゃんの従兄弟も泊まった。従兄弟は193センチの大男だ。極真空手をやっていた。日本の大学に4年間留学して、腕を磨いたらしい。さらに、親日家でもある頼もしい人だ。
出歩くときは、ユナちゃんのご両親が前を歩き、娘たちを挟むようにして極真男子が後ろを歩いた。完璧なディフェンスと言えるだろう。
外での会話は日本語は禁止。韓国語か英語だ。3人とも英語が話せる。ミーちゃんは韓国語が苦手なので、ミーちゃんが何か提案するときは、英語を使う。娘とユナちゃんとの間は韓国語だ。複雑ではあるが、会話は円滑にできたという。
ちなみに、極真男子は日本語を流暢に話す。だから、留学時代の癖が出て、店の中で「うわ! これうめえな」とか「安っすいぜ、これ!」などと叫んでしまったことがあったようだ。その度に、ユナちゃんのお父さんに腕を叩かれていた。
反日行動は、どうだったのか。
世間の関心は、「タマネギ男」に向かっていたらしく、メディアの取り上げ方も、そちらが中心だったようだ。
お父さん曰く「下品だ」。
そして、行ってみて、繁華街に思いのほか日本人女性が多いことに驚いたという。チャレンジャーだな(政治と文化は別物だもね)。
食べ物は、ユナちゃんが韓国料理が苦手なので、朝はお母さんがパンを焼いてくれた。昼は、外で2日続きでチーズタッカルビを食べた(ユナちゃんは初めて食べたらしい。美味しいと感動していた)。夜はお父さんの友人の焼肉屋でご馳走になった。
ここでの主役は、大食いのミーちゃんだった。チーズタッカルビ3人前、焼肉とご飯は何人前食べたかわからないくらい消費して、周りを唖然とさせた。
極真男子も体に比例して大食いだったらしいが、ミーちゃんに向かって「まいりました」と日本語で言って頭を下げ、みんなの笑いをとった。この日本語は、お父さんも見逃してくれた。
帰りの空港では、みんなボロ泣きだった。その中で一番泣いたのが、極真男子だった。娘曰く「ひいたわ〜」。ハグをして、お別れをした。
「日本語解禁」
帰りの飛行機の中で、ユナちゃんが堰を切ったように日本語を話し始めた。
「2日以上日本語話せないなんて無理だから!」
ユナちゃんのご実家では、3人とも意地でも日本語は話さなかったという。そうしないと、外でも何かの拍子で出てしまうかもしれないから。ただ、極真男子が空気を読まずに日本語で話しかけてくるのには、参ったらしい。3人で「ウザい!」と怒ったらシュンとして黙ったようだ。かわいそうに。
空の上では、3人とも飢えたように1時間以上喋り続けたという(まわりに迷惑じゃなかったか)。
「おかげで顎が痛くなったな。でも楽しかったぞい」
帰ってきた娘3人は、その夜、我が家に泊まった。ユナちゃんと娘は、次の日の朝には仕事。ユナちゃんの荷物は宅急便で送った。ミーちゃんは、朝早く出て新幹線で金沢に帰る。
朝の4時に起きて、4人分の弁当を作った(息子の分も)。7時半に、3人の娘は出て行った。
2週間後の日曜日。
ミーちゃんとワカちゃまの結婚式がある。金沢だ。
思いがけなく、家族4人招待された。
そして、ミーちゃんの追っかけ隊、金持ちのミズシマさん夫妻も招待されたようだ。
楽しい結婚式になりそうだ。
断断断大断言するが、私はミーちゃんの結婚式では、千パーセント泣く自信がある。
ハンカチを10枚くらい用意しておこうか。パンツは2枚でいいか。