リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

赤玉さん伊蔵さんカアちゃん

2019-06-16 05:16:01 | オヤジの日記

前回、酒の話を載せたので、さすがに2回連続では飽きると思った。なので、今回も酒の話を。

 

社会人2年目の娘に聞いた話。

娘の部署は仲がよくて、月に1回以上飲み会を開いているようだ。場所は新宿が多い。

2日前の金曜日、西武新宿駅近くの居酒屋で、飲み会をした。9人が出席した。楽しく飲んでいたら、店の奥から「イッキ、イッキ!」のやかましい声と手拍子が聞こえた。全員が白けたという。

今ごろ、一揆って何? 江戸時代じゃあるまいし。鍬や鎌でも持ってきたのか。いくら、安倍政権に不満があるからって、暴動はいかんぞ。

娘に頭をコツンとされた。イッキ違いだそうです。

 

娘は、イッキを見たのは、初めてらしい。聞いてはいたが、想像以上にやかましい、と思った。

そのやかましい声を聞いて、そのフロアの客のほとんどが眉をひそめた。彼らは、その行為が周りに迷惑を及ぼすということが、わからないのだろうか。

ここにも「日本全国どこにでもいるバカ」が生息していた。イッキバカだ。

しかし、幸運にも、このイッキバカは、店の従業員によって制圧された。屈強の従業員2人がやってきたのだ。

「お客様、イッキはおやめください。もし、これ以上続けたら、お帰りいただくことになります」

イッキバカは、抵抗することなく、白旗を揚げた。すぐに、静かになったという。

お奉行様の見事なお裁きだった。

 

まったく今どき一揆なんて、時代錯誤も甚だしい。飲み屋に鍬なんか持ってくるなよ。いくら、安倍政権が・・・。

頭をコツン。

 

イッキから一気に話が変わって、酒の話を(変ワッテイナイ)。

これから先は、不道徳な話になるので、「不道徳はけしからん」という主義主張次長課長のお方は、ご遠慮ください。

6歳の時、私は我が家の押入れに隠してあった赤玉ポートワインの一升瓶を発見した。4本あった。

おそらく祖母と母が飲んでいたのだと思う。それを見た私は、ブドウジュースだな、と想像した。ブドウは好きだ。デラウエアは大好物だ(もう10年以上食っていないが)。コップに半分ほど注いで飲んだ。

想像した味とは少々違ったが、甘くて美味かった。おかわりをしようと思った。しかし、祖母と母が押入れにしまっているということは、大事なものだと幼心に判断した私は、思いとどまった。

今日は、これくらいにしておいた方がよかろう。バレたらマズいぞ。意外と理性的な子どもだったようだ。

ただ、美味かったので、私は祖母と母がいないときに、1週間に1、2回はグラス半分の赤玉ポートワイン泥棒に変身した。

 

6歳のとき、私はそれが酒だとは思わなかった。酒というものの存在を知らなかったからだ。それに、飲んでも私の体に何の変化も起きなかった。

それが酒だとわかったのは、酒という漢字と存在を覚えた小学校2年の時だった。

ああ、あれって、お酒だったんだ。

それでも私は赤玉ポートワイン泥棒を続けた。とても美味かったから。

ただ、今にして思う。おそらく、祖母と母は、この家に赤玉ポートワイン泥棒がいるということに気づいていたのではないか、と。

1週間にグラス半分を1、2杯だとしても、トータルで見れば、明らかに減っているのだ。たとえば、2人で今まで一升瓶を10日間で消費していたとして、最近は8日や9日でなくなる。それが1回限りなら、「今回は飲みすぎたのかしら」で済むが、毎回続けば、おかしいと思うはずだ。

泥棒は、アイツだな。

だが、若い頃、教育者だった祖母と母は、私を問い詰めなかった。わかっていても知らんぷりをした。

 

わたしは、祖母と母に、叱られたことが一度もなかった。それほどいい子ではなかった私を祖母と母は、余計なことは言わずに放牧してくれた。

ただ、一度だけ、祖母にアドバイスされたことがあった。

それは、小学校の入学式前日のことだった。

「いいですか、あなたはバカで怠け者だから、学校を休んではいけません。そして、授業をよく聞きなさい。そうすれば、あなたはわかるようになります」

祖母の言いつけ通り、私は今に至るまで休むことを拒否して生きてきた。その結果、わかることが増えたし、できることが増えた。

祖母は、正しいことを言ったと思った。

 

中学に上がると、元旦に日本酒を飲むことを許された。大学に上がると、突然、近所の酒屋さんから、ビール瓶のケースが届いた。

母が言った。

「今日から晩酌に一本飲んでいいですよ。もう大人なんだから」

まだ18歳だったが、母からは大人扱いされた。母の行為は、常識はずれだったかもしれないが、それは「これからは大人として自分で責任を持ちなさい」という母のメッセージだったのだと思う(赤玉ポートワインを飲まれるのが嫌だったのかもしれない)。

 

母のメッセージ通り、酒に関しては、私は責任を全うしていると思う。

酒を飲んで、人に迷惑をかけたことが一度もない。それは、偉そうに言うことではない。ほとんどの人が、迷惑をかけたことがないはずだからだ。

ただ、ほとんどの人との違いは、飲む量の違いだ。おそらく、5倍以上の量を飲んでいると思う。

そして、静かに飲む。人に酒をすすめることはしないし、突然凶暴な「酒オバケ」になることもない。

「おごるよ」と誘われてついていった場合も、大量に酒を飲んだとしても節度は守る。絶対に醜態は見せない。

とは言っても、意地汚い大酒飲みであることに変わりはないが。

 

話は一気に飛んで、杉並の建設会社・顔デカ社長の酒の飲み方になる。

顔デカ社長は、普段はガサツだが、酒はキレイに飲む。酒を飲んだからといって、余計に顔がでかくなるということはない。むしろ、声のトーンが落ちて、話しやすくなる。

先々週の月曜日、毎週恒例の社長と私の「ムダ話会」が、会社で開かれた。そのあと、社員全員で同じ昼メシを食ってから私のスピーチという気持ち悪い儀式が続いた。

さらに、そのあと、顔デカ社長に社長室に連れ込まれた。何をなさいます、お代官様。

「俺は午後仕事がねえから、ちょっとだけ酒に付き合ってくんな」

年に数回、そんなことがあった。社長室での禁断の飲み会。飲む酒は、高級焼酎の森伊蔵だ。社長は炭酸割り、私はストレート。酒は自分で勝手に注いで飲む。「どうぞ、どうぞ」などという面倒くさいことはやらない。お互い勝手に飲んで、段ボール箱に入ったナッツ類を勝手に手にとって、ポリポリ食うのだ。

建設会社だからといって、建設的な話が出るわけではない。社長は、フィリピンパブのネエちゃんの話やよく行く料理屋の女将が、どれだけ色っぽいかという話をした。私はモンスター井上尚弥のモンスターっぷりと椎名林檎様が、どれだけ音楽モンスターなのかと柴咲コウ様のモンスター的なスケールの美しさを熱弁した。

 

しかし、今回の顔デカ社長は、ちょっと違った。

社長室に入った途端、目尻が下がったのだ。それは、いつものエロ親父の目の下がり方ではなかった。喜びの目尻だった。

社長は、いつも通り焼酎の炭酸割りを勝手に作り、私は勝手にグラスに森伊蔵をなみなみと注いだ。乾杯なんてことは、したことがない。とにかく勝手に飲み、勝手にナッツを食う。

いつもと違うのは、今回の社長からは、幸せオーラが薄〜〜〜〜く出ていたことだ。

そして、ヘッヘと笑ったあとで、焼酎をグイッと飲み、でかい顔を近づけた。

ズームイン! (って、まだやってますか?)

「俺の会社、だいぶ前から結婚ラッシュでな。おめでたいことなんだが、仲人を頼まれると困るんだよな」

社長の奥様は、10年前に事情があって、家を出て行った。結婚式の仲人は、やはり夫婦揃ってがおめでたい。だから、いつも最初は断るのだが、社員から「是非」と頭を下げられると断りきれない。

その結果、変則的な1人仲人ということになる。誰もが違和感を持っていたが、言い出せなかった。

 

出て行ったカアちゃん。

だが、離婚はしていない。10年間、別居中ということだ。学校の関係で、社長側に残った息子のうち長男は就職が決まって、家を出た。大学2年の次男は、家から大学に通った。母親とは、頻繁に会っていたらしい。

その次男から、母親は「1人仲人」の話を聞かされた。

それを聞いたカアちゃんは、社長に久しぶりに連絡を取った。2年ぶりだという。

「仲人は、やはり2人揃わないと、相手の親御さんにも失礼ですよね」とカアちゃんは言った。

そして、社長にとって、とても意外なことを提案したのだ。

「結婚式のときだけ、隣にいてもいいですよ」

い、いいのか、おまえ・・・いや、サヤカさん。

「可愛い社員のためじゃないですか」

 

6月22日、社員の結婚式がある。

式の前日は、久しぶりに社長の奥さんが家に泊まるという。長男も帰ってきて泊まる。

顔デカ社長が、でかい顔をキャッチャーミットのような両手でゴシゴシとこすった。

「まるで、10年前に戻ったみたいだよ。待ちどうしくてしょうがねえぜ、先生」

 

社長、可愛いですね。

絶対に、社員の前では見せない顔だ。

 

「なあ、先生、あんたも招待するからよ、スピーチ頼んだぜ」

 

えーーーーーーー、聞いてないよぉ。

でも、いいか。社長の可愛い顔を見るのは楽しい。

顔が2倍でかいだけに喜びも2倍でかい。

 

コップにまた森伊蔵を注いだ。

 

森伊蔵が喜んでいるような気がしたのは、気のせいか。

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿