歓波(わいは)が入社してからというもの部署内は大騒ぎだった。
そこに辞令のメール
が飛び込んできたからもうもはや仕事が手につかない状態だった。
とは言っても、美咲は主任への昇進に合わせて役割が変わったせいで本質的には関係ないことだった。
美咲の抜けた穴埋めに採用したパートの歓波(わいは)がある意味元凶
であった。
歓波(わいは)はとりあえず、正社員になるために最大3か月の試用期間で、それまでにきちんと仕事ができるようにならなかった場合は採用取り消しとなるという条件だった。
こんな入社の仕方をしたのは後にも先にも歓波(わいは)だけだった。
その理由は、商品企画部長の阿倍沃(あべよう)以外の全員は不採用と判定したが、阿倍部長の強い希望でとりあえずやらせてみるという状態だったからだ。
他の人たちの心配の通り、歓波(わいは)は問題を起こした。
少なくともWEB営業課内では、すでにそう烙印㊞を押されていた。
まだ、最初の出社から1週間しか経っていなかったのにである。
それなのに飛んできた辞令メールはこうだった。
－辞令－
本庄歓波 － 営業部WEB営業課正社員
この辞令をきっかけに歓波(わいは)が加わったことに納得のいかない同僚3人が反乱を起こした
のだ。
WEB営業課所属には妻沼課長がいる。
しかし、彼はWEB営業課長ではなくWEB営業課課長である。
「課」の字が一つ余計についている課付きの課長だ。
つまり彼には部下はいない。
WEB営業課は管理職不在の部署なのだ。
美咲はもう元々のWEB営業課の実態であった画像加工の仕事ではなくなり、主任への昇格とともにネット上での広告、宣伝、イベントの企画担当になっていた。
それでも会社の組織図上、美咲は3人の上司になっていた。
しかも、つい先週までは上司部下の関係ではなかったのにである。
「美咲ちゃん、聞いてよ
本庄さんっていつも仕事しないでさぼっているのに社員になるなんておかしいでしょ」
「森掛(もりかけ)さん、私はちょっとその辺はよくわからないんだけど、そなの
」
「そうですよ、桜ちゃんの言う通りです。私たち、彼女が来てからどれだけ迷惑かけられたことか・・・」
「そなの倍賞さん」
「泉花(せんか)ちゃん、本当のこと言ってますよ。私たちは彼女にやめてほしいと思ってます
」
「須賀谷さん、それはちょっと言い過ぎじゃない」
「メロちゃんのいうこと合ってますよ美咲ちゃんは私たちの味方じゃないんですか」
3人から集中砲火を受けてちょっと気がめいってきた
今までだったら下の名前で呼んでいたのに、立場上今は3人を名字で呼んでいた。
「美咲ちゃんも絶対そう思いますよね」
「私たちの味方ですよね」
「今までずっと一緒にやってきたからわかりますよね」
矢継ぎ早に繰り出させる言葉に完全に圧倒されていた。
美咲のすぐ左斜め前では歓波(わいは)が黙々と仕事をしていた。
3人が文句を付けてきていることに気づいていないはずはなかった。
今まで同じ部署で仕事をしていたといっても、いつもモニタに埋もれて、たまに何か話した始めたと思ったら他人の文句ばかりで、正直表面だけの付き合いに留めていた。
彼氏の翔太がいることと、無理して1LDKのマンションに住んでいてい経済的に働き続けないといけないということがなければとっくに辞めていた会社である。
須賀谷メロは、歓波(わいは)にどうしても出て行ってほしい様子だった。
倍賞泉花(せんか)は、歓波(わいは)が何度も迷惑をかけてきているのに一向に謝らないことに腹が立つといじいじと詰め寄ってきた。
森掛(もりかけ)桜の話はもうもはや何が何だか訳が分からなかった。
美咲は3人の誰もが歓波(わいは)のことが気に入らないということだけは理解した
あえて歓波(わいは)の聞こえるところでわざとそんな話をしてくるなんてあまりにひどい態度だと思った。
恐らく歓波(わいは)のいないところで3人は歓波(わいは)の悪口で盛り上がっていることも間違いないだろう。
ふと歓波(わいは)の方に視線を送ると、彼女の肩はわなわなと揺れていた。
美咲は思わずその場限りの答えを返した。
「ちょっと我慢して、そのうちよくなるから
」
これは火に油を注ぐ行為だった
「絶対、よくなるはずないじゃないだって、あの子、正社員にしちゃったんですよ。この会社頭おかしいですよ」
3人の怒りらしきものを爆発させてしまった。
人をまとめるとかリーダーシップとかいうものには疎遠だった美咲は戸惑った
見かねた妻沼課長が一言ぼそっと言った。
「会社ってそういうものだから
」
そしていつも通りマウス片手にソリティアを励み始めた。
3人は口々に歓波(わいは)を罵りながらもやっと席へと戻っていった。
歓波(わいは)のことが気になった美咲は歓波(わいは)へ歩み寄った。
「ワイは平気っす
いつものことっす
」
「・・・。」
「ままりんは、口先だけのやつ、他人の悪口を言うやつ、欲の皮の突っ張ったやつとは付き合うなっていつも言っているんで・・・
」
「歓波(わいは)ちゃん」
「何すか」
「ごめんね」
「はぁ」
「ありがと」
「訳分かんないっすワイ馬鹿だから」
間もなくどこからともなく3人が「美咲ちゃんって仲間だと思ってたのに主任になったとたん態度が変わって」うんぬんかんぬんという噂が聞こえてきたのは言うまでもない。
天からのAbooの囁き
女子面倒くせー
コルセットダイエットのネタ挟む文字数なくなった
To Be Continued...
■登場人物紹介■
浦埼 美咲 (うらさき みさき)
主人公28歳。独身。彼氏あり。
恵比寿のアパレルメーカー(エンジェルスシンジケート)でネットやカタログ向けの画像加工を行う部署でお仕事中。
自宅は大都会埼玉の大宮駅から少し先のJRの駅からすぐのところに家賃8万円の1LDKに乗り換えなしで職場に通えるというだけの理由で一人暮らし。
性格は周りから周りからちょっとちやほやされてみたい気もするけど、目立つのは苦手という結構ありがちなタイプ。
案外見栄っ張りな一面もある。
大関 萌華(おおぜき もか)
美咲と同じエンジェルスシンジケートで経理課に勤める。
Hカップの巨乳の持ち主といえば聞こえがよいが、肥満の家系に生まれ育つ。
子供のころのあだ名は横綱。
コルセットで急にカッコよくなった美咲にいち早く気づきコルセットダイエットを決意する。
美咲と同じ電車で通勤している。
美咲より数駅遠い町で祖父母と両親、兄3人と暮らす。
大関一家(年齢順)
祖父：寅(とら)
祖母：桂(かつら)
父 ：健人(けんと)
母 ：貴理子(きりこ)
長男：塁(るい)
次男：コナン
三男：三斗(さんと)
長女：萌華(もか)
本庄 歓波(ほんじょう わいは)
エンジェルスシンジケートの珍入社員でどこまでも問題児。
自分の気に入ったものにはとことん固執するのにそれ以外はとことんずぼら。
早合点で超短絡思考でおバカを絵にかいたよう。
自分勝手な性格と誤解されやすく取りつきづらいイメージを持たれ孤立しがち。
しかし本当は・・・。
阿倍 沃(あべ よう) 商品開発部長
会社で一番の美人で、モデルもこなし、仕事もできる。
社長の愛人という根の葉もない噂もある。
女子社員は陰で「倍沃」(べよう)と呼んでいる。
本人はそれに気づいているが、そのことはまんざらでもないらしい。
なぜなら倍沃(べよう)はコルセットダイエットの一番人気のバーヴォーグ(Burvogue)の漢字名だからである。
そして今では美咲にとってのコルセットの師匠でもある。
秋ヶ瀬 翔太
美咲の彼氏で同僚。
お人好しで頼まれたら断れない性格。
美咲にだけはなぜかやたら強気。
それ以外は未設定。
水判土 迦皇(みずはた かのん)
元フリーのSE。
萌華(もか)の兄の塁の友達の弟。
萌華(もか)が片思いを寄せている。
岩槻 陽菜
23歳。
美咲の勤める会社で派遣社員をしている。
社内ではかなりイケているルックスの持ち主。
美咲は彼氏さんの「陽菜ちゃんってかわいいよね」の一言でやきもち持ちを焼いたことから、勝手に美のライバル視している。
陽菜本人はどう思っているかは定かではない。
というかまだ未設定。
戸田 由喜枝
正社員なのになぜか不定期出勤で誰もが一目置く存在。
ミシンの達人であっという間にあらゆる服のお直しをしてしまう。
ミステリアスな存在である。
神園社長
美咲が務める会社(エンジェルスシンジケート)の社長。
高校生の娘がいる。
妻沼WEB営業課課長
美咲の直属の上司風。
課付きの課長なので実際には部下はいない。
理屈っぽく行動力はない。
ハゲデブで脂ぎっている
川里経理課長
萌華(もか)の直属の上司。
寡黙でなんでも他人事の態度。
貧相なガリガリ出っ歯。
トリサミットソン社(やしろ)先生
旧姓は小川。
両親が経営する白蓮総合病院の内科医。
ダイエット外来を担当している。
大関一家に毎週土曜日ダイエットレクチャーを実施。
■作者紹介■
)プロクビレイター(のAbooです。
世界中のウエストを くびれ させることが野望のプロのクビレイターです。
クビレイトに欠かせないものといえばコルセット
コルセットで肋骨を引き締めることでアンダーバストからヒップにかけて整形級のボディラインを作っちゃおうっていう痩身術です。
世間ではコルセットダイエットなんて呼ばれています。
