オーク材の話  あれこれ

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私事ですが、もう少しで念願の我が家が完成します。
ちょっと奮発して、床材は無垢のオークのフローリングにしました。
デザインも良いのですが、オークに少しばかり思い入れもあったからです。

 

オークは欧米では、「森の王者」と言う別名があります。
森の中でも一番大きく力強い大木がオークです。

これから、ギリシャやケルトなど多様な民族地域で、神木、聖なる木とされていました。
硬く、加工もしやすいので、家具、建材の材料として多く使われています。
ウイスキーの熟成の樽などにも使用されます

その1 日本と欧米のオーク

欧米でのoakは日本では樫と訳されたりしますが、これは間違いです。
日本では楢の方が近いものになります。しかしそれでも少し違います。

(これはオレンジとみかんの違いのようなものと言いましょうか)

また、欧州のオークと北米のオークも違います。
欧州のオークはコモンオークと呼ばれており、ウイスキーの樽にはスパニッシュオークが使われます。北米のオークはホワイトオークとレッドオークがあります。(この辺はウイスキー検定試験の常習問題なのでその時に勉強しました)

どんぐりの実がなります

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その2 聖なる木としてのオーク

欧州では古代からそもそも森が霊的、神聖な場所として扱われていました。
そしてその中で一際力強く気高い大木がオークでしたので、自然と神の宿る木、霊的な力を持つ樹木となったものと思われます。

 

ケルト

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ケルトの司祭のことをドイルド()と言いますますが、このドイルドの語源となったのがオークです。ドイルドは賢者、知識人(=聖なる森のオークのことを知っている人)の意味です。

カエサルの「ガリア戦記(BC1世紀)」にこんな記述があります。(ガリアはうランスの古い名称です)「ドイルドは貴族層で、神事、裁判、占星などを司り、権威を有する」「ケルト人は霊魂は不滅と信じて、動植物の神々を奉り、森や泉、特にヤドリギやオークを神聖なものとして扱い、生贄を捧げて祀っている」

ギリシャ

古代ギリシャでは、最初に創造された木はこのオークとされています。ローマの詩人ウェルギリウス(英Virgil)によれば、人はこの木から生まれたと言っています。

 

 

ローマ

ローマ神話では最高神のジュピターとその妻ジュノーがナラの木に結びつけられており、その葉は勝利の冠に使われる

ローマ帝国を一人で治めた最後も皇帝となったテオドシウス1世は、キリスト教を国教として、他の全ての宗教を禁止して、ゼウスの神殿にある古いオークの木を切り倒した。それまでは多くの人がこの神殿に参拝していたからです。

 

ノートルダムの屋根

昨年4月15日にパリのノートルダムが火災になりまました。
ゴシック建築は石造りですが、屋根は石ではなくオーク材で作られています。この木造の屋根が焼け落ちたのでした、ゴシックの意味はゴート族のことで、北ヨーロッパの、聖なる森をイメージしてどこまでも高くそびえる様に作られています。壁でなく柱と交差リブ天井で屋根を支える技術でそのことが可能になりました

その3 ロイヤルオークの話

ロイヤルオーク といえば、誰もがスイスのオーデマピゲの高級腕時計を思い浮かべると思います。世界の三代高級時計の一つで、文字盤の周りが8角形をしているものです。

 

この8角形は、英国の戦艦ロイヤルオーク の船窓の形からデザインされたので、この名前になったのです。

それでは戦艦ロイヤルオークの名前の由来はどこから来るかというと、清教徒革命時のチャールズ2世に関連しています。

父チャールズ1世が「ピューリタン革命」で処刑された時、海外に亡命していたチャールズ2世は再上陸しスコットランドでは王位につき、クロムウェルに戦いを挑みます。
しかし、クロムウェルのニューモデルアーミーにあえなく破れたジェームスは再度逃亡の身となります。迫りくる追手に対し、イングランドの多くの人が宗派や主義にかかわらず逃亡に協力したという逸話が残っています。一番有名なのが、このロイヤルオーク の話です。かくまってもらった農家(ボスコビル家)のオークの木に隠れて追手をやり過ごすことで、難を逃れることができたのです。その後この木は「ロイヤルオーク 」と呼ばれ、有名になり観光名所となり、現在でも訪れる人は絶えないと言います(現在の木はその孫の木の様です)。(日本では弁慶牛若丸の勧進帳の様な話ですね)

ちなみに、弟のジェームスは兄の王政復古後、イングランドの海軍で活躍します。しかし「審査法」の制定により、まさか王になると思わないでカソリックを公言していたジェームスは海軍を罷免させれらています。その後兄の死後王位につくのですが、カソリックをやめないので反感を買い追放(名誉革命)されています。

その4 樽としてのオーク

ウイスキーなどの熟成用の樽はオークで作られています。
ウイスキーに取って熟成工程はとても重要で、その過程で樽のオークの成分か溶け出し、なんともいえない深い琥珀色と香り味わいをもたらします。
代わりに「天使の分け前」として中のウイスキーは目減りしていいきます。

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この樽ですが、スコットランドでは新樽はほとんど使われません。
アメリカでバーボンを寝かした樽の中古や、スペインの酒精強化ワインに使用した樽などを分解して再度組み立て直して作ります。

これとは反対にアメリカのバーボンは法律で新樽を使うことが決められています。しかし、「チャー」と言って、内部をバーナーで炙って焦がしています。

マッカランはシェリー樽にこだわり、自社用にスペインでシェリー酒(オロロソ)を作り、2−3年寝かし、贅沢にも中身は捨てて樽を分解し、オークの樽材のみを組み立て直して使用しています。マッカランの色の濃さはこれからきています。

グレンモーレンジも使用する樽によって様々な味わいとなります。デザイナーカスクとして、シェリー、バーボンなど数種の樽に移し替えて、ウッドフィニッシュをさせています。このウッドフィニッシュを編み出したのがグレンモーレンジです。

 

最近樽材として、日本のミスナラが注目されています。山崎など日本のウイスキーは北海道のオークの一種ミズナラ(学名Quercus mongolica)が使われています。日本のウイスキーは世界で評価が高いです。シーバスのマスターブレンダーコリンミルズが作ったシーバスリーガルの日本向けのシーバスは、わざわざ日本のミズナラを輸入して樽として使っています。独特のアロマを醸し出しています。

コスパの良いスモーキーなシングルモルトのアードモア(チーチャーズの原種)の樽には、実はアイラ島ラフロイグの樽を使用しています。安価にラフロイグっぽいスモーキーさを味わうことが可能です。

その5 レッドスペシャルの話

 

普通ギターのボディは硬くて重いメイプルやマホガニーやアルダーなどが使われます。硬い木は加工が難しいけれども、立ち上がりの鋭い硬めの音になります。
ギブソンレスポールのトップはメイプルです。

ところがクイーンのブライアンメイのギター「レッドスペシャル」はボディにオーク材が使われています。

このギターは技術系理学博士のブライアンとエンジニアのブライアンの父による自作です。その素材は、自宅にあった古いオークのテーブルです。150年ほど前という話です。ギターの素材の木は、古くなる程枯れて乾いた味のある音になります。

ギターの左右に大きなザグリの加工を取り入れることで、フィードバック操法をしやすい設計になっています。

クイーンの変幻自在なギターサウンドの元はこの古いオークのテーブルの音なんです。

 

 

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