宿駅の設置と駅の種類

1.宿駅について 3.駅の種類

京都鉄道博物館にある昔の改札機(2019年1月)


宿駅について

古代の律令体制下においては、全国の行政区域を「五畿七道(ごきしちどう)」または「畿内七道(きないしちどう)」に分けています。これは山城、大和、摂津、河内、和泉の五国と東海道、東山道(とうさんどう/とうせんどう)、北陸道、山陽道、山陰道、南海道、西海道の七道をさします。七道は地理的な行政区分でもあり、交通路をも意味します。

叡山電鉄木野駅(2019年4月)

主要街道には、30里(約16キロ)ごとに駅家(えきか/うまや)が設置され、ここに駅馬が常備され、駅の事務を執り行う駅長が常駐しました。これは官吏や通信使の宿泊や逓送(宿場から宿場へ順々に送ること)に役立てられました。

京都鉄道博物館内に復元された昔の時刻表(2019年1月)

東海道は伊賀、伊勢、志摩、尾張、三河、遠江、駿河、伊豆、甲斐、相模、武蔵、安房、下総、上総、常陸となり、東山道は近江、美濃、飛騨、信濃、上野、下野、武蔵、陸奥、出羽となります。古代においては渡河技術が発達しておらず、大きな川の河口に寸断される東海道は、山道が険しく気候も寒冷である東山道より優位な地位を占めることはできませんでした。

青梅鉄道公園に展示される0系新幹線(2020年10月)

しかしながら時代が進み、渡河技術がしだいに高まってくると、道路が平坦で気候も温暖である東海道は、東山道に対して徐々に優位な地位を占めるようになってきました。

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鎌倉時代に入ると、京都と鎌倉を結ぶ東海道は、鎌倉幕府と京都の朝廷を行き交う使者や通信手段としての飛脚、武士や行商人、神社を参拝する民衆などで盛んに賑わいました。これにより宿場町も栄え、宿駅制度も充実しました。鎌倉幕府が滅亡すると一時期、東海道の地位は低下しますが、室町時代には地方経済も栄えて宿駅制度はさらに発展していきます。

京都鉄道博物館内に復元された昔の出札口(2019年1月)

戦国時代には、東海道に位置する有力大名である北条氏、今川氏、徳川氏、織田氏、浅井氏らが領国経営に勤しんだため、地方経済はさらに栄えて城下町が発展しました。江戸幕府が開かれると、徳川家康は1601年(慶長6年)に東海道に宿駅伝馬制度を定めますが、伝馬とは幕府の公用のため宿駅で乗り継ぐための馬のことをさします。

車内に取り付けられた昔の扇風機(2019年1月)

この制度は、古代の駅伝制や戦国大名によって採用されてきたものですが、より本格的に整備したのが徳川家康です。宿駅伝馬制度の実施により、各宿場では伝馬朱印状をもつ公用文書や荷物を次の宿場へとつなげるために、宿場に人馬を用意しておかなければならなくなりました。江戸時代にはこれにより東海道をはじめとして中山道、甲州街道、日光街道、奥州街道(五街道)が整備され、宿場は大いに栄えるようになります。

紅葉の遊歩道(2020年11月)

それぞれの宿場には、本陣とよばれる大名など身分の高い人々に供せられる宿泊施設も立ち並ぶようになりました。人馬を用意するのはそれぞれの宿場の負担となりましたが、宿泊代や運送費を稼ぐことができる他、土地に課される税金を免除されることとなっていました。こうして東海道五十三次は完成し、五街道やその他の主要街道には一里塚も築かれるようになります。また、江戸時代にはじまる参勤交代では、その通路を江戸幕府から指定された大名がこうした街道を通り、大名らは本陣に宿泊しました。こうして発展してきた東海道に後の「東海道本線」が敷かれることになります。

JR東海313系「熱海行き」(2022年9月)

東海道とは、1716年(正徳6年)あたりまでは江戸(品川)~大坂(守口)間を指したものでしたが、1811(文化8年)頃になると、江戸(品川)~京(大津)間を指すようになり、京~大坂間は京街道とよばれるようになりました。東海道五十三次とは、品川、川崎、神奈川、程ヶ谷、戸塚、藤沢、平塚、大磯、小田原、箱根、三嶋、沼津、原、吉原、蒲原、由井、興津、江尻、府中、鞠子、岡部、藤枝、嶋田、金谷、新坂、掛川、袋井、見付、浜松、舞坂、新居、白須賀、二川、吉田、御油、赤坂、藤川、岡崎、池鯉鮒、鳴海、宮、桑名、四日市、石薬師、庄野、亀山、関、坂の下、土山、水口、石部、草津、大津となります。

東京駅(2019年3月)

日本における鉄道駅と鉄道駅との間の距離すなわち駅間は鉄道の黎明期以来、外国の鉄道に比べて短く設定されてきました。それは、こうした宿駅の設置以降「東海道五十三次」というように、その都市は人が歩くことができる間隔で発展したことに由来します。

東京駅(2019年3月)


駅の種類

現在の駅には鉄道駅、自動車駅道の駅などがあります。このうち鉄道駅は列車を発着させ、旅客および貨物を乗せたり下ろしたりする施設です。鉄道駅は私たちが普段、乗降するために使用する最も一般的な旅客駅と、貨物列車などが運搬する貨物を取り扱う貨物駅に分類することができます。

東京駅(2019年3月)

また、駅はいつでも利用できると考えてしまうことが多いですがいつも利用できる一般駅と、特別の場合しか利用できない臨時駅という分類もあります。さらに、その営業形態によって分類することもできます。たとえば、その駅を運営している鉄道会社所属の駅員が常駐する直営駅、複数の鉄道会社路線が乗り入れをしている際に駅の業務をある1社が請け負っている業務委託駅、切符の販売や改札業務を駅構内に入っている商店や駅前の商店が請け負っている簡易委託駅、駅員がまったくいない無人駅といった具合です。

自動車駅・周山駅駅舎(2019年8月)

駅にはさまざまな人々が多く集まるため商業施設が建設されることが多く、一般的には活気のある場所となり、まちの中心として発展します。しかしながら、都市部でない地域になると、必ずしも駅がまちの中心となっていない場合も多く見受けられます。

東電鉄バス稲荷前バス停(となりのトトロ)

また、近年ではその駅の周辺に民家などがまったくなく、利用者が極端に少ない上、列車以外の手段で駅まで辿り着くことがきわめて困難な駅について「秘境駅」などとよばれ、逆に人がいないことを魅力として訪れる人たちもいます。

京都鉄道博物館内に復元された昔の改札口(2019年1月)