今日、お隣のベットの人が代わった。
彼女はせかせかと急いで身の回りを整え、そそくさとカーテンを閉め切った。
そして
直ぐに何やら独り言が始まった。
最初は何を言っているのか、よく解らなかったがそのうちわかった。
聞き耳を立てるのは良くないことであるが、嫌でも耳に入ってくる・・・
その囁く様な声は彼女のお祈りの言葉だった。
彼女は祈りの言葉をずっと唱えているのだ、
それは10分経っても20分経っても終わる気配がなかった。
時間が過ぎて、陽のさす角度が変わるにつれ、彼女の影がカーテン越しに写り
はっきりとその様子が解った。
お祈りは、まだつづいている・・・
彼女はベットの上できちんと背筋を伸ばし
同じ姿勢で同じ声のトーンで祈っているのだ。
とても熱心な姿に驚いた。
お祈りの声は6人部屋みんなに聞こえているようで
部屋のみんな、おしゃべりをしなくなった。
おしゃべり好きなおばあちゃんも一言も話さなくなった。
そのうち、お祈りの彼女がトイレなのかベットを離れた。
一番年上の、おしゃべり好きのおばあちゃんが体を起こし
「は~、彼女が来てから、病気になりそうさー」と言うと
もう一人が「おばー、病気だからここにいるんでしょ」
「そうだったね」と言ってみんなを笑わせた。
みんな、おしゃべりがしたいのである。
・・・お祈りの彼女が、部屋に戻る気配がした。
みんなため息をついて、またベットに横になった。