己が身を広げ蟷螂枯れにけり

「方円」2008年1月号雑詠(現・明象集)掲載。

「蟷螂」だけなら秋の季語だが、「枯蟷螂」だと冬の季語になる。カマキリ自体が枯れるという事はなく、枯葉のような色をしているという事。交尾の際に大きな雌が雄を食べてしまう事がよくある。宿願を果たす、傍さないにかかわらず、生き残った雄が枯れた色になると言われている。そういう意味でも冬の寂しさを表す季語。それでも外敵に出くわしたら、体を大きく見せて威嚇する。これからますます冬が厳しくなるにつれて、彼らを取り巻く環境も厳しくなるが、そんな中でも必死に生きる様子に共感して詠んだ句。

例の感染症の流行が止まらない。実際に感染してしまった人に対して、外野は冷たい。「気が緩んでいる」とか「近寄るな」などと言う人もいるだろう。人間の社会は健康な人間さえ生き延びればいいという意識が、昔は高かったのではないかと思う。今はさすがにそれを声高に主張する人は少ないだろうが、いざ非常事態になれば、やはり我が身が優先するのは致し方ない事。こういう非常事態を迎えると、生きる事は大変な事なんだと感じる。生き残った枯蟷螂のように、生きるのに一生懸命になる余り、周りが見えなくなるという事は避けたいものだ。

 

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