小獅子の尾

芸術大学の通信教育部に通う20代女子の雑記

【心理学】随分前のレポートを晒してみる。

f:id:lihui1992:20190912085538p:plain
f:id:lihui1992:20190730221036p:plain

  (1)愛着とストレンジ・シチュエーション法
 愛着(アタッチメント)とは、特定の相手との心理的な結び付きの事である。
愛着の個人差は、ストレンジ・シチュエーション法という実験的な測定方法によって測られる事が知られている。
 ストレンジ・シチュエーション法の具体的な手法は次のような物である。
実験室で20分程度のセッションを行い、親子が2回の分離と再会を繰り返す。
この時に児童が示す反応によって、愛着は安定型・回避型・アンビバレント型・無秩序・無方向型の四種のタイプに分類される。
 それぞれのタイプについて、以下に説明する。
 安定型
親を信頼し、安心感を得ている為、積極的な探索行動ができるタイプである。
 回避型
親がいなくても平気で、親を無視したり避けるような行動を取るタイプである。
 アンビバレント
親と離れると極度に不安になり、再会すると接触を求めつつも、なかなか機嫌が直らないタイプである。
 無秩序・無方向型
他の子供の様に、一貫した行動が観察されないタイプである。
 人間は、養育してくれる人物に対して初めて愛着を抱く。
親子間での愛着のタイプは、その後の社会的な関係や対人関係に大きな影響を与えると考えられている。

f:id:lihui1992:20190730221036p:plain
  (2)ごっこ遊びとコミュニケーション
 赤ちゃんが最初に行う遊びを、一般的には"ごっこ遊び"と言うが、発達心理学ではこれを"表象遊び"と言う。
表象とはイメージの事で、子供が表象遊びを始める事は、その子供に自分の頭の中でイメージを描く能力が備わった事を意味している。
 子供は主に一歳半頃から、目で見たり耳で聞いたりした事を自分の頭の中で表象し、大人の真似をして本を読むふりをしたり、化粧のふりをする等、日常で目にする大人の世界を再現する事でごっこ遊びを始める。
 子供が二歳半頃からは特定テーマに基づいて役割が割り振られて遊びの世界が広がり、お店の売り手と買い手や、電話の応対等、大人の真似をするだけの遊びから、自分の知識を元に想像した独自の世界を作り上げる様になる。
この頃から、子供は親や他の子供と一緒に遊ぶ事ができる様になり、コミュニケーションを学ぶ様になる。
 五歳前後からは想像力が更に増した非現実的なごっこ遊びもできる様になり、この様な遊びは小学校3,4年生頃まで続く。
 子供はこれらの遊びを通じて日常生活の手続きや役割の概念、コミュニケーション能力の獲得等、様々な能力を自然と学び、身につけているのである。

f:id:lihui1992:20190730221036p:plain
  (3)恋愛とアイデンティティ
 子供が自身の性別を正しく言える様になるのは3~4歳頃からである。
小学校中・高学年頃から男女差への意識が強まり、ハーロックが性的括抗期と名付けた時期を経て、第二次成長を迎える。
 第二次成長を迎えたばかりの年代に特徴的な恋愛を、大野はアイデンティティの為の恋愛と名付けている。
アイデンティティの為の恋愛とは、お互いが自分の自信を得る事ばかりを考えて、相手からほめられ、認められ続けるような関係になる事を意味する。
 アイデンティティとは、自分が自分であるという一貫性を持ち、個別で主観的な自分自身が周囲から見られている自分や社会的関係の中での自分に合致しているという自信や安定感を意味しており、エリクソンが提唱した概念である。
エリクソンは、本当の意味で異性と親密な関係を築いて行く為には、一人一人がアイデンティティに基づく自信を得る事が必要であるとしている。

f:id:lihui1992:20190730221036p:plain
  (4)自己と他者に対する認識
 この科目のテキストである『心理学』60ページ、発達心理学入門「3.コミュニケーションの基礎」冒頭に、次のような文章がある。

ボウルビィ(Bowlby,1969)によると,唯一の人間に対して自分自身の愛情を向ける機会があることが,人を愛する人間になるためには必要だということです。愛着が満たされることによって,人は安全であるという感覚を得ることが重要だということです。

 特定の相手と心理的な結び付きを持ち、人は安全であるという感覚を得た子供は大人の生活を真似る様になる。
子供は遊びを通じてコミュニケーションを学び、第二次成長頃から恋愛を経験すると共にアイデンティティを確立しようとする。
この一連の流れは、自己への承認から他者への承認に向かう流れであると私は考えた。
 自分という存在やアイデンティティは周囲との関わりの中でのみ確認できる概念であり、他者との関わりの中で、子供はまず始めに自分という存在とアイデンティティを確立する。

f:id:lihui1992:20190730221036p:plain
  (1)臨床心理学について
 臨床心理学とは、何らかの理由で心身に適応困難をきたし悩み苦しんでいる個人を対象に、最善の知識と技術を用いて相手を理解し、その人がその人らしく幸せに生きるために最大限の援助・指導・治療を行う事を目的とする学問である。
これに対して実験心理学とは、客観的に観察可能な人間の行動に注目して実験対象を明確に定め、できる限り客観的・普遍的な一般法則を見出す自然科学の方法論を採用して成果を挙げてきた学問である。
この為、実験心理学と比較して臨床心理学には、より実践的であるものの、学問としての厳密さに欠ける性格がある。
 臨床心理学には、専門家すなわち臨床心理士による援助活動という他の分野には無い大きな特徴がある。
臨床心理学における援助活動ではラポールと呼ばれる、互いに信頼し合い、安心して何でも打ち明けられる様な人間関係を作り上げる事が重視されている。
ラポールを形成する事によって、クライエントは治療者にありのままの自分を表現する様になる。
クライエントが自分自身の可能性に目覚め、やがて自らの力で心の問題を解決し、エネルギーを回復する、という過程を経てクライエントの抱える問題を解決しようとする方法が心理療法である。
 ラポールを形成する為に、臨床心理士は人間を対象化して客観的に眺めようとする視点を排除し、世界を共に生きる等しい存在としてクライエント独自の内的世界を共感的に理解する姿勢を持つ必要がある。

f:id:lihui1992:20190730221036p:plain
  (2)心理療法について
 臨床心理士が行う代表的な援助活動のひとつに心理療法がある。
心理療法とは薬物などを用いず、コミュニケーションを媒介とする方法によってクライエントを治療しようとする方法である。
心理療法に求められる物は、治療者による助言やアドバイスでは無く、治療者がクライエントの話を真剣に傾聴する事である。
傾聴とは、相手の意見をそのままの形で受け取る事を意味する。
治療者がクライエントの意見をそのままの形で受けとる事によって、クライエントは自分の事を馬鹿にしたり笑ったりせずに、関心を持って聞いてくれる、尊重してくれている、大切にしてくれていると感じる様になる。
この様な手法を、状態を臨床心理学ではAcceptance(受容)と呼ぶ。
受容とは相手の意見に賛成する、という意味ではなく、相手の意見をありのままの形で受け取るという意味である。
 心理療法を行う際、受容と共にEmpathicunderstanding(共感的理解)、すなわちクライアントの話を、相手の立場になって聞いたり、感じたり、考えたりできるかが重要視される。
心理療法を行う際、治療者に求められる物は、クライアントの話を聞き、受容と共感的理解を通じて相手が自らの問題に立ち向かって行く事を援助する役割である。
 心理療法とカウンセリングの相違点は、カウンセリングが適応上比較的軽い問題や悩みを持つ人を対象に、言語を用いてパーソナリティの表層部分の変化を目指す物であるのに対し、心理療法では正常とは言い難い心の病気を持つ人に対して、言語だけではなく時には非言語的手段を用いて、パーソナリティのより深い変化を目指す所にある。

f:id:lihui1992:20190730221036p:plain
  (3)プレイセラピーについて
 心理療法では言語を中心とした心理臨床学的行為である。
この為、言葉のやり取りが難しい幼児から思春期の子供を対象とする場合は「遊戯セラピー(プレイセラピー)」と呼ばれる遊びを媒介とした心理療法が行われる。
プレイセラピーでは、さまざまな玩具、砂場、水場、トランポリン等の遊具を備えたプレイルームと呼ばれる部屋で行われる。
 子供は治療者との安定した関係性の中で遊びを通して自己の問題を象徴的に表現し、遊びを介して自らが抱えている葛藤を解放する。
この為、治療者は子供と同じ目線で考え、子供の訴えに耳と目を向けながら、子供が抱えている問題を共に担おうとする姿勢が求められる。
 心の問題を抱えている子供の中には、周囲の人間に対して不信を目を向けており、治療者へも反抗する場合がある。
この様な場合でも、治療者と子供との間にラポールを作り上げる事によって、子供が人への信頼を取り戻すきっかけとなるのである。

f:id:lihui1992:20190730221036p:plain