【「徳」の基本は「仁」=「美しい心」あるいは「美しい国」の根本なりの巻】
■「五常の徳」とは、古代中国から続く儒学の概念で
「社会を支える倫理規定」のこと。
美しい心のあり方、美しい国のあり方を示す指針である。
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
安土桃山時代。
百年乱世が収束し、平和の光がみえはじめ、
囲碁等の文化が武家のたしなみにならんとする夜明けの時のことである。
黒田官兵衛の嫡男である黒田長政(1568~1623年)が、
智将・小早川隆景(1533~97年、毛利元就の三男)に向かい
こう問うた。
「『分別』は、どうしたら、よろしいものでしょうか」
そこで隆景は
「別にいわれはない。
ただ『長い間 思案をしたうえで、遅くに決断する』
のがよい」
と答えた。
長政は重ねて
「分別にも、必要がありましょうか」
と尋ねたところ、
隆景は
「分別に大切なのは『仁愛』である。
全て事を決する際、仁愛をもって分別すれば、
たとえ考えが理に当たっていなくともよい。
仁愛のない分別は、いかに才智が巧みであっても、
皆、ひがごと(誤ち)であると思えばよい」
と教えた。
■分別は、心に道理をわきまえること、考えること、
つまり「思慮分別」の意ということである。
これは仏教語から出たもので、
法華経方便品の中に「非思慮分別之所能解」とある。
転じて
「そんな分別がおありかな」とか
「そう分別くさいことをいうな」とか
「分別ざかりのいい年をして何というざまだ」
などと使われるようになったのである。
▲黒田長政騎馬像