病室に一人、スマホを片手に「稽留流産」について調べはじめました。何かを知りたかったわけではなく、心の奥底で流れ続けている喪失感を、どうにかしたかったのです。

 

やっぱり、なんとかできたのではないか・・・もう、とっくに乗り越えた気持ちだったのに、無事に我が子を出産でき、自分の役目が終わったと感じた安堵感の中で、再び顔を出しはじめたのです。

 

「稽留流産 原因」「稽留流産 手術」「稽留流産 予防」

 

今の私にはどんな情報でも必要で、必死で様々なサイトにアクセスすることを繰り返していました。しかし、調べても、調べても、私が求めている答えは出てきません。知れば、知るほど、分からないことが増え、また検索し始め、まるで迷子のような気持ちで彷徨っていました。

 

私は何を知りたいんだろう・・・

 

 

 

 

しばらくして、我が子の誕生日のケーキと、飲み物を買いに行ってくれていた夫が、病室に戻ってきました。

 

「おかえりなさい。遅かったね(^^)」

 

近くにお店が無くて、ひと駅歩いたらスーパーがあったとのこと。私は夫の顔を見るとほっとして、一旦スマホを枕元に置きました。夫が持っている買い物袋の中身を見せてもらうと中には、果物、ホイップクリーム、スポンジ、アンパンマンの棒付きのチョコレート。不思議そうな顔でそれを見ていると。

 

「ケーキを、作ろうと思って♪」

 

夫はそう言いながら、一旦それを冷蔵庫にしまっていました。

 

 

 

 

最後の診察が終わり、消灯したのは夜の21時でした。二人で目を合わせ、にやり(^^)騒がしくないように、小声で「ケーキ作ろうか♪」と言い、ベッドのテーブルの上に、ビニールを敷いて、そこにケーキのスポンジを置き、チューブに入った生クリームをしぼり始めました。トッピングに果物を乗せ、最後に、アンパンマンの棒付きのチョコレートを飾り、手作りの誕生日ケーキが完成しました。

 

そして、ケーキの隣に、先生が我が子にお下げくださった「和清」氏と書かれた御神米さま。そして、まだお腹の中にいた頃の我が子の写真を置きました。

 

「毎年、この子のお誕生日のお祝いしようね」そう言いながら頂いたケーキは、これまで食べた中で一番美味しかったことを覚えています。スマホ片手に手を伸ばし、家族写真を撮りました。その写真を後で見てみると、私はとても幸せそうな、穏やかな顔をしていました。

 

生きていても、死んでいても、毎年今日という誕生日を迎えるごとに、この子のたましいは年をとる。私たちもこの子の親として、一緒に年をとる。そんなあたりまえの事が嬉しくて、嬉しくて、心の中で我が子へ伝えました。

 

 

「神様に導かれ、この世に生まれてきてくれて、ありがとう」「神様に手をひかれ、喜びと幸せを連れて、私たちのもとに来てくれてありがとう」と。

 

 

(つづく)

 

 

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