パソコン絵画作品のエピソード(1)

はじめに

この記事のシリーズではいままでに描いてきたパソコン絵画の作品にまつわる色々なエピソード(制作の動機・背景、モチーフ、制作過程など)を詳しくご紹介していきたいと思います。

この記事ではまず作品#1「 5月の緑」と作品#2 「イタリアの山の湖」の2作品についてのエピソードをご紹介します。

作品#1「5月の緑」

5月の新緑の季節を迎える頃になり、緑が溢れる風景を描いてみたくなりました。そこでまずパソコン絵画のモチーフになるような新緑の景色を探しにカメラを片手に色々な場所を訪れました。

結局以前から色々な季節にふらっと訪れることが多かった東京近郊の昭和記念公園(東京都立川市)が最もバラエティに富んでいたのでそこで半日ほど散策して新緑の風景をたくさんカメラに収めました。

当日はほぼ快晴の非常に良いお天気だったのでたくさんの人が美しい新緑を求めて昭和記念公園を訪れていました。

公園内はまさに新緑に溢れていてどこを切り取っても絵になりそうな風景が広がっていました。

結局最後に2枚に候補を絞り込みました。下の2枚の写真です。

上の2つの風景ですがほぼ同じ場所を撮影したものです。下のほうの写真では敢えて右側に幹が太めの木を入れました。このように木の暗い影が手前にあると向こう側の緑色がより一層引き立つだろうと思いました。パソコン絵画の最終的な構図はこれらの2つの風景を組み合わせたものにしました。

改めてモチーフとした風景2つとそれを参考にして描いたパソコン絵画を掲示します。

 

左上の風景の中に右上の手前の木を追加したような構図で下のパソコン絵画を描きました。

今回新緑の緑色を強調したかったので上の絵は実際の風景の色合いとは少し違っていて、より明るい緑色を多用しています。また画面の中の木々も少し整理してすっきりと描いています。

さらに視点を少し上げることで地面の緑の草がより広く画面を占めるようにしました。絵の空は、木や草の緑色の邪魔をしないようにほぼ無色(白)のままにしました。

このパソコン絵画はパソコン絵画の機材を購入してから一番最初に描いた絵です。パソコンソフトや液晶ペンタブの使い方や機能がまだよくわからまいままの手探り状態でしたので、タッチや色使いが少し乱暴な部分が見うけられますが思い出の1枚になっています。

作品#2「イタリアの山の湖」

かなり前にイタリアのベローナを観光で訪れる機会に恵まれました。赤い瓦が美しいベローナの街並みの写真を下に掲載しておきます。

当時観光バスでベローナに行く途中で、山の中にある静かな湖畔で休憩を取りました。その時に湖の風景の写真を何枚か撮ることができました。そのうちの一枚が下の写真です。

今回のパソコン絵画のモチーフとなった風景です。

風景画と言えばやはり湖の風景は外せないモチーフです。

湖に突き出ている土地の先端には、絵の構図として好都合にも古風な味のある建物が建てられていました。周囲の山や林の雰囲気とマッチしていてこの写真を見た途端、絵心をくすぐられるような感じがしました。

かなり前に撮影した写真なので黄色く変色していましたがこれを参考にして絵を描くには全く問題はありませんでした。

特に注意して描いたのは右側から降り注ぐ強い太陽の光でした。また最も描くのに時間がかかったのは湖の湖面全面に広がる小さなさざ波です。波の表現や色使いに工夫が必要でした。

パソコン絵画と元の写真の風景を見比べると分かる通り、絵の構図では故意に湖の水面の面積を広くとっています。これは水面のさざ波の風景を強調したかったからです。

また、古風な建物は写真の構図の位置では少し画面の中心に来すぎているために、あえて少し左上に移動させた構図で絵を描いています。より自分好みのバランスに合わせました。

一般的に風景画で湖の風景が好まれる理由の一つは、地上の風景が湖の湖面に映り込む姿が美しいからだと思います。

水面に映る絶景は世界各地に見られます。

たとえば、中国の九塞溝にある「鏡海」が挙げられます。下の写真にあるように湖面に山がきれいに映り込んでいます。

また下の写真のように日本の長野県の戸隠にある「鏡池」もその一つです。こちらも湖面に山や林が綺麗に映っています。

さらにボリビアのウユニ塩湖では普通の雲や人が湖面に映り込んでいるだけで「絶景」になります。

このパソコン絵画でももちろん地上の風景が湖面に映り込む様子を丁寧に描きこんでいます。

なお、絵の左上の古風な建物のそばに糸杉が5本ありますが、これらの糸杉もその槍の穂先のような姿から絵の表情を豊かにする恰好の材料になっていると思います。

ところで上の方で「地上の風景が湖の湖面に映り込む姿が美しい」と書きましたがこれは2次元の平面に描かれた絵の上で「映り込む姿」が奥行きのある空間的な広がりの感覚を際立たせる効果があるからだと考えています。

実際に私自身も今まで湖や川に「映り込む姿」がある風景画を好んで描いてきています。

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