木曜レジオ

恥の多い人生ですね(達観)

疑問を持つ練習 ③ 船員

蟹工船は純然たる「工場」だった。しかし工場法の適用もうけていない。 それでこれぐらい都合のいい,勝手に出来るところはなかった。(中略)秩父 丸の労働者が,何千哩も離れた北の海で,割れた硝子屑のように鋭い波と風に 向って死の戦いを戦っているのだ!

蟹工船」より

 

 

 

イントロダクションと参考文献

さて、短期間で更新しているこのシリーズだが、案外調べ物とは楽しいもので自分の知見を広げることの楽しさに目覚めたかもしれない。

単純に暇というのもあるが。

 

疑問を持つ練習② リスクコミュニケーション - 木曜の医師国家詩篇

 

さて今回も前回同様コロナウイルスに関係はするけど直接は関係ない話題ということで「船員」について調べてみた。例によって例の如く自己満足な記事であり尻切れとんぼな終わり方をすると思われる。そこで「お前の中途半端なまとめ記事なんぞいらん」という人のために最初に参照した記事を提示しておこうと思う。おそらく通常は最後に示すのだろうが。

というかこの記事見てる人間がいるのかも知らないけれど。 

 

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=13&ved=2ahUKEwjP46_f_9_nAhVMUd4KHX-LB0M4ChAWMAJ6BAgCEAE&url=https%3A%2F%2Fbarrel.repo.nii.ac.jp%2Findex.php%3Faction%3Drepository_action_common_download%26item_id%3D251%26item_no%3D1%26attribute_id%3D19%26file_no%3D1%26page_id%3D13%26block_id%3D135&usg=AOvVaw3AY7QFFOlbI9QfC9u_Qe8U 

【改正船員法の概要と論点― 船員概念及び船長に対する労働時間規制の検討を中心に ―南 健 悟】 

 

ja.wikipedia.org

 

 

船員とは

さて例によってWikipediaから引用しよう

船員法で「職員」とは航海士、機関長、機関士、通信長、通信士及び国土交通省令で定めるその他の海員をいい(船員法3条1項)、「部員」とは職員以外の海員をいう(船員法3条2項)。

  • 船員
    • 船長
    • 海員 - 船内で使用される船長以外の乗組員で労働の対償として給料その他の報酬を支払われる者(船員法2条1項)
      • 職員 - 航海士、機関長、機関士、通信長、通信士及び国土交通省令で定めるその他の海員(船員法3条1項、事務長・事務員・船医など)
      • 部員 - 職員以外の海員(船員法3条2項)。例としては甲板長、操機長、司厨長などである。
    • 予備船員 - 日本船舶等に乗り組むため雇用されている者で船内で使用されていない者(船員法2条2項)。

 まぁ大まかな雰囲気はわかる気がする。上記でも書いてあるが船員は船員法という法で規定されている。以下Wikipediaからの引用。

船員労働には以下のような特殊性があることから、労働一般について定めた労働基準法とは別個の個別の法律としている[1]

  • 長時間陸上から孤立すること。
  • 船外支援(修繕・医療等)を受けられない。
  • 動揺する船内で危険な作業をともなうこと。(海中転落の危険)
  • 「労働」と「生活」が一致した24時間体制の就労があること。

 おそらくこういったことが冒頭の蟹工船のような事態の背景にあるのだろう。

船の上というのは我々が、少なくとも僕が想像するよりかなり特殊な状況であるらしい。それはおそらく物理的にも法律的にも。

そのリーダーである船長には

船舶指揮権

指揮命令権

懲戒権

危険に対する処置

強制下船

行政に対する援助要請

水葬

司法警察権

 などの権限が与えられている。強い…。

 

船長の労働問題とILO

このセクションは【改正船員法の概要と論点― 船員概念及び船長に対する労働時間規制の検討を中心に ―南 健 悟】を参照にしている。引用内容については【】で示す。

さて医師国家試験の公衆衛生を勉強したことがある人間ならILOという組織について聞いたことがあるだろう 。

実は【従来から,国際労働機関(ILO)の制定する条約の多くが海上労働に係るものであった】のだ。

意外に感じたが海を超えて国際的に問題になる労働問題といえば、船員に関係したものになるのだろう。

そして先に述べた日本の船員法はこのILOなどの外国との間で結ばれた条約の国内法化という形で発展してきたという。すなわち日本においてILOでの条約の変化は国内法の変化へとつながるわけである。

先に挙げた記事では平成24年の法改正に関わるILOにおける国際会議での日本や諸外国の議論が詳細に記述されているのだが、所謂弱腰外交などと呼ばれている日本のイメージとは異なる感じが見れて面白かったので引用しつつ紹介する。 

まず,イギリスが「疲労は,危険であり,究極的には海上事故からの教訓からして主たる懸念である。実際に,疲労はしばしば重要な海上事故の主たる原因となっている。どうして一連の規制が疲労を許容し,もしくは暗黙裡に疲労 のため不適当な人物によって船舶操縦させることを促進するのだろうか?船主 による代替的な文言はいずれも受け入れがたい。政府としては,船長及び機

長を含めた船員に対する休息時間の下限について強化された条約において例外 や柔軟性を設けることは受け入れがたい。」として,船長に対する労働時間 規制を主張し,それにフランス,ドイツ,ガーナ,オランダ,ノルウェー,シリアアラブ共和国が支持した。他方,船長に対する労働時間規制に反対する日 本が次のように反論した。すなわち「日本国政府は船長が定義上船員(seafarer) に含まれたことに反対するものではないが,船長の職務の性質は(海員とは) 異なるものであると考える。船長は,通常時及び緊急時いずれにおいても船長 において指揮命令に関する完全な責任を有するのである。船長の乗船中,船長 の権限を委譲することはできず,休息時間の期間において柔軟性が要求される。 大韓民国政府は日本国政府の意見に賛成し,定期的な航海当直に従事しない船 長や機関長の職務の性質は,他の船員(海員)とは異なるものであると述べる。 船長や機関長は船員の健康や安全,船舶航行の安全性や海上環境の保護を確保 するのに完全な責任を負う。したがって,労働時間または休息時間に対する厳 格な制約は船長や機関長に適用されるべきではない。」と。この反論にインドネシア,韓国,マレーシア,ニュージーランドパキスタン,フィリピン, ロシア,タイが同調し,船長の労働時間規制について賛成派・反対派による応 酬となった。そこで,日本は以下のような修正提案を提出した。「船主及び船 員との労使協議の後,法律及び規則により,船長は航海当直に従事していると きのみ本基準のパラグラフ5,6,8の規制に服することを認め,ガイドライ ンB2.3.2として以下のものを付け加えるものとする。ガイドラインB2.3.2(船 長)―基準A2.3のパラグラフ15を適用するに当たり,権限ある当局は疲労に注 意を払い,船舶の完全な安全と責任を含む船長の義務の性質について考慮に入れるべきである。」と。

 お前こんなガチンコの殴り合いすんのか!と思った。

結局この会議では日本側が折れることとなったようだが日本側の船長はその責務の重さゆえに労働時間の制限を設けるわけにはいけない、という主張も素人目(というか何も知らない)にはそこそこ打倒に映った。

 

 

まぁ今回はこんなものか